魔獣討伐結果
魔法学院掲示板
二年生の部
マッドチーム 8名 難度5 1000点
オルドチーム 6名 難度2 575点
カーサチーム 9人 難度3 288点
グンドチーム 6名 難度2 437点
ヴァンチーム 9名 難度2 499点
学院の生徒だけではなく教師達もこの結果には驚いていた。
いまだかつて難度5をまともにこなした者はいなかった。5割の採集と幾つかの討伐をこなして無傷で全員が帰還した事は奇跡としか言えなかったのだ。
だが学院長だけはマッド達の本当の成果を知っている。
本当は全ての採集をした事も狩れる筈もない魔獣を多数倒した事も全て把握している。あまりの凄さに陛下と相談をして過小に評価をする事に決めたのだった。
ドラゴンだけは拝めなかったとマッド達が言っていたが幻の木や卵まで持ち帰ってきたのだ。こんな事を世間に公表すべきでは無いと陛下の意見に賛同したのだった。
マッド達の持ち帰ってきた採集物の半分は王家に献上する事になり残りについては魔法学院の金庫に厳重に保管された。
これにより密かにマッド達には王家から何かしらの褒美が与えられる事に決まった。そして魔法学院からも貴重な採集をした事とこれまでの記録を更新した事への褒美を出す事が決まった。そして教師達と相談して決めたのは魔法学院の授業料の全額免除だった。学院長はいささか申し訳なさは感じたがあまりに凄い物では勘づかれてしまう恐れもあったので、あえてその程度にしたのだ。
学院の生徒たちは掲示板を見ると大歓声を上げた。
「おお――――やってくれたな、さすがだぜ」
「歴史を変えたな」
「さすが、マッド様とリオ様だ。俺は本当に彼らに仕えたいよ――」
「あの8人は本当に凄いな。顔良し家柄良し、ううーー羨まし過ぎる……」
「来年の魔獣討伐は何をしてくれるのかしら?今から楽しみだわ」
「俺、今期で卒業だから彼らの勇姿を拝めない、もの凄く残念だ」
「魔法学院の輝く星だよな」
「友人になりて~」
「実は凄く強かったってことだよな」
「天はどんだけ彼らに与えたんだよ」
オルドとアヤナが掲示板を眺めながら二人で会話をしていた。
「強いとはオルドから聞いてはいたけど物凄く強いのね。難度5をまともにこなした生徒は初めて何でしょう」
「僕も正直言って此処まで強いとは思っていなかったよ。なんて言うか別次元だよな」
「そうね、でも難度5がどんなところだったのか、私は聞いて見たいわ」
「そうだな僕たちでは絶対に行けないからな」
「来年、難度5に挑戦する生徒が出るんじゃないかしら」
「おそらく出るだろうな」
「ねえ、私たちも行ってみる?」
「アヤナ、絶対にそんなこと皆んなに言うなよ」
「冗談に決まってるじゃない」
掲示板を遠くから眺めながらジルとレティは今後について話し合っていた。
「次は試験に備えて勉強させないといけませんね」
レティが言うとジルも頷いた。
「訓練ばかりで全く試験勉強をさせていなかったからな。今日から徹夜だ」
ジルは冗談ではなく本気で言っていた。
「ええ、私もそのつもりでいます」
レティも本気だ。
ポンドンとドナは魔獣討伐から戻った翌日から徹夜で勉強をする羽目になり魔獣討伐以上に疲弊したのは言うまでもなかった。
私たちは、卵から得た新しいスキルについて、マッドとリオと三人で教室で話し合っていた。
「マッドの心眼は、鑑定とは違うの?」
「んー、心眼は鑑定スキルのさらに奥深く、より正確に真実が見えるような感覚かな。ただ、情報量が多すぎて混乱することもあるんだ。鑑定スキル自体は別に持っているんだけど、心眼を使うとそれも同時に見えるから、まだこの関係性がはっきりとは分からないんだ」
マッドは眉間に皺を寄せながら答えた。その複雑な情報処理能力は、私には想像もつかない領域だ。
「リオの契約は、陛下とは違うの?」
「僕はまだよく分からないや。でも、頑張ってレベル上げをするよ!」
リオは明るく答えた。彼の契約スキルがこれからどうなるのか、私もとても楽しみだった。
「陛下のレベルはかなり高いから、まずはそこを目指すと良いと思うよ」
マッドがリオに助言すると、リオは「ありがとう、マッド。僕も、契約スキルで何ができるようになるのか、すごく楽しみなんだ! 色々試してみるよ!」と言って頷いた。
「ジルが得た防御スキルは盾との相性抜群ね」
私はマッドに言った。
