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解体クエスト

 夕方4時から始まった解体作業は、想像以上にハードだった。これは正直、非力な私にはかなりきつい仕事だ。大きな魔物の解体にはかなりの力が必要で、背の低い私では吊り下げられた魔物を下ろすことも、届かない部分に手を伸ばすこともできない。そんなことは最初から分かっていたので、私は小型の魔物担当だ。

 

 解体作業自体は問題なくこなせるはずなので、目の前の小型魔物に集中して頑張った。解体作業の職員の中には女性も一人いたが、彼女は全く問題なく大型魔物を担当している。実にかっこいい女性だ。

 

 解体作業をしていると、魔物について学ぶことが非常に多いと気づかされた。彼らの弱点が手に取るように分かる。例えば、極端に皮膚が厚くて切りにくい場所は、同時に弱点でもあったりするのだ。命を守るためにきちんと工夫されているのだと、改めて生命のすごさを感じた。

 

 慣れない作業に集中していると、ふいに隣に立つマッドが、私が手を伸ばしても届かない位置にある小型魔物の留め具を、さりげなく緩めて下に降ろしてくれた。 目が合うと、彼はにこっと笑って頷いてくれる。何も言わないけれど、私の状況を理解して手助けしてくれる優しさに、心が温かくなった。彼に感謝しながら、私は再び解体作業に集中した。

 

 順番に休憩に入り、賄い料理が振る舞われた。この日はカニの魔物を煮込んだもので、とても美味しかった。すぐに私は魔物の種類と調理方法を尋ね、メモを取った。

 

 私たちの休憩は、3人同時に取れるように配慮してくれたようで、3人で一緒に食事をした。食欲旺盛なリオは、自分の分をあっという間に平らげると、キラキラした目でマッドの皿を覗き込んだ。

 

「なぁ、マッド、そのカニの足、もう食べないのか?」

 

 リオの目が訴えかけているのに気づいたマッドは、苦笑いしながらも「ほらよ」と自分の皿から半分ほど分けてあげていた。そんな二人を見ていると、なんだかホッとする。職員さんも皆、和やかな雰囲気で食事をしていた。

 

「キャロル、大丈夫か?疲れたならもう休んでもいいぞ、俺が親方に言っておくよ」

 

「マッドはキャロルに甘すぎると僕は思うよ。キャロルなら大丈夫だよ」

 

「うん、大丈夫。少し雰囲気に押されただけだから、今はもう平気」

 

 リオが言うように、マッドは私にとても甘い。だからいつも、つい余計に甘えてしまう。私もそろそろ自立しないといけないな、と思った。

 

「キャロル、変なこと考えなくていいからね」

 

 リオは勘がとてもいいのか、私の心の声をよく聞き取る。その後もマッドが心配そうに私を見ていた。


 解体作業がようやく終わり、クタクタになり部屋に戻ると、「クリーン」と一言呟き身体を綺麗にすると、そのままベッドに入り私は寝てしまった。

 

 男たち3人はお茶を飲みながら2時間程解体について語り合ったらしい。しかし、私が眠りについた後、マッドがそっと私のベッドに近づき、やさしく頭を撫でてくれた。「よく頑張ったな」と、聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟く彼の優しさに、夢うつつの中で心が安らいだ。

 

 翌日、気になっていたことをタイゾウに聞いてみた。

 

「解体作業をしていた女性は、どうして普通に大型魔物の解体ができるの?」

 

「身体強化だよ」

 

 なるほど……。


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