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不倫

作者: 豆苗4

この話は倫理観を火星に置いてきてしまっているので、そのような非倫理的な話が苦手な人はブラウザバックする事を推奨します。また、この話は大部分が作り話なのでくれぐれも真に受けないようにご注意下さい。


 不倫は正義である。この文章では不倫を積極的に肯定する事を目指す。


 我々はあるゲームをしているとしよう。そのゲームとは、自分の遺伝子のコピーをどれぐらい集団に広められるかというゲームである。ゲームの参加者は150人ほどである。ルールはその中で自由に過ごし、n年後に最も繁栄している遺伝子の勝ちというものだ。分かりやすく男女比は1:1とする。系は閉じられており、外的環境や近親相姦などその他諸々の細かい影響因子は無視できるものとする。


 このゲームにおける最も優れた戦略とは何だろうか。集団内に一夫一婦制を導入し各人が対称的なコロニーを作り上げること? そんなことは人類には到底無理だろう。裸のサルに毛が生えた程度の歯止めの効かない獣にそんな大層なことができる筈がない。まさしくユートピアに他ならない。おそらく無造作に自身の遺伝子をばら撒きつつ、他人の遺伝子の拡散を阻止する戦略が優れているだろう。一世代における自分の遺伝子のコピーの伝達の割合が1を上回れば上回るほど良く、他者のコピーの割合が0に近いほど良いというわけだ。とにかく他者の遺伝子伝搬割合よりもちょっとでも上回っていればそれで良いのだ。だから遺伝子ばら撒き戦略である「浮気・不倫」は非常に有効である。自分だけが浮気や不倫をしまくって遺伝子を方々にばら撒き、一方他者には絶対に拡散させないように振る舞う。もしこれが成功した暁には集団内のプールに自分の遺伝子が溢れかえることになる。他者の遺伝子を締め出し、自分と自分の子孫だけが甘い蜜を永遠に吸える。これがこのゲームにおける理想の勝ち方である。


 男性にフォーカスを当てた書き方をしたが、これは女性にも同様に当てはまる。遺伝子をばら撒く能力の高い男を捕まえることが最も有利に働くだろう。当世代においては若干の不利益を生じる。しかし、ばら撒き能力の高い男が他の女のところへと流出することを阻止する、またはうまく牽制することができれば、次世代以降において莫大な利益をもたらすことができる。ばらまき能力の高い子を生み出すことができれば、集団内における遺伝子の量を増やすことのできる機会を多く設けることができる。子が浮気や不倫を繰り返し遺伝子をうまく拡散させることに成功した場合、当然自分の遺伝子も半分組み込まれているため、自分の能力を超えて広くばら撒くことができる。しかもそれが次々世代、その次の世代とどんどんと伝搬されていくため、伝搬率で負けない限り遺伝子の寡占市場は永続的に続いていくだろう。


 拡散能力のある遺伝子の割合は世代を経るごとに複利的にじゃんじゃんと増えていくため、重要になってくるのは初代の遺伝子拡散率である。言い換えればどれぐらい浮気や不倫をする能力があるのか、1人から何人の子を成すことができるのかということである。低ければ次世代以降の競争に負けてしまう可能性がある。高すぎると今度は制御が効かず、自分の遺伝子の密度が薄まってしまう。完全に自分だけのものに制御できていれば、男の遺伝子と女の遺伝子が半々になって高い濃度を維持できる。しかし、男が一夫多妻制を採用し複数の女と関係を築いていた場合は、男の遺伝子ばっかり伝播してしまうことになる。次世代では複数の女の遺伝子が一緒に伝播することになるためそこで仁義なき戦争が繰り返されることになる。当世代の競争が次世代に持ち越されることになるのだ。可愛い可愛い子供を醜い闘争に巻き込みたく無かったら、当代で女を叩きのめすしかないのだ。男にバレると、男は当然自分の遺伝子のコピーである子供同士が争って数を減らすということは間違っても避けなければならないので当然仲介に入る。表立って対立することが出来なくなってしまった為に見えないところでの争いが勃発する。人目を気にしなくても良くなるので倫理的な視点が欠如していき、手段がどんどん冷徹に陰湿なものへとエスカレートしていく。第三者の目がないことが社会的な動物であるヒトのより動物的な面を強烈に刺激し、本能むき出しのまま争いに没頭していく。これはまさしく遺伝子の生死に関わる問題なので命懸けで争うことになる。


