E.A加入試験
夕食が終わっても新世界に行けない。いや、まずどうやって行くかも聞いて無いじゃないか。
幻視魔法をかけられた?すべて日向の演技?それすらも分からない。
いや最後のは無いか、一ヶ月同居してきたが日向があんなに流暢に喋っているところを私は見たことが無いし、多分できないだろう。
一人で考えていても仕方ない、まずT.Aのメンバーに新世界の事について聞かなくては。
ワンタッチダイアルで主席であるガイアこと南小町 麗に連絡を繋ぐ、
数コールの後、電話口から聞こえた声にはだいぶ焦りが混じっていた
「もしもし裏世ちゃん?これってどういう事?」
いや完全に焦っていた、言葉に主語が無い
「麗、大丈夫?一回落ち着いて、いったい何があったの?」
「………」
数秒時間を置き
「そうだよね、こういう時に私がしっかりしないといけないんだよね…今からT.A全員に召集かけるから、裏世ちゃんも用意しててね」
と今度は時間を置かずに言いそのまま電話を切られてしまった。
「すごい慌ててたな麗、結局何があったのか聞けなかったし…」
………………数分後
宇宙空間にあるT.A本部〔戦闘領域と会議室しかない〕に呼び出された5人は自分の席で暇をもて余していた、他の4人は行方不明らしい。相当な危機的状況というのは分かるが、私達をここに呼んだ麗の姿が見当たらない
「ねぇ裏世、麗はどこ行ったの?」
不意に右隣の席〔裏世の右隣の席は末席〕から声がかかる
「分からないわ」
他の3人も分からない、という顔をしていた。
今この会議室には、私の右隣の末席に行峠 祭、左に二席とばして副主席のヴェルバトール・W・クレッシェンド〔名前は英語だが根っからの日本人らしい〕、その向かい側に上1番の白百合 晶、その左隣に上3番の成神 七夕、の5人がいる。
グルリと4人を見渡して
「麗を待ってても仕方無いわね…」
そう呟き、私は新世界の事について聞くために全員に質問を投げ掛けた。
「ねぇ皆、この中で最近、新世界がどうこうっていう人に会った人はいない?」
「きのう会ったよ」と祭
「俺も昨日そんな奴に会ったな」とヴェル
「僕は今日その人に会いましたよ」と晶
「右に同じ」と七夕
4人とも今の状況とそれに何の関係が?という顔をしている
「皆そいつに力を貸したわよね?」
「どうせ実現しないだろうし、言ってることが面白かったから貸してやった」
ヴェルがそう言うと皆もそんな感じという風に頷いていた
「あはは、それが実現しちゃったんだよねー」
「__ッ」
私以外の全員が防御魔法を展開した、急に現れた麗の姿形をした全く雰囲気の違う別人を相手に
「誰だ貴様、南小町さんじゃないだろ」
と言いながらヴェルが個有魔法をノンスペルで展開する
『二重風船』
麗の姿をした別人……十中八九それは神埼だろうと踏んで私は防御魔法を展開しなかった、自分が展開した魔法が掻き消されるのは気持ちの良い物ではない、ましてや二回目なんて絶対に経験したく無い。
たった今、個有魔法『二重風船』を展開しているヴェルは、初めに会った時に防御魔法を展開しなかったのだろうか、なんて無用心なんだ、と他人事のように考えていると
「はぁ…手荒な歓迎は止して欲しいな、一応この体は君達のトップの南小町 麗ちゃんのなんだよ」
神埼が呆れながら言うとヴェルの『二重風船』や他の皆の防御魔法が掻き消える
「魔法を消すだと…」
ヴェル以外は絶句していた、普段はポーカーフェイスの七夕でさえも
皆が驚くのも仕方ないか、私も訳が分からずに問いを返したのだから、そんな事より何でここに来たのかを聞かなければ
「神崎君、今回は何の用でここに来たのですか?」
「あっ、裏世ちゃん僕の名前覚えててくれたんだ。良かった、もう一回自己紹介しないといけなかったらどうしようかと思ったよ」
「記憶力は良い方ですからね」
「裏世ちゃん、喋り方が丁寧語なのは何でだろう?」
「さぁ?それよりも何故ここに来たのですか?」
「まったく急かさないで欲しいなぁ、ここに来た理由はね、新世界が完成したのを今残ってるT.Aの皆に伝えようと思って来たんだよ」
「そうですか、では早く私達も連れて行ってはくれませんか?」
そんなに見たい訳では無いが皆のこの状況を見ると、早く話を進めた方が良いと判断した結果である
「それは無理だね、僕の転移魔法では君達を新世界の宇宙空間に放り出してしまう、だから」
