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第9話 封印の管理者

隠れ家。古いアパートの一室。

カーテンを閉め切った部屋で、アヤはベッドに横たわっていた。

胸の傷はシンとタクミが手当てしたものだ。

まだ熱があり、顔色が悪い。

タクミは台所でスープを温めている。

シンは窓辺に立ち、外を警戒していた。

「……総帥が、すぐには動かないはず」

アヤが弱い声で言った。

「私が裏切ったこと、すぐに信じないから」

「でも、時間は少ない」

シンは振り返った。

「お前、なぜ裏切った?」

「本当の理由を聞かせろ」

アヤは目を閉じた。

それから、ゆっくりと語り始めた。

5年前の暴走の詳細を。

自分がシンに守られたことを。

そして、審判者の教えと、心の矛盾を。

話が終わると、部屋は静かだった。

タクミがスープを持ってきて、アヤに飲ませる。

シンは拳を握りしめた。

「……俺のせいで、お前は――」

そのときだった。

部屋全体が、淡い光に包まれた。

しかし、いつもの円環ではない。

白ではなく、金色の柔らかな光。

床に、巨大な円環がゆっくりと描かれる。

【特殊領域《封印の間》展開】

【参加者:結城シン/限定招待】

タクミとアヤが驚く。

「先輩!?」

「これは……!」

シンは、光の中心に引き込まれるように、一人で立っていた。

世界が、変わった。

そこは、無限の白い空間。

足元に、無数の鎖が絡まり、シンの身体を繋いでいる。

向かい側に、女性が立っていた。

長い黒髪。優しい目元。

年齢は20代後半くらい。

シンは、息を飲んだ。

「……姉さん……?」

女性――結城ミコトは、静かに微笑んだ。

「久しぶり、シン」

「大きくなったね」

シンは震える声で言った。

「死んだはずだ……5年前、俺の暴走で……」

ミコトは首を振った。

「違うよ。私は、自ら命を捧げて、お前に封印を施した」

「お前が世界を壊さないように」

シンは膝をついた。

鎖が、ガチャガチャと音を立てる。

「なぜ……姉さんが……」

ミコトが近づいてくる。

「あなたは強すぎた。

 力に飲まれかけてた」

「だから、私が残したのは“審判の円環”」

「謎解きで力を開放するシステムは、お前に“知恵”と“仲間”を学ばせるためだった」

シンの目から、涙がこぼれた。

「……全部、姉さんの仕業だったのか」

「ペナルティも、領域も……」

ミコトが頷く。

「ペナルティは、お前が一人で戦おうとするたびの罰」

「誰かが先に解いても、お前が苦しむようにしたのは、

 “一人じゃダメだ”って教えるため」

シンは顔を上げた。

「でも、姉さん……俺は、もう一人じゃない」

「タクミが、アヤが、いる」

ミコトの目が、優しく細まる。

「知ってるよ。ずっと見てた」

「だから、もう大丈夫」

鎖が、一本ずつ、音を立てて外れていく。

「全ての謎を解いたとき、封印は完全に解ける」

「でもそのとき、世界を壊すのも守るのも、お前次第」

シンは立ち上がった。

「……俺は、守るよ」

「姉さんが命を賭けた世界を」

ミコトが、ゆっくりと手を伸ばす。

シンの頰に触れる。

冷たく、でも優しい感触。

「信じてる」

「私の弟なら、きっと」

光が強くなる。

ミコトの姿が、薄れていく。

「待って! 姉さん!!」

シンは手を伸ばすが、掴めない。

ミコトの最後の言葉。

「ありがとう、シン」

「もう、寂しくないよ」

光が爆発した。

シンは、現実の部屋に戻っていた。

タクミとアヤが、心配そうに見つめている。

「先輩!? 大丈夫!?」

「今のは……」

シンは、静かに涙を拭った。

「……姉さんに、会った」

二人が息を飲む。

シンは立ち上がった。

身体の奥で、力が満ちていく。

封印は、あと一歩で完全に解ける。

「総帥を、終わらせる」

「姉さんのためにも」

外で、ヘリの音が近づいてくる。

審判者の総攻撃が始まる。

シンは窓を開けた。

夜空に向かって、静かに呟いた。

「……行こう」

三人で、闇の中へ飛び出していく。

──第9話 終──

(第10話へ続く)

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