 このように男の戦略としては、遺伝子を可能な限り広範囲にばら撒くこと、そして遺伝的な多様性を維持しつつ子供を生き残らせることが重要になってくる。一方、女の戦略としては、ばらまき能力の高い男を捕まえること、そして男の自分以外の妻を牽制すること、可能ならば女と子ごと葬り去ることが重要になってくる。だから男の敵は明文化されておらず比較的のほほんとしているのに対して、女の敵は女と言われているのだ。悋気嫉妬は女の常とあるが、それは当然のことと言えるだろう。というよりもそうでなかった個体はもれなく全員死滅している。


 ゲームの話に戻ると、このゲームに勝つ為には自分が浮気・不倫を積極的に繰り返す必要がある。もし男なら誰彼構わず取っ替え引っ替えやった方が良い。女なら遺伝子を次世代以降に確実にばら撒いてくれるような性質を持っている男を選び、かつ、そのじゃじゃ馬でなんとか遺伝子をばら撒こうとする男をうまくいなすことも不可欠だ。自分以外に女を作ろうとしないように徹底的に監視し、もし外に作った場合は有害にならないように冷徹に叩き潰すクレバーさも持ち合わせておく必要がある。そして、他者の浮気・不倫は許すわけにはいかない。自身の遺伝子が重大な危機に見舞われるからだ。自分はまだ良いとしても目に入れても痛くないほど可愛いがっている子どもが、孫が、ひ孫が死に絶える可能性があるからだ。だから徹底的に叩きのめす必要がある。表立って叩くと集団内で不遜な態度だと逆に叩かれるかもしれないので、目立たないようにひっそりとしかし苛烈に非難する必要がある。浮気・不倫は絶対に悪だと。正義は我らにあり。浮気や不倫する奴らは人間のクズで二度と日の目を見れないぐらいまで懲らしめてやらなければならないと。


 実際そうするのが正しい。それを主張しないととんでもないことになるからだ。不利益を全面的に被るのは自分と自分の遺伝子を継ぐ子孫だからだ。もしそこで不必要な寛容を示しでもしたら一挙に浮気・不倫合戦になって統率が取れなくなる。乱交につぐ乱交で自分の子供が分からなくなってしまう。せっかく隠れて浮気や不倫をして自分の遺伝子の優位性を高めていたにも関わらずその地道な工作が一編に無に帰す。そんなことを断じて許すわけにはいかないのだ。血反吐を吐いてでも喉を枯らしてでも叫び続けるべきだ。「浮気・不倫は絶対悪だ! 」と。



 毎日毎晩乱交パーティーナイトを繰り広げていた人類が(あくまでも仮説です)、現代のような立派な貞操観念を作り上げたのはまさしく驚嘆に値するだろう。人類がもともと一夫一婦制であったからこそ、その名残として現在の貞操観念が存在している、と考えることもできなくはない。しかし、もしそれが本当であれば、これほど浮気や不倫が集団内に蔓延している状況は説明しづらい。それよりも、「家」という概念が登場したことで、人類の性に対する極めて寛容な態度を管理・制御する必要が生じ、その手段として一夫一婦制が発明されたという仮説の方が、より自然に感じられる。この過程において、人類は自己家畜化に成功したのではないだろうか。つまり、社会化された人間の脆弱な倫理観と、動物である裸のサルとしての本能がせめぎ合う中で、現代における浮気・不倫といった行動が絶えず残り続けているのだろう。現時点では、この仮説がもっとも腑に落ちる説明であるように思える。


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