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エイドについて マッド視点

マッド視点


 マーカスさんの話を聞く前に、司書見習いのエイドについては、俺が既に鑑定を済ませていた。その結果は、父さんにも母さんにも報告済みだ。

 

エイド

* 身分: 平民

* 年齢: 19歳

* 役職: 見習い司書代理

* 家族: 父 ピエール・グラン(伯爵代理)、母 ルナエラ(平民)

* スキル: 威嚇(高レベル)

* 犯罪歴(書面上): 無し

* 犯罪歴(実際): 暴行、窃盗、監禁、恐喝、殺人

* 評価: 危険人物、要注意人物

 

 俺はエイドの恐ろしい鑑定結果を知っていたからこそ、図書館で彼が平民の冒険者たちと揉めている時、口を挟まなかった。リオやキャロルにも、絶対に干渉しないように言い聞かせていたんだ。

 

 父さんも母さんも、俺の判断は正しかったと認めてくれた。もしあの場で俺が間に入っていたら、キャロルが間違いなく危険な目に遭っていただろう。冒険者二人については、事前に自警団に護衛を頼んでおいたのが正解だったと、改めて身が引き締まる思いがした。

 

 こうなると、父親のピエールもかなり怪しい。俺はグラン伯爵夫妻がもしかしたらピエールに殺されたのかもしれないと疑っているし、マーカスさんも同じように感じているんだろう。父さんは夜会で遠くから鑑定するつもりだと言っていたから、何か分かったら教えてくれるはずだ。

 

 エイドの威嚇スキルは、幼い頃から持っていたのだろう。なぜなら、そのレベルが高いからだ。彼の威嚇は、相手に恐怖を与えるだけでなく、身体の動きを完全に止めることもできるらしい。だが、相手の精神的な強さによっては、この前のように弾かれてよろめくこともあるようだ。

 

 あの冒険者の彼は、恋人であるレイナを守るために、エイドの威嚇が放つ恐怖を吹き飛ばしたんだと思う。彼自身はまだ駆け出しの冒険者で、それほど強くはない。だけど、恋人を守ろうとする純粋な想いは、エイドの強大な威嚇スキルよりもずっと強かったのだろう。その事実が、俺の心に深く響いた。


 母さんにそう伝えると、母さんの瞳は感動でキラキラと輝いた。「なんて健気な若者たちなの!」と、まるで自分のことのように心を震わせている。そして、「二人がルルソン村で安心して働けるように、私が何とか取り計らってみるわ!」と、もう止まらないといった様子で意気込んだ。その表情は、まるで新しい事業を立ち上げるかのように、やる気と情熱に満ち溢れていた。

 

 父さんは、そんな母さんの言葉に待ったを掛け、俺に冒険者二人の詳しい情報を聞いてきた。

 

レイク

* 年齢: 17歳

* 身分: 平民

* スキル: 剣術、解体

* 犯罪歴: なし

* 特徴: 思いやりがあり、信仰心が強い

 

レイナ

* 年齢: 17歳

* 身分: 平民

* スキル: 家庭菜園

* 犯罪歴: なし

* 特徴: 真面目で、家族思い

 

 俺の話を聞いて、父さんも納得したようだ。父さんが頷くや否や、母さんは「待っててね、二人とも!」とでも言うかのように、すぐさま部屋を飛び出していった。その軽やかな足取りと、ほとばしる情熱を見ていると、本当に頼もしい。

 

 母さんが部屋を出た後、父さんが俺に穏やかな口調で話し始めた。

 

「ミランは本当に明るくなったよ。毎日がとても楽しそうだ。マッドたちのおかげだな。エイドについては、あまりにも危険すぎる。俺の鑑定後、父であるミシェラン侯爵に話をさせてもらうよ。このままだと、冒険者に死人が出るからね。それと、マッドたちには申し訳ないが、今後も必ず馬車を使うようにしてくれよ。キャロルはあまりにも用心しなさすぎるし、自分の価値を分かっていないようだからね」

 

「ありがとう、父さん。俺もリオもキャロルからは目を離さないようにしていたけど、馬車を使えるのであればありがたいよ。昨日は図書館でノーステリア人の王族について調べていたし、キャロルも少しは自覚し始めたと思うよ」

 

「そうか。キャロルは大事な長男の嫁だし、俺とミランの可愛い娘でもあるからな、マッドがしっかり守ってやるんだぞ」

 

 父さんのその言葉に、俺は少し照れくさかった。でも、同時に胸の奥が熱くなるのを感じた。父さんの温かい言葉が、じんわりと心に染み渡っていく。悪い気は全くしなかった。

 

 キャロルは、俺にとって何よりも大事な嫁だ。あの、小さくて、危なっかしいけれど、いつも真っ直ぐな瞳を持つ彼女を、俺がこの手で、絶対に守ってみせる。そう強く誓った。

 

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