夏の電車
夏祭りの後のホームは暑く、汗が噴き出しているのが分かるほどだったが、
電車に乗ると空調が聞いており、次第に汗が冷え寒さを感じてきた。
夏場の薄着、俺たちはどちらも羽織るものなど持っていない。
二人は友人同士。お互いがお互いを意識しているが、それを言ったことはない。
彼女は彼に席を譲って向かい合っている。
寒そうにしている彼を見た彼女は、
「寒い?」と聞く。
「寒い…」彼は答える。
「…あったかくなる方法一つだけある…。」
そう言うと彼女は彼の頬にそっと手を添える。
彼の冷たい頬に彼女の手の温度が伝わる。
彼女の手も冷たい。
けれど彼は次第に彼女に触れられた部分から全身に向かって、
一瞬で血が巡ったかのように熱を感じた。
その熱は耳まで伝わっている。
彼の頬が熱いからなのか、触れている彼女の手も熱くなったように感じる。
「…どう?…あったかくなったでしょ…」
顔をあげて彼女を見ると彼女は恥ずかしそうに目線をそらしながらその顔は耳まで真っ赤だった。
「うん…あったかくなった…」
俺たちは何をしているんだ。
と思いながらもその頬に置かれた手の感覚を失いたくない、その気持ちが勝る21時の祭りの後であった。