精霊の森に迷い込みました
魔女アイリスの毎日は冒険である
「モロ…あの、本屋はどこでしょうか」
「…さぁ」
魔女アイリス本日はちょっとばかし早起きし張り切って家を出たはずですが…何故か今は深い森の中。
「ここさ、俺もわかんねぇんだけど。お前いったい何をどうしたら、こんな森の中に迷い込むことになるんだよ」
呆れ顔の従魔にふるふると震え泣くリズ。
「わかんないよぉ。いつも通り歩いてただけだもん」
それもそうだと考えるモロだが…
「まじでここどこだ?」
リズはともかくモロまで分からない場所となるとこれは大問題である。深い森の中といえど嫌な感じはほんとに無く、どちらかと言うと神聖な空気が漂っているように思える。ところどころ木漏れ日が漏れ光る森の中は息を飲むほど幻想的だ。
「モロ、なんかこことっても澄んでて綺麗だねぇ。涼しくて気持ちいい」
悠長なことを言っている主人にやれやれと、思うモロであったがそれは自分も同じだと溜息を着いた。従魔であるモロはその呼び名の通り『魔』に属するのだか、もうひとつの呼び名を言えば納得してもらえるだろう。この従魔モロは『聖魔』なのである。
そして聖魔であるモロが安らぎを感じる場所となるとだいぶ限られてくるのであった。
「あー、リズ。俺ここどこか分かったかも」
肩に座る従魔はビロンと項垂れて話す
「じいちゃんの森だ」
「モロのおじいちゃん?」
はて?と首をかしげるリズを横に項垂れたままのモロはブツブツと文句を言い始める
「ったく、あのじじぃ何考えてんだよ。勝手に空間繋げやがって。あーあー…はぁ…」
「モロのおじいちゃんの森ってことは…」
「あぁ、ここは『精霊の森』だよ」
そう『精霊の森』。ここは妖精や精霊そして聖魔にエルフそう言った者たちが住まう森の一つ。そして迷い込んだこの場所はモロの叔父が族長を務める『精霊の森シンフィア』である。
「…なんで?」
「知るか!」
さらに首をかしげるリズ。自分はいつも通り本屋へ行くためにの道を進んだはずなのに…しかも街まで一本道しか続かない迷いようがないあの道を。
そう言いながらも2人はただ歩いている。2人というよりは主にリズが。
「お前…よく分かりもしない場所を躊躇なく進めるよな」
「だって…何重にも幻想魔法がかけられてるから、魔法使っても逆に目が回りそうなんだもん」
それならいっそ行くとこまで行ってみるだけ…とのほほんと歩く主人に従魔はただ呆れ顔である。
「…まぁ、その内たどり着くだろ。じいさんの所だけどな。そしたら帰してくれるさ」
(どうせしょうもない話に付き合わされるだけだろう。それにじいさんの森だと分かった今危険を感じる必要はない。あのじいさんは実の孫よりもリズをこよなく愛しかわいがっているのだから。どうせ今回もただリズに会いたくて繋げただけだろう。)
「そっかぁ。モロのおじいちゃんに会うの久しぶりだな」
「……俺は会いたくねぇ」
魔女と従魔一匹。精霊の森に迷い込みました。
リズの外出はどんな時も大冒険。こんな感じの出来事が日常茶飯事なのでございます。
だからこそ本屋へ行く以外…ほぼ引きこもりになりまして。だって…外はある意味リズにとって安息の地とは言えませんから。