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オルドの悩み オルド視点

オルド視点


 僕は、名門ジオニール侯爵家の次男として、15歳の春、念願の魔法学院に入学した。魔法、剣術、そして貴族としての社交。すべてを学び尽くせるこの場所で、僕は自分の人生を切り開くはずだった。

 

 だが、学院で最も注目を集めているのは、僕ではない。間違いなく、マッドたち八人の一年生だ。彼らの社交におけるマナーは、熟練の高位貴族をも思わせるほどに洗練され、教師陣もその完璧な振る舞いに舌を巻いている。特にマリアに関しては、国の重要な外交の場でも完璧にこなせるだろうとまで噂されるほどだ。

 

 商売の授業に関しても同じだ。授業を取っていない僕ですら、彼らが既に店を持ち、驚くほどの利益を上げていることを知っている。他の生徒がまだ計画書すら書けていないのに、彼らはまるで遊ぶかのように商売を成功させている。その姿は、僕たちがいる世界とはまるで別の次元にいるようだった。

 

 彼らは休み時間に中庭で本を読んでいるだけでも、なぜか絵になる。彼らが放つ圧倒的な存在感は、僕がこれまで積み重ねてきた努力を、まるで小さな砂山のように感じさせた。

 

 僕の今の悩みは、魔獣討伐の授業のメンバーだ。成績に大きく響くこの授業のため、慎重に選んだはずだった。だが、僕は彼らの本性を見誤っていたようだ。

 

 長期休暇が迫る中、僕は幼馴染のアヤナと、ブレイブス港街への旅行を計画していた。

 

「オルド、長期休暇にブレイブス港街に行くのであれば、私も帰省するので一緒に行きましょう」

 

 アヤナの提案に、僕たちのグループの四人も「暇だからついていく」と軽々しく言った。

 

 だが旅費の話になった時、彼らの態度は一変した。

 

「オルドは高位貴族なんだろ?そんな費用、お前ならはした金だろう」

 

「そうよ、ケチなこと言わないで全部出してくれればいいじゃない」

 

「僕はしがない男爵だからな、オルド頼むよ」

 

「自分で出すなら行くわけないだろう」

 

 彼らの言葉に、僕は唖然とした。僕は侯爵家の次男だが、学院では身分は関係ないはずだ。そもそも彼らに侯爵家だと話したことも、態度に出したこともない。なのに、彼らは僕を金蔓としか見ていなかったのだ。

 

 僕の心は凍りついた。結局、ブレイブス港街への旅は断念せざるを得なかった。このグループで魔獣討伐の授業を乗り切れる自信も、完全に失ってしまった。

 

 僕はやはり貴族学校へ行くべきだったのだろうかと真剣に悩んだほどだ。

 

 僕はすっかり意気消沈して、アヤナにこう言った。

 

「今からだと、新しいグループなんて見つからないだろうか?」

 

「私は二人ほど心当たりがあるわ」

 

 アヤナがそう言ってくれた直後だった。

 

 控えめな声に振り返ると、そこにいたのは、小柄な女子生徒だった。

 

「私はクミと言います。魔力量は多くないですが、少しだけなら回復魔法が使えます」

 

 彼女の隣にいた男子生徒が続いた。

 

「僕はレイ。クミとは幼馴染なんだ。僕自身はあまり魔力がないんだけど、偵察や罠を仕掛けるのが得意だ。それと、もう一人、僕たちのグループに入れて欲しい奴がいるんだ」

 

 こうして、僕たちのグループは七人になった。彼らの言葉に、僕は不思議な安堵を覚えた。彼らは僕の身分など気にせず、ただ僕という個人を見てくれているように感じられた。

 

 そして、長期休暇の話になった時、クミが素晴らしい提案を僕たちにしてくれた。

 

「王都の郊外に我が家の別荘があるので、よかったらどうですか?」

 

 クミの提案を受けて、レイが言った。

 

「別荘へ行く途中の森でキャンプするのも良くないか?訓練にもなるだろうし、お金を出し合って護衛を雇えば危険も少ないはずだ」

 

 お金を出し合うという、僕にとっては当たり前でなくなったその行為に、僕は胸が熱くなった。僕にも、ようやく本物の仲間ができたと思った。

 

 僕には、彼ら八人のような圧倒的な力はない。それでも、自分の未来のために、今できることを少しずつ、着実にやっていこうと、希望を胸に、改めて決意した。


 最初にグループを組んでいた者たちは、僕たち二人が抜けた後も四人のままだった。先生方はグループ作りには一切関わらないし、彼らがどうするつもりなのか、僕には分からない。


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