自称"神"との邂逅
『キャァァァァァァァァッ!!』
ジー、ジジー、ジジジ…プツン
銀髪の幼女が叫んだ後、監視カメラの映像が途絶えた。
ふと窓の方を見るとカーテンの隙間から覗く綺麗な夕日が私の部屋の床を赤く染めている
11年前の『西夕禅駅集団圧死事件』の時の監視カメラに残っていた映像を見て、
その時の事を思い出していた私の思考は、隣に居た少年の言葉によって遮られる。
「識ヶ宮さん…最後の悲鳴って高速詠唱、ですよね?」
「そうだと思います。」
少年の名前は日向 雄華
「女の子みたいな名前ですね。」と言ったら「名前に使ってる字は男の子用ですけどね。」と
皮肉めいた言葉が返ってきた。きっと名前の事は触れられたくないのだろう。
この日向という少年は先月、不良に絡まれているところを私に助けられ、
記憶消去魔法が効かないので同じ魔法使者ということが分かり
家を追い出されたとのことで私の家に居候をしている。
「居候させて大丈夫なの?」と、他の魔法使者によく言われるが、
「私の家はセキュリティ厳しいですし、日向君は皆が考えている様な事はしないと思いますよ。」
といつも返している。
これだけ心配されるのは、私が皆の前では清楚キャラを演じているからである。
それに日向が襲って来たところで返り討ちにできるので全然大丈夫なのだ。
ふと、隣を見ると日向はぐったりと寝ていた。
こんなところがまた日向らしいと思いながら近くにあったタオルケットをかけようとした時
日向が急に跳ね起きた。
「きゃッ!!」
私は瞬時に日向から離れた、さっきまでとは全然違う空気が日向を包んでいる。
「いやー5歳で高速詠唱を使えるなんて、さっすがT.Aに入るだけはあるね裏世ちゃん。いやグラビドちゃんって呼んだ方が良いのかな?」
他には誰もいないし私がT.Aだとバレているならもうこのキャラはいらないだろう。
「あなたは誰?」
と言いながら私は無詠唱で防御魔法を展開する。
「うわー警戒心MAXだね。」
まぁまぁ落ち着いてと言わんばかりに日向の顔をした別人は私を手で制す。
すると防御魔法が消えてなくなった。
「落ち着いて話そう、ね?」
「っ!あなた今なにをしたの?」
「魔法の無力化だよ。防御魔法越しだと声がほとんど通らないらしいんだ。」
「随分と軽く言ってくれるわね、無力化なんて。」
「軽くできるからね。でさ本題なんだけど」
「名前を名乗らない人の言葉を聞く気はないわ。まぁ名乗ったからといって聞くかどうかは私しだいだけどね」
「裏世ちゃんってけっこう自分勝手だね。まぁいいや、いずれ名乗る事になると思うし、裏世ちゃんにはここで名乗っておくよ」
そして一拍置いて、
「僕の名前は神崎 託与。でもって新世界の神。わかった?」
などと、とんでもない事を言い出した。
「は?」
何を言っているのだコイツは、頭がおかしいのか?
