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真夜中の襲撃者 リオ視点

リオ視点


 僕たちのルルソン村での暮らしは、日を追うごとに安定してきている。

 

「地下を作ってみたいんだ!」とマッドが言い出した時は驚いたけど、建築に関しては全面的にマッドに任せてしまっている。でも、マッドは毎日楽しそうに作業をしているから、無理はしていないと思うんだ。建築スキルがあるから、きっとイメージ通りに作りたいんだろうと思う。

 

 僕は畑を作り、既に小さな芽が顔を出しているし、キャロルの植えた薬草も順調に育っている。キャロルの土魔法と生活魔法のおかげで、通常より育ちは早いし、きっと出来も良いだろうから今から収穫が楽しみだ。農業スキルも磨いて、美味しい作物をたくさん作りたいな。

 

 家は増築中で、完成までにはもう少し時間が掛かりそうだった。だから、周囲への警戒は怠れない。全員が毎日気を張る生活が続いている中で、スノウが新たに「危険察知」と「状態異常攻撃」というスキルを身につけてくれた。非常にありがたいけど、いつも僕らのために頑張ってくれているのを見ると、無理させている気もして申し訳ないとも思う。

 

 そんな生活を過ごしていた、ある夜のことだ。

 僕の腕に巻きついて寝ていたスノウが突然、びくっと動き出して、僕の頭に直接話しかけてきたんだ。

 

「リオ、悪い奴らが近くにいて、リオたち3人を狙っているよ。マッドに知らせて!」

 

 スノウの声に、僕は直ぐに飛び起きてマッドに知らせた。同時に、近くでうろちょろしていたクロにも「無闇に攻撃を仕掛けないでくれ!」と叫んだ。

 

 キャロルはすでに目を覚ましていて、ピッピを肩に乗せて僕たちの側にいる。ピッピも何かを感じ取っているみたいだ。

 

 マッドはすぐさまラピスに偵察に行かせた後、考え込む仕草をしている。おそらく地図スキルで周囲の状況を確認しているんだろう。敵対する者は黄色やオレンジ、赤色で地図上に表示されると以前言っていたから、きっとそれを見ているんだ。

 

 マッドが僕たちに状況を説明してくれた。

「オレンジが2名に、黄色が3名。そして、少し離れた所に赤が1名いる。熟睡していたから気づかなかった。スノウには感謝しかないよ。敵は赤を除けば強くはない。俺とリオで対処できるだろう。だが、赤は弓使いで厄介だ」

 

「マッドって、地図で武器まで分かるの?地図スキルってすごいわね!」

 

 キャロルが感心しながら言うと、マッドは首を振って否定した。

 

「いや、地図を見ただけでは分からない。ラピスが俺に映像を送って教えてくれたんだ」

 

「僕は地図スキルよりそっちの方がすごいと思うよ!ラピスって、実は聖獣なんじゃないの!?」

 

 僕が言うと、マッドは再び首を振ったけど、なぜか否定はしなかった。やっぱりそうなんじゃないかな?

 

 僕たちが少し呑気でいられるのは、事前にピッピの強力な結界を土地に張り巡らせているからだ。侵入はされないと分かっているから、落ち着いて対処できる。

 

 マッドは今後のことも考えて、襲撃者は捕えたいはずだから、その方法を考えているんだろう。彼はいつも先を見据えているから頼りになる。

 

 キャロルはピッピとここにいてくれれば問題ないが、僕とマッドが外に出れば、心配で間違いなくついてくるだろう。きっとそこを懸念しているんだろうな。

 

「リオ、クロに俺たちの状況をカルロさんに知らせるようにお願いできるか?」

 

 マッドが尋ねた。

 

「できるかは分からないけど、クロに話してみるよ」

 

 僕はクロを呼ぶと、直ぐに飛んできた。

 

「クロ!悪いんだけど、カルロさんのところに急ぎの手紙を届けてくれないか!?」

 

 僕がそう頼むと、クロは「キキキーッ!」と、まるで「はぁ!?冗談でしょ!?」とでも言うように叫び、その場でぶんぶん暴れ出した。羽根をバタつかせて、どう見ても「絶対に行かない!」と全身で訴えている。そうだよな、クロは畑が命だもんな。こんな敵が近くにいる状況で、大事な畑の番を離れるわけがない。僕の畑に何かあったらどうするんだ!って顔でこっちを見てくる。

 

「クロ、これあげるから、お願いね?」

 

