鬼の王との一大プロジェクト
どうやらこの【鬼ヶ島】自体が鬼の根城のようで、鬼の王様は地下深くに居るらしい。
「我らが頭、羅刹様は外敵には容赦無いが味方には寛容な御方だ。くれぐれも失礼のないようにな」
要するに敵と判断されたら即死するから慎重に接しろって言いたい訳だな。
俺もここには相対するつもりで来た訳じゃないからな。
今回は友好的な会話を行うのが好ましい。
「ここが謁見室だ」
巨大で重厚な扉だな。
この扉の素材や装飾の類は全て銅で用いられている。
金属の加工技術があると玉藻前に聞かされていた。
出来れば、石炭のみならず銅も欲しい所だ。
「使節を連れてきた」
「入れ」
巨大で重厚な扉はゆっくりと開いて、その奥の玉座には頭と称すにふさわしい大柄でイカツイ鬼が鎮座していた。
腕には刺繍が組み込まれており、完全にヤクザの親分そのものである。
「はじめまして、私は【スノーフォックス】のトグと申します。今回は【鬼ヶ島】の者達と国交を結びたいと思い馳せ参じました」
まずはお辞儀、そして挨拶。
こういう謁見はまずは丁寧な印象を与えるに限る。
チラリと羅刹様の方へと見やると、物珍しそうにこちらへ見ていた。
「【スノーフォックス】、悪いが聞いたことの無い名前の国だな。最近できたのか」
「はい、新興国でございます」
こちらはまだ歴史が浅く文明レベルもまだ芳しいとは言えない状況だ。
彼ら視点では我々は小国、手を組んだ方が利があると思わせる事こそ勝機がある。
「それで国交を結びたいと言っておったな、具体的にはどうしたいんだ?」
「まずは交易を開きたいと思いまして、我々の所で産出される鉄鉱石を輸出したいと……」
「ん? 今鉄と言ったか?」
「はい、継続的に鉄鉱石と石炭や銅との交換なんてどうでしょう」
やはり鉄というワードを出した途端に態度が急変していたな。
先程まで割と見下されてる感じだったが、今では真面目に考えてくれてそうで安心したぜ。
「……ある商人の話では鉄はとてつもなく貴重だと言っていたが」
「へぇ、割と物価高いんですね。確かにこれは鉄鉱石、鉄そのものを取り出すには色々と設備が必要です」
「さ、流石にそうだよな……」
「――――ですが、ここはその鉄を作り出すのに大変良い環境だと思いますよ」
「何っ!!」
俺はわざとらしく手を覆っぴろげにして演劇をするかの如く鬼の王へと宣言する。
「製鉄には鉄鉱石、石炭、そして高温を維持できる環境が必要です。鉄鉱石は我々が、石炭と高温を維持できる環境は【鬼ヶ島】にある!! これは、一大産業になるとは思いませんか?」
「素晴らしい!! ここで鉄を作れれば世界に売りに出せるぞ!!」
「もし、この一大プロジェクトが成功した暁には鉄製の物や銅などの金属類を【スノーフォックス】へ優先的に輸出をお願いします」
「うむ、これから宜しく頼む」
[【スノーフォックス】と【鬼ヶ島】との国交が樹立しました]
遂に鉄の製造計画始動!!
もう少ししたら【スノーフォックス】内にも鉄製品が出てくるんじゃないでしょうか。
それと鉄が貴重というのは本当にそうで、この世界で鉄を入手するには基本的に川で砂鉄集めるか鉄鉱石を入手するしか無いです。
砂鉄を集める方法だと入手自体は簡単なんですが、肝心の取れる量がそこまで多くない。
鉄鉱石は鉄鉱山を探す必要がありますが、大抵モンスターの住処と被ってたり他の国が秘匿していてあまり世に出回って無いんですよね。




