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彼女との出会い リオ視点

リオ視点


 翌朝、僕たちはマルクさんの店に呼ばれて、商品の契約について話し合いの真っ最中だった。

 

「正直、君たちの作品には驚いたよ。スキル持ちとはいえ、若いのにあれほどとはね。ぜひ今後も契約を続けてほしい。売り上げの7割を支払わせてもらうが、どうだろう?」

 

 マルクさんの言葉に、僕の横にいたマッドがすかさず「通常は何割くらいなんですか?」と尋ねた。マルクさんは、人件費や包装、陳列費用がかかるからと、通常は5割だと教えてくれた。

 

 するとマッドは「でしたら5割で十分です。リオもキャロルも、それでいいよね?」と、有無を言わさぬ勢いで僕とキャロルに視線を送った。僕もキャロルも、彼の気迫に押されるように頷いた。

 

「ただ、俺たちはルルソン村に住んでいるので、定期的な納品は難しいかもしれません。不定期になってしまいますが、大丈夫でしょうか?」

 

 マッドが少し申し訳なさそうに問いかける。

 

「ああ、構わないよ。ただ、契約期間中は他の店に持って行くのだけは止めてもらえないだろうか?」

 

 マルクさんの言葉に、僕はふと疑問に思った。

 

「自分たちで売るのも駄目ですか?」

 

「全く同じ物や、類似した物に関しては売らないでほしい」

 

「売るのではなく、自分たちで使用したり、友人にプレゼントするのはどうなりますか?」

 

 だって、せっかく作ったものを誰にもあげちゃいけないなんて、それは寂しいじゃないか。

 

 しかし、マルクさんはきっぱりと「それも止めてほしい」と、僕のささやかな抵抗を一蹴した。うーん、手厳しい。

 

「契約期間はどのくらいでしょうか?」

 

「まずは半年で、その後は双方に問題がなければ1年ごとの更新でお願いしたい」

 

「わかりました。僕たちが作ったことは公にしてほしくないのですが、可能でしょうか?」

 

 僕がそう問いかけると、マルクさんは快く「君たちがそう望むのであれば、そのようにさせてもらうよ」と頷いてくれた。

 

 結局、僕たちは商売に関する法律を十分に理解できていないため、今回はとりあえず4つの品目に関してのみ契約することになった。売上があった場合、7割が僕たちの共有口座に入金される。

 

 今回の話し合いで、改めてもっと勉強するべきだと痛感した。商売って奥が深いなぁ。

 

 話し合いが終わり、僕たちは早速お土産を買いに雑貨店や洋菓子店に立ち寄った。そして最後の目的地は、古本屋と本屋だ。早速、法律や商売に関する本を中心に10冊ほど購入した。

 

「ねえ、私は薬草の本と土魔法の本が欲しいんだけど、買ってもいいかな?」キャロルが目を輝かせながら尋ねる。

 

「俺も上級魔法の本が欲しいな」マッドも負けじと、まるで遠足に来た子供のようだ。

 

 二人は本当に本が好きだなぁ。僕は二人が買った本を後で読ませてもらえばいいから、そこまで必要ないと思っていた。

 

 そう思った矢先、ふと目に入ったのは釣りの本。あ、これ、あの魚が釣れるようになるやつかな?なんて考えているうちに、気づけば5冊の釣りの本を抱えていた。

 

 本屋を出た後、僕は少し一人で街を巡りたかったので、二人と別れた。

 

「たまには一人もいいよね」


 なんて呟くと、僕の腕に絡まっているスノウが、まるで同意するかのように首を傾げた気がした。うんうん、君もそう思うかい?

 

 のんびり歩いていると、少し離れた場所に護衛を控えさせている女の子が雑貨屋の中を外からじっと眺めているのが目に入った。何をそんなに真剣に見ているのか興味が湧いて、僕もつられて彼女の目線を追ってみた。

 

「本当の卵のようだわ、可愛い」と、彼女が小さく、けれど嬉しそうに呟くのが聞こえた。

 

 彼女が見ていたのは、どうやら卵の形をした音楽機らしい。『貴方に合った曲が入ってるよ!、一個7000リラ 二個なら1万リラ』と書かれた札が見えた。なんだか妙に僕までその音楽機が欲しくなってしまった。こういう衝動買いもたまには良いよね。

 

「君は買うのかい?」思わず彼女に話しかけてしまい、彼女は驚いた顔で僕を見た。

 

「本当の卵みたいで可愛いと思って見ていたんです。大きさも色もいろいろあってとても可愛い。それに私に合う曲ってどんなのだろうかと想像していたら、妙に興味が湧いてしまいまして、悩んでいたのです」

 

 彼女は真っ赤な顔をして、照れながら答えてくれた。その可愛らしい反応に、僕はおもわず笑顔になった。

 

「良かったら一緒に買わない?二個買った方が安くなるみたいだし」

 

「よろしいんですか?」

 

 とても裕福そうな身なりなのに、何を迷っていたんだろうか。もしかして、お小遣いが足りないとか?いや、まさかね。

 

 店に一緒に入ると、彼女は卵の近くまで行き真剣な眼差しで見定めている。なんと言うかその仕草が可愛らしく思えた。彼女は一見すると控えめで上品な落ち着いた雰囲気だが、今は幼子のような表情だ。

 

 彼女が悩みに悩んで選んだのは外から眺めていた小さな薄い水色がかった卵だった。僕はその隣に並んでいた彼女の瞳と同じ色の茶色の卵に決めた。

 

 1万リラを支払うと、彼女は5000リラをポケットから、まるで宝石のように大切そうに出して僕に渡してくれた。

 

「ありがとう、素敵な買い物ができて嬉しいです」

 

「こちらこそ、安く買えたし僕も嬉しいよ。お互いの曲が何か確認してみない?」

 

「ええ、そうですね」

 

 僕が先に自分の音楽機のネジを巻くと、朝に聴きたくなるような爽やかな曲が流れてきた。

 

「まあ、素敵な曲だわ。良い一日が始まりそうな心地の良い曲ですね」

 

「ああ、再び眠りについてしまいそうな良い曲だ」

 

「まあ、そう言われれば、そうかもしれないですわね」

 

 彼女は明るく笑った。

 

「君のは、どう?」

 

 彼女がネジを回すと音楽機からは海の波の音?が流れてきた。

 

「これは海の波の音でしょうか?」

 

「僕は海には行ったことがないんだ。だからよく分からない。でも落ち着く音だね」

 

「私も海に行ったことはありません。でも妙に落ち着きます。大切にしますね」

 

「僕もだよ」

 

 僕たちはそう言って店の前で別れた。短い時間だったけど、なんだか心が温かくなるような出会いだった。

 

 不思議と、彼女とはまたどこかで会える気がした。


 

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