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Aria War  作者: シアドナ
3/10

03:Aria War C

  俺は学校近くのコンビニでアイスを買い公園のベンチで夜空を見上げながら天体観測部員達を待つ。エリアウォー参戦の採決が取られてから次の日に参戦の運びとなってしまったのは、神の采配としかいい様がなく。もし神様と言う存在がいるならば、そいつは俺の人生の仇敵認定を差し上げてもいいなどと思っていたら、全員がまとめてやってきた。制服を着た部長の美樹に連れられた犬の甚五郎にやはり袴姿の舞浜、メガネ姿の森本は運動しやすそうなジャージ姿である。

「まった~?」

「まった~?じゃねーっよ。一時間の遅刻だろ!」

「すまないな。稽古が長引いてしまってな。」

「す、すいません。わ、私は霧島さんに案内してもらおうと思って・・・ごめんなさい。」

 謝る二人に対し美樹は当然といった感じで

「大丈夫。エリアウォーには十分、間に合うから。それに向こうも今着いたみたいだし。」

 美樹は公園の反対側を指し、キャリーケースを担いだ一団が公園に入ってくる。その内の数人が、こちらに向かってきてリーダー格とおぼしき美樹と同じ制服を着た女性が挨拶する。

「こんばんは。審判を勤めます。ボランティア部、雑賀瞬子と申します。こちらが貸し出し装備となります。点検はしておりますが、不都合な点がありましたらお申し付けください。」

 彼女はキャリーケースを指し、装備の確認をお願いします。と言った。

「うん。なかなかの装備ね。」

 部長の美樹は満足した様で、リボルバー式の拳銃をポケットに無造作に突っ込み、サブ・マシンガンを手に取る。銃のことまったく素人の俺は手頃な拳銃を手に取るにとどめた。

「遠慮せずに適当に持っていって。ペイント弾装填済みのエアガンだから安全だよ。」

「え、あうん。わ・・私はこれで」

 森本は一番銃身の長いスナイパーライフルを手に取る。

「こ、これなら遠くから撃っても大丈夫・・・よね?」

「うん。大丈夫!乱舞ちゃんは?」

「そんな無粋な物は不要。要は相手を倒せばよいのであろう?それならばこの扇子で十分だ。」

「OK、わかったわ。」

「装備の確認が済みましたら、ルールの確認を始めます。宜しいですね?」

「ええ、大丈夫よ。」

「では始めさせて頂きます。Aria War カジノ形式戦です。参加・不参加・リタイア・途中離脱が自由となっておりますが、エリアからの離脱を行なった場合は参加資格が剥奪されゲームから除外されます。人数は5vs5、制限時間は開始コールより二時間、私物の道具は持込可能です。ただし、殺傷性の高いモノの使用は不可とします。エリア領域はこの公園一帯半径50メートル程度とします。公園の二箇所の入り口がスタート地点となり各双方の拠点とし、被弾した際は一度、拠点に戻り、拠点に設置してある。ペイント落とし用のスプレーでペイントを落とせた時点で再出撃可能となります。しかし、ペイントを落としきる前に全員が被弾しますと、その時点でゲーム終了となります。」

 俺は深々と頷きながら天体観測部員達を見渡す、きっと内容を理解できていない美樹に、おどおどして落ち着きのない森本、無表情で男か女か相変わらず不明な舞浜、犬は律儀に伏せをして主人の傍らにしたがっている。はたしてこの面子でどこまでいけるか、と俺は思案しながらある結論に至る。


 無理っ!。


 いや勝てるほうがおかしいと言えよう。サバイバルゲーム初心者で且つ、昨日、顔を会わせた面子である。勝てるほうがおかしい。もし勝てたならばそれは黒い陰謀が蠢いているに違いない。

「次に勝利条件の説明をします。『ポイント制判定勝利』ゲーム終了時に被弾した回数を集計し、被弾がより少ないほうが勝利となる勝利条件です。次に『フラッグ奪取』こちらは双方の陣営に置いてある旗を入手し、無被弾状態で自陣に持ち帰ることで、勝利が確定します。勝利条件を使用しますか?」

