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クロノス・キャリアー~最強個体《クロノス》の器となった傭兵、銀河の闇から世界を救う~  作者: マルゲリータ鈴木


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7/10

episode:07

 会社への案内は明日――そう決まり、アシドはカリナと別れた。


 宿屋のベッドに仰向けになり、天井をぼんやり見上げる。

 指先を軽く払うと、宙に半透明のウィンドウが立ち上がった。連絡先と、簡単なプロフィール。


「カリナ・ハーバー……」


 思わず、その名を口にしていた。


 不思議な少女だ。

 クロノスの力を使っても“歪み”が生じない――そんなことは、今回が“二度目“だった。


「なんじゃ。あの娘に惚れでもしたか?」


 不意に、部屋の中で声がした。


「……誰だ!」


 反射で上体を起こす。

 視線を走らせた先、ランプの灯りの下に――白いボブカットの幼女が立っていた。


 幼い見た目に似合わず、頭の両側には小さな角が二本、ちょこんと生えている。


「誰とは心外じゃな。――我じゃ、我」


「まさか……クロノスか?」


 幼女はニヤリと笑い、得意げに頷いた。


「……お前。なんだ、その姿は」


「ふむ。娘と別れる前に、我の力で“分身体”を作っておいたのじゃ。貴様の中から、この身体を操っておる」


「分身体……?」


「姿を消して驚かしてやろうと思ったのじゃが――大成功じゃな!」


「勝手なことを……」


 アシドは深く息を吐き、こめかみを押さえた。

 長い付き合いだ。こいつに何を言っても無駄だと、骨の髄まで分かっている。


「それより、貴様よ。やはりあの娘の力が気になったのであろう?」


「ああ……まあな」


 目を細める。

 思い出すだけで、胸の奥が僅かにざわつく。


「世界に影響を与えずに、お前の力を使えたのは……あの日以来だ」


「あの“オーブ”を使ったときじゃな」


 アシドは黙って頷いた。


 五年前。――《環裂のコロニー事件》。


 その時、かつて所属していた組織から、琥珀色に輝くオーブを手渡された。

 あれを握っている間だけは、今日のようにクロノスの力を最大限行使しても、世界に歪みが残らなかった。


「だが……歪みが出るときと、出ないとき。違いはなんだ?」


「シンプルじゃ。おそらく“距離”と、“我の力の大きさ”じゃな」


「距離は……カリナに近いほど、ってのは分かる」

 

 アシドは言葉を継ぐ。

 

「力の大きさってのは、世界に与える影響のことか?」


「その通り。貴様が我を強く引き出すほど、歪みも大きくなる。

 あの娘から出るマナがその歪みを固定、抑え込んでいるように感じたのじゃ」 


 幼女――クロノスは指を一本立てた。

 

「つまり貴様が我の力を“最大限”使うには、娘が側にいる必要がある」


「……そもそも、カリナになぜあんな力がある」


「我の力による代償を抑えるほどの力が、なぜあの娘にあるのか我も知らん」


 即答だった。だからこそ、背筋が冷える。


「ただ確かなのは、あの娘も“普通”ではないということじゃ」


 クロノスは口角をつり上げる。

 

「それを確かめるために、会社に入る気になったのじゃろ?」


「……それもある」


 アシドは、宙に浮かぶウィンドウを見つめたまま言う。


「だが、それだけじゃない」


「ほう? というと?」


 アシドは、自身の手に感じた、カリナの手の温もりを思い出す。


「カリナとなら――今まで見えなかった“何か”が、見える気がする」


「えらく抽象的じゃな」


 笑う声が、やけに近い。


 アシドは答えなかった。


 ずっと一人で戦ってきた日々が、変わる。

 どこかに所属すべきではない――そう分かっている。

 それでも、その“前提”を揺らがせたのが、カリナという少女だった。


 ――やはり、不思議な存在だ。

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