雨の中で
百合和葉・・・ ヒロイン
夜琉夫・・・主人公、敬語属性
入学式・・・
新しい学年、新しいクラス中学から高校に上がったばかりの僕は爽やかな気分だった
-お〜っし、HRはじめんぞー-
-まずは自己紹介だ
俺ぁ梶原太一、担任だ
おめぇら、高校に入ったんだから中二ノリは止めろな不純異性交遊もほどほどにな
以上、じゃあ出席番号1からやってけコノヤロー
あ、早速ふざけた事抜かしたらバルスるからな-
意味がわからない
おっと次、僕の番だ
「夜琉夫です
趣味は読書とネットサーフィンとニコ動サーフィンと釣りです
よろしく」
-一個だけ普通のがあるな、よろしく-
そして自己紹介は進み・・・
「出席番号25、百合和葉です
部活では帰宅部に所属、妨害してきた担任の頭部の人口物を破壊するほどの成績でした
担任の頭部の暗黒物質が人工物質かどうかが激しく気になりますがそこは言わない方が優しさだと思うのであえて聞かず自己完結しようと思います
よろしく」
・・・こりゃ中学ん時に頭打ったな
見たところかなり美人だが・・・
残念だ
「ちなみに夜琉夫君とは・・・やっぱり止めておきます」
教室がざわつく
そりゃそうだ
顔を赤らめながら美人が「やっぱり止めておきます」だ
気になるだろう
気になるよな?
俺だって気になるよ馬鹿野郎
意味がわからん
「おい、夜琉夫、て誰だよ」
・・・このやろう
そっちか
「まちなさい、どういう事ですか?」
「あ・・・夜琉夫君・・・言っちゃって良かったの?」
「何をですか?」
「ひどい!私とは遊びだったのねっ!」
ますます意味がわからない
-はっはっはっ早速修羅場か!
別れちまえ-
黙れ
頭部の暗黒物質が人工物質なボールペン買った時について来るペン先のいらないゴムが
結局自己紹介はそのままうやむやに
って事で百合さんに呼ばれたので校舎裏に来ています
「百合さん、さっきのアレ何ですか?」
「一目惚れしました」
「は?」
「決めた!私!夜琉夫君の彼女になる!」
「いきなりなにをいってんですか?」
「好きです付き合って下さい」
「意味わかんないです」
「OKなら第二公園に来て下さい
ずっと待ってるからっ!」
「(・・いくわけねぇよ
ていうか帰り道じゃねぇか)」
その日、公園をちらっとみると百合さんがベンチに座ってた
なぜかツナギを着ていた
なぜかジッパーを下げだした
逃げた
次の日、さりげなく彼女を観察してみた
「パルメザアアアアン!
夜・琉・夫・パルメザアアアアン!」
無茶苦茶元気じゃねぇか
しかも夜琉夫パルメザン、てなんだ
パルメザンはチーズだ
あなたは百合さんだ
夜琉夫パルメザンは誰だ
・・・俺か
帰り道、公園の前を通り過ぎる
・・・いた
俯いてじっと座っていた
表情は見えない
その次の日も、さらに次の日も彼女は座って待っていた
休んだ日もあった
早退した日もあった
いつしか僕は遠回りして帰るようになっていた
彼女がだんだん痛々しく見えるようになってきた
そんな彼女を見たくなかったのもある
ある日、雨が降っていた
超土砂降りだ
傘・・・意味ねぇよ・・・
そう思いながら一人帰っていた
公園を避け続けもう五ヶ月が経とうとしていた
そういえば、と考えてみるこの学校に来て、友達らしい友達はいない
グループはでき始めてるから
今から頑張ってももうかなり厳しいだろうな
まあ、元々作る気もない
そんな中、百合さんの事を思い出した
唯一、どういうつもりか知らないが自分の側に一瞬でも来ようとしてくれた人
「第二公園で待ってます」
唐突に頭の中で再生された過去の映像
・・・ふぅ、と溜め息をつく
たまには公園前を通って帰ろうか・・
公園前、通り過ぎるとき
たまたま公園を見ると・・・
いた
百合さんが傘も持たないで雨でびしょびしょになりながらブランコに座っていた
なぜだろうか
いつもなら顔を背けて帰るだけなのに
顔が動かない
帰りたいのに足が動かない
いや、足なら動いた
公園の方向に・・・
「・・・なにをしてんですか」
後ろから話かける
表情は見えない
「あなたは馬鹿ですか・・・」
「・・・うん・・・」
「僕が来るわけないじゃないですか」
「・・・来てくれた
ちゃんと来てくれたよ・・・
夜琉夫・・・」
「あなたが無茶するからつい来てしまいましたよ」
「・・・うん」
「どういう意味かわかりますよね?」
「うん・・・」
「とりあえず僕の家に行きましょう
あんまり辛い思いはさしたくないんですよ
・・・自分の恋人にはね」
手をのばす
彼女がその手を握る
表情は・・・雨で濡れてびしょびしょで冷え切っているはずなのにとても暖かい笑顔だった
ドラマやアニメなんかならここで晴れるのだろうがそんな事する作者じゃない
むしろきつくなってきた
このやろう、作者め
この時くらい空気読みやがれ
はあ・・・
・・・やれやれ、これは当分やみそうにないな
公園を後にする二人、
未来はきっと楽しくなる・・・
そんな確証なんてどこにもない
でも、なぜだろうかこの学校に、いや、今まで生きてきた短い人生で初めての気持ちだ
おっと、家に着いた
さっさと彼女の服を乾かしてしまおう
では・・・
・・・カチャ・・・
ギィ・・・・
・・・パタン