寒い授与式
【魔道帝国】視点です。
今回は俯瞰的に物語が進んで行きます。
【魔導帝国】の英雄と呼ばれている者は合計6名存在する。
灯火の英雄 カヤザール
破滅の英雄 怒羅魂
開花の英雄 フラーペ
冥府の英雄 ラケラケ
魔眼の英雄 救世主
智謀の英雄 痣ラシ
彼らは対【神聖マヨネーズ】戦争、通称《聖魔戦争》で最も活躍した者達の功績を讃える為、そう呼ばれる事となった。
そして、祝勝会当日。
「今回は嫌がらずに来てくれたんだね」
授与式、それは英雄を讃える為の式。
皇帝自らが英雄達に褒美を与えるのだ。
だが、まだ金属類が貴重な時代にトロフィーなんて物が褒美として与えられるはずもなく、ともなれば別の褒美となるのは必然であった。
そして、その内容は――――
「うっせ、授与式がまさか皇帝自ら権能をくれる為の式だとは思わなかっただけだ」
そう、権能の授与である。
権能とは魔法とは違って使用後の多少のインターバルが設けられているが、魔力を必要とせず、尚且つ強力無比な効果が多い能力の事だ。
そもそも国を作る時、その王となった者に自動的に7つの権能が授与されるが、その身に余るのか一つしか使用する事を禁じられている。
ならばどうするか、配ればいい。
最も信頼厚き仲間に残りの権能を分け与える事で、間接的にだが国力が上昇させる事が出来る。
だが誰でも良い訳でも無くて、その権能を最大限活用出来なければ意味が無いのだ。
そこで皇帝は《聖魔戦争》で最も活躍した者に権能を授与する事にしたのだ。
「もう、怒羅魂ちゃんったら……そんな事も忘れちゃって」
フラーペは、そんな怒羅魂を見て少々呆れる。
「ふっ、そうだぞ怒羅魂よ。我らは超越の支配者となる為に虚空の力を得るのだ。こんな事を忘却しては英雄の名折れだぞ」
救世主はとりあえずカッコイイ言葉を羅列して自己肯定感に浸りながら、中二病を全員に見せつけている。
「えっと……オーバー? 二ヒリ? ……何それ」
ラケラケはそんな救世主の言葉を全く理解出来ずに居た。
「ラケラケ、お前にはちと早すぎるぞ。無視してなさい」
頑張って救世主の言葉を理解しようとするラケラケを痣ラシは無駄に理解しなくてもいいと制止する。
「皆いつも通りで安心したよ。どうやら、緊張してるのは僕だけみたいだね」
いつも通りに安心しつつ、実は一番授与式に緊張しているのはカヤザールなのであった。
「…………」
そんな彼らをジト目で見ながら「こいつらブレねぇな」と思うのと同時に不躾に騒ぎ立ててた頃と比べると自分は丸くなったなと怒羅魂は自嘲する。
そんなこんなで授与式の開始まで残り数分と迫ってきた。
「こんな時に言うのも何だけど、皆と共闘出来て良かったと思ってるよ」
「私も楽しかったわよ」
「我もこの戦いは愉悦そのものだったぞ」
「俺は成り行きだったんだが……悪くなかったぜ」
「ははは、私も後方で指示を飛ばしてただけなんだが……それでも、皆の役に立てたのならば光栄だよ」
それぞれが、それぞれの余韻に浸る中、遂にその時はやってきた。
「それでは、英雄達の入場です!!」
その瞬間、国中から歓声が広がった。
声の波紋が歓喜を伝達する。
そして、彼らの目の前には――――
皇帝 袋雨が広場で英雄の登場を待ちわびていた。
例えこれがゲームの中であったとしても、こういった式には多少の礼儀作法は必要だ。
それを分かっているのか、英雄達は各自跪く。
皇帝は「表を上げよ」と許可を出した。
「皆、良くぞ国の為に働いてくれた」
突如、空が暗くなる。
「これより授与式を――――何だ?」
急に天気が悪くなるなんて授与式には似つかわしくないという不快感よりも先に、あまりにも突発的な変化に国民は疑問を持った。
「おい、ちょっと寒くないか?」
一人がそう呟いた。
誰がそう呟いたのかは定かではないが、国民全員がその言葉に同意する。
寒い。
今までこんな寒い時期なんてあっただろうか。
ここ首都ゼノラナの気候は常に温暖で人が過ごしやすい気温と環境だ。
だから、人々はここを目指して集まっていたのだ。
寒い。
だがこの寒さは急に涼しくなったとか、そんなものでは無かった。
まるで、突然冷蔵庫にでも放りこまれたかのような――――
寒い。
そして、上から何かが降ってくる。
雪……雪だ。
ここには似つかわしく無い雪が降っている。
そして、その雪は〈吹雪〉へと変わっていく――――――
[極寒状態が付与されました]
始まったな。