「どうしよう?」

 美樹が3人に振り返り、勝利条件の決定について少し話した後、勝利条件は使用しないということで決まった。

「わかりました。では準備完了の宣言を行ないます。開始の宣言で行動開始してください。」

 雑賀が手を挙げて反対側の審判に確認すると向こうも同様に手を挙げる。双方の手が振り下ろされる。


「エリアウォー カジノ形式戦 開始!」

開始と同時に飛び出したのは美樹と甚五郎で東側にある樹木に姿を隠しながら相手の様子を伺う。簡単に公園の位置取りを説明しておくと、周囲一体を囲む様に植樹された樹木、北に相手陣営、南に天体観測部陣営、長いので以降天観陣営とする。中央には小さな噴水があり、東側は花壇とベンチがならび、西側に遊具が密集している按配である。夜間迷彩服を着た敵陣営の5人は突出した美樹を狙うべく一斉に美樹の方へ移動を開始する。俺はあの阿呆をフォローする為に噴水を盾に接近するその横を舞浜は平然と歩いていくので俺は慌てた。

「舞浜、隠れないと撃たれるぞ!」

「あの程度のおもちゃで撃たれるほど私も馬鹿ではない。」

 そう行って、敵陣営との距離を詰めていく、それに気づいた敵陣営の数人が舞浜に向かって射撃を加える。俺は言わんこっちゃないなどと思いながら敵に向かい威嚇射撃を行なうが弾はあさっての方向に飛んでいく。完全に天体観測部を素人と見た敵陣営の3人が樹木の間から飛び出し、連携し射撃を行ないながら舞浜に向かっていく。

「舞浜!下がれ!不利すぎる。」

 俺はそう叫んだが、当の舞浜乱舞は涼しい顔でペイント弾を回避し、敵と相対している。そして、敵との距離が3メートルを切った瞬間、一気に距離を詰めた乱舞の一撃が敵の一人を後方に吹き飛ばす。吹き飛んだ敵は腹を押さえうずくまり動けない。フォローの為に他の二人が乱舞に向かって射撃をするが、その銃弾を扇子で全て受け止め、露払いでペイントが地面に散る。扇子は完全防水・高耐久らしい。その隙に後ろに回りこんでいた美樹がサブマシンガンで三人をピンク色に染める。ペイント弾は敵陣営が青で天観陣営はピンク、どちらも蛍光塗料が入っているらしく淡く発光している。

「霧島、後ろだ。」

 乱舞が手持ちの扇子を投擲し、相手をけん制する。相手は扇子にかまわず、銃口を美樹に向ける。美樹は振り返らない。引き金が絞られた瞬間、木陰に隠れていた甚五郎が銃に食いつき、銃口を地面に向けさせペイント弾が地面を青く染める。それと同時に美樹が振り返り、サブマシンガンを一斉射、夜間迷彩の戦闘服をピンク色に染める。と同時に俺の額に青いペイント弾が着弾する。

「青被弾!速やかに後退してください!」

 審判の被弾のコールがかかる中、

「どこからの狙撃!?」と霧島

「わからん。しかし、西側か北側か・・・」

 舞浜はそう言いながら美樹に背中を合わせ、周囲を警戒する。

「木の上です!北0時準基、目標9時方向!」

 突然の森本の声に一番に反応したのは乱舞で反転し美樹の前へ躍り出ると、飛来したペイント弾を全て扇子で弾き落とす。それを見計らったかのように美樹がサブマシンガンを乱射するが、距離がある為うまく当たらない。

「任せてください!」

 森本が噴水を盾にしゃがみ込みスナイパーライフルの照準を一瞬で決めると引き金を引いた。

 バシュ

 スナイパーライフルのサイレンサーの銃声が夜空に響く。そして・・・


「桃色被弾!青陣営全滅。よって桃色陣営の勝利となります!」


 そう、こうして天体観測部のエリアウォー初勝利は電撃的に完結し、俺は空気の様な存在感を披露したおかげで、今後の天体観測部での地位がおおいに急降下し、更に理不尽な状況に巻き込まれてしまう。高尚な読者諸君はもう気づいていると思うが俺はただ振り回されるだけのヘタレではなく、あいつらが異常な奇人変人なだけで俺は至って普通の人であることを理解した上で読み進めてもらいたい。


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