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学院山へ1

 朝7時にルルソン村を出発し、夕焼けの小屋で2時間ほど休憩を取った後、再びミシェランに向けて馬車を走らせた。

 

 インディとランランは、11月頃に冒険しながら学院山へ向かうと教えてくれた。到着は12月頃になるそうだ。私はランランを何度も抱きしめた。ふわふわで本当に可愛い。こんな愛らしい子と別れるのは寂しいが、再会を楽しみに待つことにしよう。

 

 そして再び馬車で出発し、ミシェランのブライトン侯爵邸へ到着したのは夜の10時過ぎだった。

 

 この先は長旅になるため、馬たちをここでゆっくり休ませるためにも、ミシェランには3日間滞在することにしている。

 

「マローネ、しっかりと休んでね」

 

 私がそう言うと、愛馬のマローネは嬉しそうに頭を下げた。

 

「マローネ、可愛い」

 

 私がマローネをブラッシングしていると、マッドの愛馬グリフィスもやってきたので、同じようにブラッシングをしてやった。馬たちの艶やかな毛並みを撫でていると、旅の疲れも癒やされるようだ。

 

 すると、近くでマッドとジルの会話が聞こえてきた。

 

「マッド様、ここから王都までは休憩を入れて14日ほど掛かります。少し道は外れますが、馬の産地であるホース町には寄られますか?」

 

「ああ、できたら寄りたいな。エリィとバンスの馬が必要だろう」

 

「はい、向こうでは馬は必須ですからね。王都で購入も考えてはいたんですが、可能であれば王都で買うより安く売っているホース町で選びたいですね。ただ盗賊が出なければいいんですが……」

 

 結局、本人たちに尋ねることに決めたらしく、全員が集まった。

 

「私は騎馬があまり得意ではありませんので、馬を借りられれば充分です。それに、馬を購入する資金を持っておりません」

 

 エリィが遠慮がちに言った。

 

「購入はエリィの主人である俺が全額出すので、考える必要はない」

 

 ジルがエリィに対してきっぱりと言い放った。彼の頼りになる姿に、エリィの表情が少し明るくなったのがわかる。

 

 バンスはドナを見ているが、ドナは無言のままだ。

 

「ドナはどうだろう?」

 

 マッドがドナに尋ねた。

 

「えっ、私は馬を既に持っているし、キャロル様にはマローネという立派な馬がいますので必要ないですよ」

 

「えっ?」

 

「?」

 

 マッドとドナの会話は噛み合っていないようだ。どうやらドナは、私の馬について話していると勘違いしているらしい。

 

「ドナ、俺の馬のことに決まってるだろう! 俺は騎馬には自信があるし、デカイ馬じゃないと無理だからな、頼むぞ!」

 

 バンスが自ら言い出した。彼の言い方に、ドナは呆れたような顔をしている。

 

「マッド様、やっぱりバンスはルルソン村に残すことにします」

 

 ドナが冗談めかして言うと、皆から笑いが起こった。皆がホース町を見てみたいと言うので、そちらで何日か滞在することに決まった。バンスの馬については、ジルがドナに説教をしていたので、ドナが購入することになるのだろう。少し不憫だが、それもまた彼ららしいやり取りだ。

 

 マッドはミシェランのブライトン侯爵邸の敷地内に私たち専用の別宅を建築し、魔法陣を描くつもりでいる。今回の滞在中に地下を作り、魔法陣を描くことは難しいが、できるところまで進めたいと意気込み、懸命に作業に打ち込んでいる。そんなマッドを見て、バンスとジルも手伝いに加わり、地下掘りを手伝っている。彼らの熱意に私も何かできることはないかと考え、薬膳料理を作ることにした。

 

 この前マリアが作ったおにぎりは、食べやすい上にとても美味しかった。私は魚の切り身を入れたおにぎりがお気に入りだったけど、わかめご飯のおにぎりも美味しかった……そんなことを考えていたせいか、おにぎりを真似た薬膳料理ができあがった。一つ食べてみたけど、食べやすい上にとても美味しい。これなら、疲れたマッドたちの栄養補給にもなるだろう。

 

 自信満々でマッドたちに持って行ったら、3人とも「とても美味しい」と言って、あっという間に平らげてくれた。マリアのおにぎり屋さんは絶対に繁盛するだろうと、改めて確信した。

 

 私は掘った地下に入り、少しだけ採掘させてもらった。すると、美しい黒い石が取れた。そこで私はその石に願いを込めながら磨いた。

 

「マッドの負担が少しでも減りますように。マッドの助けになりますように」

 

 そう言って、何度も何度も繰り返しながら丁寧に磨いた。そして次の日には磨き終わり、丈夫な紐を付けてペンダントにした。

 

 すると、マッドが近くに来て私に話しかけてきた。

 

「キャロル、磨いていた石が気になるんだけど、見せてくれるかな?」

 

 マッドに見せると、彼はため息を吐いた後、私の頭を優しく撫でてきた。

「これはまたすごいのが出来上がったね、ありがとうキャロル。お陰で早く終わりそうだ。ジルに早速渡してくるよ」

 

 私が作ったのは、真っ黒の美しい石のペンダントだ。黒だから派手さはないので普段から身につけやすいだろう。

 

 その石には、特別な情報が宿っていた。

 

「ジル専用、主人の補助(大工、魔法陣、修理)主人の能力を少しだけ借りることができる」

 

 しばらくすると、ジルが私の方に走ってきた。その顔は今まで見たこともないほどに輝いている。

 

「キャロル様、ありがとうございます! 俺、こんなに嬉しい物もらったのは初めてです! 墓場まで持って行きます!」

 

 ジルは歓喜した声でそう言った後、深く頭を下げて、再びマッドの所に戻って行った。彼の喜びようを見て、私も心が温かくなった。

 

 その日の夜、マッドに石の効果があったのかを聞いてみた。

 

「ああ、お陰で凄い速さで作業が進んだよ。今日は朝から魔法陣の仕上げをするところだ」

 

 マッドは嬉しそうに言った。

 

 ジルは随分前からマッドの補助をしたくて、大工や魔法陣については多くの本を読んでいた。もちろん、本を読むだけで身につくものではないと分かってはいたが、それでも諦めずに読み漁っていたのだ。それもあり、今回の石が「ジル専用」となったのだろう。石の効果はスキル持ちには到底敵わないが、ないよりははるかに良いはずだ。ジルの努力が報われたのだと思うと、私も嬉しい。

 

 魔法陣も完成し、マッドは今、ルルソン村に飛んで自らお父様とお母様に報告に行っている。今日中にお父様とお母様の魔法陣の登録は済ませることができるだろう。

これで、いつでもルルソン村と学院山、そしてブライトン侯爵邸を行き来できる。


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