「一度地上に降りて欲しいという訳ですか」
「そう言う事、僕は新世界での同じ場所にしか移せないから新世界に行く前にそばにいて欲しい人を『精神無線』なり何なりで呼んどいた方が良いよ、この世界とは違うから呼ぶのに手間取るかもしれないし、まぁまずは降りようか、詳しい話はそれからだ。」
と言われてもう落ち着きを取り戻していた4人は順々に降りていった
会議室に残ったのは私と麗に乗り移っている神埼
「裏世ちゃんは降りなくて良いの?」
「今から降りますよ?」
「そう、じゃあ先に降りてるね」
麗の体が光に包まれて消える
「はぁ、これからどうなるのかしら…」
そう呟きながら私も地上に降りた。
………………地上
私が地上に降りると〔T.A本部は東京都庁の真上にあるので正確には地上ではないのである〕、何故かニヤニヤしている麗の姿をした神埼、上を向き目を手で塞いでいるヴェル、顔を赤らめ下を向いている晶、好奇心全開で七夕の方を見ている祭、見知らぬ男の子と腕を組みイチャイチャしている七夕、そんな光景が目の前に広がっていた
この非常事態でよくイチャイチャできるな、というかこの男の子は誰だ、と頭の中で思っていると
いつの間にか七夕の隣を離れ私の目の前まで来ていた
「こんばんは、僕は七夕の許嫁で西 凜太朗といいます。」
西 凜太朗…聞いたことがある名前だな、と思いつつも無難に返事を返す
「こんばんは、私は識ヶ宮 裏世といいます、裏世ちゃんとでも呼んでください。えっと…私は何と呼べば良いんでしょうか?」
「流石に裏世ちゃんとは呼べませんよ。あははは……本気ですか?」
と言い本当に困った顔を向けてきた、女の子に免疫が無いのだろうか
「冗談ですよ、それでは…私は西くんと呼ばせてもらいますね」
これ以上苛めると七夕に魔法を展開されそうだから早々に自己紹介を切り上げる事にした
今までのやり取りを七夕の後ろで見ていた祭が急に凜太朗の腰を指差して
「あっ、凜太朗くん銃もってる」
と言うと、凜太朗は肩をビクつかせた
「二丁もってるね」
と神崎が言った、さらに凜太朗は肩をビクつかせる
神崎の位置は私の後ろ、つまり凜太朗の前にいることになる、どこに目が付いているんですか?と問いたいところだか、神崎の事だから大体何でもできるのだろうと、心の中で割り切った
二丁拳銃…魔法に関係する者なら拳銃くらいは持っていても不思議ではない、でも二丁もいるのか?それと名前にも引っ掛かる、西 凜太朗やはりどこかで聞いたことがある名前だ、それにしても何故ビクついているのだろうか?
私が考え込んでいると、考えている事を見透かしたように神崎が説明を始めた
「凜華光天流っていう二本の短剣を逆に持って戦う流派があるんだけどね」
知ってる?と言う風な顔を向けてきた神埼に私は首を横に振った、それを見て神埼は説明を続ける
「その流派の元はカスタムされた二丁拳銃で戦う凜太朗くんの動きを真似て創られたんだ。流派名にも凜って入ってるよね」
平常を取り戻した凜太朗が神埼に問いかけた
「よくそこまで知ってますね、普通の人なら短剣逆手持ち二刀流までしか知らないはずなのに」
その問いに神埼は含みのある笑みで言う
「まだ続きがあるから、詮索はまた後でにしてくれないかな?」
「………分かりました」
と案外素直に引き下がった
「えっと…光天の方はカスタム拳銃を見ないと多分イメージが湧かないないと思うな」
そう言うと神埼は凜太朗を見て
「凜太朗くんそのカスタム拳銃を見せてくれないかな?」
さっき詮索は後でと言ったくせに自分はすぐに破る
「すいません。流石にこれは見せれません」
と言い、心底嫌そうな顔をする
神埼は凜太朗の近くまで行き、その顔を見てニヤニヤしながら口を開いた
「はぁ…皆に世界最高峰のヒット」
「見せます、見せます、今すぐ見せます、全力で見せます」
そう言うと慌てた様子で白い拳銃を一丁、神崎に手渡した
「ゴメン、凜太朗くんトンファーにしてくれない?」
またニヤニヤしながら神崎が言うと
「はぁ………分かりました、貸してください」
そう言って、受け取った拳銃を振ると、弾倉が出切らずに止まり、そのまま手首を捻り銃口の逆向きにするとガシャと音がして銃口の方とその逆の方から金色の棒が飛び出し弾倉が収納される。これを1秒も掛からずにやってのけた凜太朗は
「これで良いですよね?」
と言いながらニコッとし神崎に銃口を向けたまま渡す
