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学院山へ4

 馬も購入できたので、あとは王都に向かうだけだ。ここから王都までの道はしっかりと整備されている上、馬車の往来も多いから、危険はないと思われた。私たちは王都で約20日間を過ごす予定でいる。

 

 王都では調べ物や必要な買い物をしたいし、楽しみにしているフリーマーケットにも行きたい。


 その際のお小遣いはルルソン村から王都へ来るまでに採集した物や狩った魔物の素材を売れば十分に足りるはずだ。

 

 私たち全員、冒険者ギルドと生産者ギルドに登録済みだ。この国では、奴隷であっても買主が許可すれば問題なくギルド登録ができるし、クエストも受けられる。専用口座を持つことも、買主の許可があれば可能だった。

 

 だから、素材を売る際は基本的に生産者ギルドを使い、その際のポイントは10人平等に割り振ってもらうことにしている。報酬についても、半額は共同口座に入れ、残りは均等に各自の口座に入れると決めた。だから王都では、各自がそのお金で自由に買い物をする予定だ。皆、何を買うか、すでに夢を膨らませているようだった。

  

 少しでもお小遣いを稼ぐため、王都までの道のりは街道を少し外れて、採集や狩りを繰り返した。そうして王都に到着したのは昼の2時頃だった。私とマッド、リオとマリアはそのままブライトン侯爵家のタウンハウスへ向かったが、残りの皆はギルドへ行き、馬車いっぱいに積んだ品物を生産者ギルドまで売りに行ってくれた。彼らの働きにはいつも感謝している。

 

 タウンハウスの重厚な扉が開くと、そこにはお父様とお母様が笑顔で立っていた。その温かい眼差しに、心が安らいでいくのを感じた。

 

「お帰りなさい、元気そうで安心したわ」

お母様が優しく抱きしめてくれる。その温かさに、旅の疲れが癒やされていくようだった。

 

「お帰り。顔を見られて安心したよ。色々な街や村を見てどう思ったか、聞かせてくれ」

 

 お父様の言葉に、マッドはアルセル街での不快な出来事を報告した。門番の不正や、街の治安悪化について詳しく話すと、お父様の顔がみるみるうちに険しくなった。

 

「あそこは年々酷くなっており、陛下も気にされている。先代のアルセル侯爵が亡くなり、長男が跡を継いだんだが、その頃から変わり始めたと言われているな。長男は当時25歳と若かったが、治められない年齢ではないと陛下も認められたんだ。だが、最近は悪い噂ばかりだ。領地というのは領主次第で変わっていくものだよ。代替わりは特に注意が必要で、領地運営が上手く引き継ぐのは、前領主がご存命中に代替わりをするのが一番いいと言われている」

 

 お父様の話を聞きながら、私はミシェランの状況を思い浮かべた。マッドは続けて、ミシェランについて尋ねた。

 

「父さん、ミシェラン領はどんな具合ですか?」

 

「あまり順調ではないようだ。これ以上の様子見は無理かもしれないな」

 

 マッドが聞くと、お父様はさらに渋い顔をして答えてくれた。

 

 この前ミシェランへ寄った時、私は外出はしなかったものの、使用人同士の会話から色々と察した。

 

 スラム街になりつつある場所の話、スリやひったくりが増えた話、夜の外出が危険になった話……。耳に入ってくるのは悪い話ばかりで、そのたびに胸がざわついた。

 

 それにマッドも外出の際に襲われたと聞いている。あの穏やかだったミシェランが、短期間でこんなにも荒れてしまうなんて。

 

 お爺様はこれから大変になるだろうと、お父様は心配されていた。お父様の言葉には、領地を治める者の責任と苦悩がにじみ出ていた。

 


「父さん、俺は卒業したらすぐにキャロルと結婚するつもりでいる。いや、可能であれば在学中に結婚したいと考えているんだけど、いいだろうか?」

 

 マッドが突然に話し出したので、私は驚いた。確かに結婚の話は以前から聞いているけれど、こんなに急ぐことになるとは思っていなかった。まだ少し早いのではないだろうか、という思いが頭をよぎる。

 

「キャロルはどうなの? それで問題ないの?」

 

 お母様が優しく尋ねてきたので、私は顔を真っ赤にしながらも、力強く頷いた。マッドの隣で生きていきたいという気持ちは、ずっと変わらない。

 

「マッド、一応結婚は成人していれば可能だが、どうしてそんなに急ぐんだ? お前たちは既に同じ家に住んでいるから、結婚しているようなものだろう。何か理由があるのか?」

 

 お父様が冷静に問いかける。

 

「婚約と結婚では法的に全く違う。俺の気持ちは変わらないし、キャロルとの結婚はできるだけ早い方がいい気がするんだ」

 

 マッドは真剣な眼差しでそう答えた。彼は直感持ちだ。きっと、何かを感じ取っているのだろう。この厳しい世界だからこそ、早く一緒になりたいと思う気持ちが強いのかもしれない。

 

「分かった。二人がいいんであれば、マッドの17歳の誕生日後に式を挙げよう」

 

 お父様がそう言うと、お母様が嬉しそうに頷いた。お母様の表情は、まるで自分のことのように喜んでいる。

 

「それなら僕とマリアも、17歳の誕生日後に式をあげるよ!」

 

 リオが続いて宣言した。隣を見ると、マリアは顔を真っ赤にして俯いている。リオのストレートな言葉に驚きながらも、その瞳の奥には、秘めた喜びが揺れているのが見て取れた。

 

「リオ、悪いがマリアは王女だ。陛下がお決めになることだから、私からは何も言えない。」

 

 お父様が申し訳なさそうにリオに謝った。リオの表情には、少しだけ残念そうな色が浮かんだ。

 

 私たちの未来が、少しずつ形になり始めている。それは、たくさんの不安と、それ以上の希望をはらんでいた。


 

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