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ケイとエム  作者: みん
3/3

ただならぬ男


目が覚めると、見慣れない古びた天井が目に入った。


ここはどこだっけ…?



昨日の出来事を思い出す。


非現実的な中学生の家出。思い返しても現実感がない。


でも、この見慣れない部屋を見渡せば、昨日の出来事が夢ではなく現実に起きた事だと実感させられた。


壁に掛けられた時計は、短い秒針が10時を指していた。


店長に出勤するように言われた時間にはまだだいぶ早い。


冷蔵庫から天然水のペットボトルを取り出し、ごくごくと喉を鳴らしながらすぐに飲み干した。


思えば、昨日家を出てから何も口にしていなかった。


水分を摂ると急に空腹感に襲われ、備え付けられたケトルに水道水を入れてお湯を沸かし、キッチンの下の棚の中に収められたカップラーメンを1つ手に取った。


カチッ…


お湯が沸いた事を示すランプが点灯したところで、カップラーメンにお湯を注いだ。


時計を確認して、3分待つ。


その僅かな時間の間にも、これからの事や、両親が捜索願いを出したらどうしようとか、様々な不安が浮かび上がった。


ある程度のお金が貯まったら、ここを出て、知り合いのいないもっと遠くへ行かないと。


誰も私の事を知らない所へ……。




気付くと5分ほど経っていて、急いで蓋を開けて少し麺が伸びて汁気が少なくなったカップラーメンをちびちび食べた。


半分ほど残して、キッチンの流しに残飯を流す。


“ 女の子は細い方が可愛いのよ”


“ 食べ過ぎたら醜いデブになってしまうわよ!”


こんな時でも思い出すのは母の言葉だ。


今、私を助けてくれるのは他人しかいない。


それならなおさら、少しでも見た目に気を遣わないと、誰も助けてなんかくれない。



昨日の夜、化粧を落とさず寝てしまったことを思い出し、1度化粧を落とすために風呂場まで向かった。


風呂場の前には小さな金属製の3段ラックがあり、そこには1番上に3枚の白い新品のバスタオルと、真ん中の段には同じく新品のフェイスタオルが3枚、畳んで置いてある。


下段には薬局では見たことの無いメーカーの新品のリンスインシャンプーとボディソープが置いてあった。


服を脱ぎ、リンスインシャンプーとボディソープを手に取り風呂場の扉を開ける。



扉を開けて直ぐにトイレがあり、その横に洗面台、さらにその横にシャワーが備え付けられていた。


2畳ほどしかない空間、最低限の設備。


ホテルだとここに浴槽も付いたユニットバスなのに、何故だかここにはシャワーしかない。


そういう仕様なのかとも思ったが、床には浴槽が置いてあった跡のような、シャワーの真下だけ一部タイルの色が違った。


わざわざ浴槽を外した理由を考えることもなかった。


もともと湯船に浸かる習慣は無いし、どちらかと言うと長風呂も好きでは無い。


私にとってそれは大した問題になり得なかったのだ。



カバンから出しておいたメイク落とし兼用の洗顔フォームで顔を洗い、リンスインシャンプーとボディソープで全身を洗い流した。



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