ありがとう、と棒読みで言い白と金のトンファーを丁寧に取る
二人の視線が交差した時に火花が見えたのは私だけだろうか
睨んでいる凜太朗を無視して神崎は説明を続ける
「これはWAT社で凜太朗くんのためだけに特注で作られたヴァルキリーっていう名前の拳銃なんだ」
その時ガチャリと音がする、目の前には神埼のこめかみにもう一丁の拳銃をあてている凜太朗がいた
「神崎さん、あなたはどこまで知ってるんですか?」
慌てて私が止めに入る
「に、西くんその体は麗のだから一旦落ち着いて」
「そういえば、そうでしたね」
麗の体から拳銃を離しその場から離れて行く間際に見せた虚ろだが奥に鋭さのある瞳には明らかに殺意が篭っていた
ふらふらと歩いていった凜太朗の先には七夕の姿があった、七夕の前まで行くと、凜太朗はその胸にポフっと顔を埋めた。その頭を包み込むように抱いている七夕
何イチャイチャしてるんですか、と言いたい心を抑えつけ神埼の方を向くと完全に伸びていた
「神崎くん大丈夫ですか?」
私が心配して問いかけると急にムクリと起き上がって
「ふぁーーー…あれ?裏世ちゃん?ね、寝てないよ」
神崎くん逃げ足速いな、それにしても便利な能力だ
そんなことを思っていた私は目の前で、あはは…と渇いた笑いをこぼす麗に、日向くんの時のように苛めようと一言
「じゃあ麗、その口元についてるあとは何なのかしら?」
言葉に詰まる麗、苦し紛れに出した言葉は強烈な浮遊感によって邪魔される事になる。
「こ、これは口から出たんじゃ、はわっ!!」
………………T.A 本部
ここは、T.A本部?私達が麗の召集以外でここに来ると言うことは…
そこには私の予想通り、次のT.A いや、次のE.Aになるかも知れない魔法使者がそこにいた。
「あっ、識ヶ宮さん!」
「日向…くん?」
頭の中が真っ白になった、彼が何故ここにいるのだろう、新世界に行く前に呼ぼうとしていた彼が何故、絶対に一人ではドジばかりして何も出来ないであろう彼が、何故…
目の前には、見間違えようも無い。私の家に居候している、日向 雄華がそこにいた。
「コレヨリ日向雄華ノE.A加入試験ヲ行イマス」
突然聞こえた無慈悲な機械質の音声は私の頭の中で何度も反響するのだった。
皆さん、お久し振りの叶多 十色です。
えーっと…多忙?じゃないんですけど、なかなか時間が取れないのと、バタバタしてたのと、あとボキャブラリーの少なさに直面したり、そのために夜ラノベを読んでいたり…あれ?書く時間作れたんじゃね?
そんなこんなでだいぶ遅れてしまいました。すいません。
気を取り直して今回のお話の説明にまいりたいと思います。
今回のお話は、新キャラが出てきたり、T.Aの組織の事にちょっと、ちょっと、触れてみたり、裏世ちゃんが心の中でツッコんでたり、託与くんはずっとマイペースで【いや、わざとか】凜太朗くんをぶちギレさせてたり…
見所は今回はほとんど無いですw自分で言うのもなんですがマジで無いです。まださわりの部分なんで見所は無いかなーなんてw【笑えないな、おい】、次のお話で雄華くんに一暴れしてもらうんで見所は次のお話にって事で。
次のお話はE.Aになるための試験と言うことで、設定の方に書いてると思うんですが加入には末席の魔法使者と戦って3分間持ちこたえるか、戦って勝ったら加入できるというルールです。
現在のT.Aの末席は行峠 祭ちゃんです。さぁ雄華くんとどんなファイトを見せてくれるのでしょうか!?てか、宇宙魔法ってなんだ、おい。と思われるかもしれませんが、それは次のお話のお楽しみと言うことで…
最後にあとちょっと、えースマホは踏むと壊れます。それとケータイのデータのバックアップは逐一するように心掛けて欲しいです。僕はバックアップしてなくて秘蔵画像と音楽を持ってかれました…あはははは
そんな渇いた笑いをこぼす叶多 十色はほっといて今回のあとがきも締め括らせていただきます。
こんなぐちゃぐちゃの小説を最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで読んでくれたあなたには感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも頑張りますのでこれからもDunce Not Danceを宜しくお願いします。
それではまた次のお話で