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旅を終えて マッド視点

マッド視点

 

 父さんに呼ばれ、俺とリオ、キャロル、マリアはブライトン侯爵邸へ向かった。父さんは、この前の盗賊たちについての話を始めた。

 

「大体のことはマーカスから聞いていると思うが、大盗賊団の一つは壊滅しただろう。ただ奴らは小さいのが集まってできた組織だからな、壊滅とは言えない。それでも多くの山賊や盗賊が捕まったことで、村民や町民の被害は減るだろう」

 

「人質になっていた者たちはどうなりましたか?」

 

リオが聞くと、父さんは教えてくれた。

 

「何人かが鑑定した結果、被害者で間違いないと判断されたので、現在は国が保護している。ただ洗脳されている可能性もあるので、誰もが引き取るのは躊躇している。ただ一人だけ、国にとって有益なスキルを持っているので、きちんと教育を受けさせたいそうだ」

 

「その一人とは、光属性で回復や浄化スキルを持ったランドのことですか?」

 

「そうだ。光属性だけでなく、回復や浄化スキルを持つ者は珍しい。彼は調べたところ、魔力量や質もかなり良いので、将来は王宮魔術師として活躍できるかもしれないそうだ」

 

 それはランドにとっても良いことなのだろう。

 

「今回の件で、俺とミランとお前たち8人に国から褒賞が出ることが決まった。明日にはミシェランに行き、王都に向かうから急いで準備をしないといけないぞ」

 

「準備って?」

 

 リオが言うと、父さんがニヤリと笑った。

 

「マッド、リオ、キャロル、マリアは貴族として正装をしないといけない。側仕えの4人は正装とまでは言わないが、きちんとした服を着ないといけない。分かったな」

 

 母さんがそれに続けて言った。

 

「明日は早めにミシェランのマルクスの店へ行くわ。貴方たちの側仕えにもしっかり教育をしておいてね」

 

ドナやボンドンは大丈夫だろうか、と俺は心配になってきた。彼らにとって初めてのフォーマルな場だ。

 


 俺たちは自分たちの家に戻り、すぐに皆に褒賞の件を伝えた。不思議なことに、ドナとボンドンはすごく喜んでいる。反対に、ジルとレティは酷く青ざめていた。おそらく、自分たちの指導責任が重くのしかかったのだろう。

 

 ジルとレティは、すぐにドナとボンドンの指導を始めるようだ。マリアは自分のドレスをドナに着せ、ボンドンにはジルの執事服を持ってこさせている。おそらくドナとボンドンは、今日は寝させてもらえないだろう。

 

 俺は新しく仲間になったワオンとパオス(ワンス)の作業部屋を作ろうと思い、図面を書き始めた。二人を呼び意見を聞きながらまとめていると、カイトが近くでこちらを伺っているのを見かけたので、彼にも一緒に話に加わってもらった。カイトはジルに少し似たところもあり、頭の回転が早いようだ。作業部屋の下に地下を作り、物置にしたいので、地下掘りをカイトに依頼し、俺は横で彼が作業する様子を見ていた。本当にスキルとは素晴らしいと、俺はカイトを見ながら改めて感じた。彼の動きは、スラムで生きてきたとは思えないほど洗練されていて、集中力も高かった。

 

 俺の出る幕はなさそうなので、俺は他の作業を始めた。カイトも少しずつだが、俺たちに打ち解けてくれたようだ。

 

 次の日の朝早く、カイトが俺に聞いてきた。彼の顔には、昨日よりも少しだけ明るい光が見えた気がする。

 

「昨日の作業の続きをしてもいいですか?」

 

「ああ、是非頼むよ。ワオンとパオスの作業部屋だから、彼らに途中で確認はしてほしい。資材はムッサリやジータにお願いすれば用意してくれるだろう。でも絶対に無理はするなよ、食事と睡眠はきちんと取ってくれ。それにルルソン村もいいところだから、ハンナと一緒に見学に行くといいし、ギルド登録してクエストをこなすのも楽しいと思うぞ」

 

 すると、ワオンが話に入ってきた。

 

「わしらもギルド登録をしたいんだが良いか?」

 

 俺は笑顔で答えた。

 

「ああ、もちろんだよ。登録料と昼食代の四人分をワオンに渡すから行ってくるといい。ちなみにクエスト報酬は全て自分たちの自由にしていいからな」

 

「おお、こんなにたくさんもらっても良いのか?報酬までもらえるなんて、やり甲斐があるな!」

 

 ワオンは興奮しているようだった。カイトは最初は遠慮がちだったが、ハンナがワオンとパオスに誘われ、徐々に顔つきが変わっていくのが分かった。彼らは、まるでワオンに引きずられるように、ギルドへ向かっていった。カイトの表情には、これまでの諦めのような色が薄れ、微かな期待が宿っているように見えた。

 

 それから俺たちはルルソン村を出発してミシェランに向かった。王都での褒賞は、俺たちの人生を大きく変えることになるだろう。新たな仲間たちとの生活、そして貴族としての責任。俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだ。


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