「ジルの防御スキルがあれば、俺はもっと戦いやすくなるだろうな。防御スキルのレベルが上がれば、できることも変化するかもしれないし、すごく楽しみだよ」
「レベルが上がれば、物理的な防御以外もできるようになるってこと?」
私の素朴な疑問に、マッドが答えた。
「今は物理的な攻撃に対する防御が主だけど、精神的な関与に対する防御もできるようになるかもしれない」
「あっ、それがあれば支配されないのよね!?」
「相手のスキルのレベルにもよるが、関与されにくくはなるだろうな。だからジルには、上位スキルのレベルまでは上げてほしいと思っている」
私はマッドの言う上位スキルがよく分からなかった。するとリオが私の様子を見て話し始めた。
「僕も一年前くらいにマッドから聞いたんだ。スキルのレベルにはどうやら限界があるらしいよ。ほとんどは20くらいで、高くても30くらいらしい。だから30を超えたスキルは、『できること』が加算されていくみたいなんだ。僕やキャロルの作成した物に付与がつくのも、そういうことらしいよ」
リオの言葉に、私はさらに驚いた。私のほとんどのスキルは30を軽く超えている。
「リオに話した時はまだはっきりとは分からなかったんだが、鑑定レベルが上がるにつれて、スキルの上限が見えるようになったんだ」
マッドは説明を続けた。
「私自身にも見えないのに、マッドには見えているってこと?」
「ああ、見えるよ。例えばキャロルの持つ薬膳料理は52だろう?」
「ええ、そうよ」
「俺には52/300と見える」
「妹よ、ものすごい健康食ができそうだな!」
リオが茶化すように言うと、私は決意を新たにした。
「すごい! 私、これからも頑張って作るわね。皆で長生きしましょうね!」
「ああ、頼んだよ、キャロル」
「期待してるよ、我が妹よ」
二人に言われて、私は絶対に300まで上げたいと真剣に思った。ちなみに、私たちが授かった新しいスキル8つの上限は300となっているらしい。
「なあ、マッド、マリアの遠見はルートの遠見と同じようなものなのか?」
リオが少し心配そうにマッドに聞いた。ルートのスキルに似ているという事実に、彼も不安を感じているのだろう。
「おそらくそうだと思う。ただ、マリアが見たいと思うものがルートとは明らかに違うだろうから、成長の仕方がどうなるのか全く分からないな」
「でも、レティの情報スキルはマリアの役に立ちそうね」
私が言うと、マッドは頷いて言った。
「キャロルの言う通りだな。遠見で見れるのは一瞬だろうから、マリアが見た物をレティが多くの情報から的確に分析して判断してくれるだろう。俺は素晴らしいコンビだと感心したよ」
「ボンドンも、もう昔のボンドンではないよね。僕より強靭で強いぐらいだ。それに最近は背もすごく伸びて逞しくなってきた」
リオがボンドンの成長を喜ぶ。その言葉に、マッドも同意した。
「成長期でもあるからな。でも性格は昔と全く変わっていないよ」
「私もマッドと同じ意見よ。ボンドンは昔と変わらず誰よりも優しいわ」
「そうだね、その辺は全く変わってないな」
リオが優しい表情で笑った。
「私の治療って、回復とは違うの?」
私はマッドに聞いてみた。
「回復は主に魔力でやられた傷を治すのに特化しているらしい。治療は病気や精神的な病にも効果がある。でも寿命の場合はどうにもできないがな」
「それなら、治療スキルは既にある薬膳料理や薬草学との相性はとても良いわよね」
私の言葉に、マッドとリオが頷いた。
「ああ、その通りだな。キャロルはまさに医療のエキスパートだ!」
「ドナの幻影は?」
「レアなスキルだと思う。キャロルが空中飛行を体験したように、ありもしない光景を見せたりできるはずだ。 ドナがこれからどう使うのか、すごく興味があるよ」
「ええ、まさにその通りよ。マリアも空中散歩できたってすごく喜んでいたわ」
「そうか!マリアが楽しそうに言ってたのは幻影スキルだったんだな。確かにドナらしい使い方だ」
リオは話しながら笑っていた。
こうやって三人でスキルの話をしていたら、マッドやリオと出会った頃のことを思い出した。森で三人で過ごした日々。懐かしくて、大切な私たちの思い出。
卵から得たスキル
* マッド:心眼
* リオ:契約
* キャロル:治療
* マリア:遠見
* ジル:防御
* ボンドン:強靭
* ドナ:幻影
* レティ:情報