 そう言ってキャロルがポケットからキラキラ光る、小指の爪ほどの小さな石を取り出してクロに見せた。それは確か、僕らがミシェランで拾った、光るだけのただの石だ。

 

 クロは、その光る石を見た途端に、さっきまでの激しい抵抗が嘘のようにピタッと止まった。そして、その石を凝視すると、「キッキッ!」と興奮したような鳴き声を上げ、キャロルから石を受け取ると、一目散に夜空へと飛んで行った。

 

……現金だな、クロ。でも、キャロル、ナイス!やっぱりクロの扱いはキャロルが一番だな。僕なんか、いつも振り回されっぱなしなのに。

 

「キャロル、いいか、俺とリオは奴らを捕まえてくるから、ピッピとここに残って小屋を守ってくれ。頼んだよ」

 

 マッドが懇願するように、だけどリーダーらしく指示を出すと、キャロルは静かに頷いた。

 

「分かったわ。でも、無茶は絶対しないでね」

 

 最後にピッピにキャロルのことを頼んで、僕とマッドは外に出た。

 奴らは結界魔法によって僕たちの土地には侵入できずに、苛立っているようだった。

 

 僕とマッドは、結界の外で苛立っている人攫いを見据えた。ターゲットは「オレンジ」2名。少し離れたところにいる「赤」の弓使いからは距離がある。マッドは素早く動き、弓の射程外からオレンジの男に接近した。まるで風のように音もなく、瞬く間に男の背後に回り込み、一撃で気絶させたのだ。流れるような動きに、思わず「さすが!」と声が出そうになる。

 

 倒れた男を縛り上げるのは僕の役目だ。僕は手際よく縄で男を拘束し、地面に転がした。その間にマッドはもう一人のオレンジの男へと向かい、同じように素早い一撃で倒してしまう。僕が二人目を縛り終える頃には、奥から「黄色」の3人が焦った様子で駆け寄ってきた。

 

「リオ、合流だ!」

 

 マッドの短い声に、僕も迷わず駆け出す。三人まとめて相手をするのは少し骨が折れるかもしれないが、マッドと一緒なら問題ない。僕たちは連携し、素早い動きで相手を翻弄する。僕が相手の注意を引きつけ、マッドが隙を突いて次々と気絶させていった。以前よりも自分の動きが格段に良くなっているのが分かる。きっとミシェランでの経験が、僕たちの身体能力をさらに引き上げてくれたんだろう。

 

 倒した奴らを縛りあげていると、頭上を一本の矢が「ヒュッ」と勢いよく飛んでいった。今は気にせず作業に集中する。すると間もなく、もう一本、さらにもう一本と矢が続いていく。

 

 もう考えてなくても分かる。小屋に残っているはずのキャロルが、僕らを心配して矢を射っているんだ。本当に心配性なんだから……。

 

 マッドに赤の状態を聞くと、教えてくれた。

 

「もう赤は動けない。死んではいないが、足と腕を射られている上に痺れ状態のようだ」

 

 痺れ状態?キャロルの矢にそんな効果はなかったはずだけど……。

 

 門番や自警団の人達と一緒にカルロさんが駆けつけてくれた。

 

 どうやらクロはカルロさんに手紙を渡せたようだ。ちゃんと任務を遂行してくれたんだな。門番と自警団の人達は襲撃者6人を捕らえて帰って行ったが、カルロさんだけは残り、僕たちを心配して小屋までついてきてくれた。

 

 小屋に着くと、キャロルが僕たちに駆け寄ってきた。

 

「2人とも無事で良かった……!私は言われた通り、小屋からは離れてないよ!屋根に登って弓で射っただけだよ……だって心配だったし、見るだけならいいと思って。でもね、見たらマッドとリオを狙っているのが見えて……」

 

 マッドがキャロルの頭を、いつものように優しく撫でている。

 

「キャロル、俺もリオも怪我をしていないから落ち着いて。もう大丈夫だ。何も心配ないよ」

 

 マッドはそう言ってキャロルを落ち着かせていた。

 

 カルロさんが僕たちに話しかけてきた。

 

「3人とも無事で安心したよ。今日は疲れただろうからもう一眠りするといい。10時頃に尋ねさせてもらうから、その時に詳細を聞かせてくれ」

 

 カルロさんは僕たちにそう言って帰って行った。

 

 赤く表示されていた奴が痺れていたのは、やっぱりスノウがキャロルの矢に何やら施したようだ。あの小さな体に、そんな知恵と力があるなんて、本当に驚きだ。

 

 スノウもクロも、本当にお疲れ様。僕らの大事な仲間たちに、心から感謝だ。


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