そんな事を考えているうちに、この自称"神"こと神崎はどんどん話を進めていく
「で、本題なんだけどさ、この世界、君たち魔法使者には不自由じゃない?」
何を言い出すかと思えば、この世界が不自由?そんな事、あの事件の後にはもう気付いていたさ。
「不自由に決まってるじゃない。」
「だよね。そんな君たち魔法使者の為に僕は新しい世界を作ろうと思います。っていうか、もうできてるんだよ。後は裏世ちゃんが承諾してくれたら完全に完成するよ。」
この神崎という人物はやはり頭がおかしいのか?世界創造なんてできるわけがない。それに、私の承諾?そんなもの、何に使うというのだ。
「まぁ、見た方が早いかな…ちょっと気持ち悪いかもしれないけど我慢してね。」
というと視界が黒く染まり、神崎しか見えなくなったかと思うと、とつぜん無重力の空間に投げ出される。
「ここがさっき言ってた新世界だよ。他のT.Aのガイアちゃん、スカイくん、ユニバースちゃん、ライトくん、ダークちゃん、ヴィオちゃん、ヒートちゃん、ウォーターくん、ウッドくん、の力と僕の力で造った、"まだ不完全な"もう一つの世界。」
目前には、膨大な量の水、木々、土、岩、真っ暗な空間にそれらが無造作に散らばっていた。世辞にも新世界と呼ぶには相応しくない光景が広がっていた。
「不完全ね。これは……」
と自然に口から言葉がこぼれ出た
「…大地、空間、宇宙、光、闇、生物、熱、水冷、樹木魔法のスペシャリストに力を借りて、ここまでは造ったけど」
神崎は一拍置いて
「やっぱり重力魔法を使わないと世界を保てないことがわかったんだ。いやぁT.Aって上手くできてるよね、なにせ全員が世界創造に必要な子達なんだから。」
「で、重力魔法使者である私に協力を求めに来たというわけ?」
と私が聞き返すと
「話が早くて助かるよ、でも裏世ちゃんには継続的に魔法を使ってもらわなきやいけないんだ、他の子達は強大な魔法を一回使えばそれ以上魔法は使わなくて大丈夫なんだけど」
「重力魔法は継続展開しないといけないと言うの?」
「そうそう、ホントに話が早いね、でさ、この世界にいる限り魔力を無尽蔵に提供するっていうのでどうかな?あと不老不死もつけて」
セールスマンみたいなやり口だなと思いつつも
「わかったわ、新世界創造に協力しましょう」
と私は軽々と承諾してしまった。
「じゃあ、いったん元の世界に戻ろうか」
神埼がそう言うと一瞬で元の世界に戻ってきていた
「念じるだけですぐ行き来できるのね」
「まだ不安定な世界だからね、でも裏世ちゃんのおかげでようやく完成する」
「私のおかげね…」
神埼は両手を広げて私を元気付けるように一言
「世界なんて裏世ちゃん次第でどうとでもなる、裏世ちゃんにその気があればね」
「え?」
神埼は私の問いかけに答えなかった。
「君達がご飯を食べ終わるころには新世界は完成してるだろうから」
そう言いながら片手をあげて
「じゃあまた新世界で」
「あっ…待って」
日向の体がガクリと崩れたと思うとすぐにムクリと起き上がって
「……ん、寝、寝てませんよ」
と言いながら私の部屋をソロソロとを出て行こうとする日向
今日は色々あって疲れたから久し振りに日向でもイジろうという考えが私の頭に浮かび
「日向君、あれを寝ていないと言うのなら、今の事をどう説明する御積りですか?」
と言葉で攻撃を浴びせてみた
「いや、最近ちょっと貧血ぎみで…」
と脈絡の無い嘘を言いながら、なおも部屋を出て行こうとする日向
その時コンコンと扉が二回ノックがされ
「お嬢様、入室宜しいでしょうか?」
「はい。大丈夫ですよ」
これで日向の退路は消えたな、心の中で笑っていると扉が開き鷺島が
「お嬢様、雄華様、下でお食事の準備が整いました」
「わかりました。さあ日向君、いきましょうか」
「は、はい…」
こうした、ぎこちない雰囲気で元の世界の最後の夜は過ぎていった。
今回は、僕の厨二病+少ないボキャブラリーで構成された
グラビどっ!!第2部自称"神"との邂逅をお読みいただき、ありがとうございます。
今回のお話は
自称"神"である神崎 託与君を始め日向 雄華君や他のT.Aのメンバーなど結構な人数を一話に押し込めてみました。
さすがに無理があるかな?とは思いましたけど、なんとか「?」一話に押さえることができました。
下手な文章に関しては中学二年という事をふまえて、「フッ、中二だしこんなものか」程度に考えてくれれば幸いです。
次のお話は…進めずに人物紹介を書くと思います。髪型とか髪色とか眼色とか色々わかった方が想像しやすいかな、と思った僕の勝手です。
多分次の人物紹介で僕の厨二っぷりが良くわかると思います。
一応モットーは3日に一回小説投稿なので、それなりに応援してくださると助かります。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
人物紹介は比較的書きやすいので、すぐに投稿できるはずです。
これからもグラビどっ!!を応援宜しくお願いします。
ではでは、またのお話で。