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赤き狼は群れを作り敵を狩る~やがて最強の傭兵集団~  作者: 夜月紅輝
最終章 赤狼の群れ

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第87話 決戦の地#5

 リュートが竜に向かってはしていると、小型通信機(アクシル)を通じてリゼから連絡が来た。


『リュート、大丈夫なの!?』


『悪い、心配をかけた。皆は無事だったか?』


『えぇ、さっき連絡をとって無事をしたところ。

 狙われてたのがあんただけだったからこっちまで被害はなかったわ。

 出来れば、途中でブレスを止めたかったけど、空中にいるわ、熱波で近づけないわで無事であることを祈ることしかできなかったわ』


『スーリヤのおかげさ。それより、どうにかしてあの竜をを地上に落とさないとな――!?』


 リュートは竜を注視し続ける。

 すると、竜がリュートの存在に気付き、火球を放つ。

 太陽を想起させるそれは近づくほど存在感を露わにし、リュートに向かった。


 リュートは咄嗟にそこから離れる。

 直後、地面にはボンと盛大な爆発が起こり、そこから小さな火の玉が拡散する。

 その小さな火の玉一つ一つが人や魔物を焼き殺す十分な威力を持っている。

 そして、その火の玉は地面に着弾すると再び爆発し、数メートルの範囲を火の水たまりにした。


『リュート、大丈夫!?』


『あぁ、問題ない。それで竜を落とす方法なんだが、リゼに俺の再現を頼みたい。

 普通の力では無理でも自然現象を利用すればどうにかなると思うんだ』


『リュートの再現って......まさかアレをやれっての!?

  無理よ、アレはあんただからできたことで、さすがに私じゃ――』


『安心してくれリゼは雷雲を激しくさせてくれればいい。

 そこまでやれば後は俺がどうにかする』


『それも十分難しいんだけど......でも、それなら出来そう。やってみる!』


 リゼは頼みを引き受けてくれるようだ。

 そのことにリュートは笑みを浮かべる。

 リゼとスーリヤ、二人が居ればチャンスは作れる。

 ならば、そこまでのチャンスを作るのが最初の仕事。


 リュートは足の裏から火の魔法と風の魔法を組み合わせた魔法を放つ。

 それはロケットのジェットのように炎を噴き出し、その推進力で空中を飛ぶ。

 最初に竜の背中に攻撃した時も同じようなことをした。

 しかし、燃費があまりにも悪く長くは使えない。

 最後のフィニッシュを考えると出来て十秒。


「やるしかない!」


 リュートは気合を入れて竜へと直進した。

 竜はリュートに向かって火球を放つが、リュートはそれを回避。

 そして、目の前まで近づけば、一気に上空へと移動した。


「こっちだ! ついてこい!」


 リュートを追いかけ竜も飛翔する。

 下から来る空中に気を付けながら、また残りの魔力残量を意識しながら高く高く空を飛ぶ。

 すると、リュートの目の前に広がる雷雲がゴロゴロと音を激しく鳴らし始めた。

 雷が活発化し始めた証拠だ。つまり、リゼの準備が整ったということ。


 同時に、リュートの移動するため魔力が尽きた。

 慣性で少しだけ上昇するが、そこからゆっくりと速度が死んでいった。

 そのまま寝そべるようにして頭が上下逆になり、重力でゆっくり加速する。


 竜はリュートが近づいてきたことに気付くと、大きく口を開けた。

 落下してきたリュートをそのまま飲み込むつもりだろう。

 リュートは右手に雷を纏わせる。その雷は雷雲とリンクした。

 竜はリュートの挙動に不信感を抱いたのか空中で急停止し、翼でガードする。


「ネリル、少しだけ我慢してくれよ――天雷」


 リュートは右手を竜へと向けた。

 瞬間、曇天から雷が降り注ぎ、それが竜の翼に直撃する。


「グガアアアアァァァァ!」


 雷は竜の翼を貫通した。鱗は砕け、肉は焼かれ、翼には風穴が空いた。

 それにより竜は飛翔能力を失い、地上に向かって落下を始める。

 その数秒後、竜は地上に叩きつけられた。

 しかし、致命傷には至っていないのか震えた体で起き上がる。


「「「動くな!」」」「ウォン!」


 リュートを睨む竜へソウガ、カフカ、ナハク、セイガが近づく。。

 そして、竜の固い防御力に対し、一人でダメなら二人でとばかりに、竜の左右からセイガとカフカ、ナハクとセイガが攻撃を仕掛ける。


 その攻撃に対し、竜は翼を利用して防御態勢に入った。

 同時に、竜は口に炎を滾らせる。牙の隙間から炎が漏れ出て揺らめいた。

 竜は依然リュートへと目線を向け、ボウッと上空に向かってブレスを放つ。


「っ!」


 リュートにブレスが迫ってくる。

 その瞬間、リュートの周囲一メートルに三重の防御結界が現われた。

 スーリヤの強制発動した「言霊」の影響だ。

 その結界でブレスを防ぎながら、リュートは竜にさらに接近する。


 竜のブレスにより一つめの結界がヒビ割れ、崩壊する。

 そして、二つ目にすぐさまヒビが入った。

 しかし、まだ竜を狙える間合いには入っていない。まだ近づく必要がある。


 二つ目の結界が崩壊する。炎の勢いが凄まじく距離感が確認できない。

 しかし、ブレスの発生源に近づいているのかブレスの勢いが増している。

 ということは、着実に近づいている証なのかもしれない。


 三つ目の結界にヒビが入る。

 ヒビはあっという間に亀裂を増やし、結界全体に広がる。

 あと少しで割れる、とリュートが思ったその時、ブレスが止んだ。

 そして、結界が割れる。リュートの眼前に竜の顔が現われた。

 すると、竜は再び口元に炎を溜める。


「口を閉じろ!」


 リュートは「言霊」を発動させた。

 これはスーリヤとの間に躱された<契約(コネクト)>の影響だ。

 ただし、女神に対して信仰心のないリュートに仕えるのは一度きり。

 加えて、発動のためには「聖域」を発動させなければいけない。


 それがリュートとリゼ達の間に交わされた作戦である。

 リュートはソウガ、ナハク、セイガ、カフカの四人を聖騎士に見立てることで、その四人に竜を囲んでもらい、言霊効果の発動条件を満たした。


 リュートの魔法により、竜は強制的に口を閉ざされた。

 今にも放たれかけたブレスは閉ざされた口により行き場を無くす。

 そして、圧縮された炎が竜の口の中で暴発する。

 全てを焼き尽くすエネルギーを秘めたそれは牙を破壊し、口から炎を漏らした。


 言霊の効果が切れる。竜の口が開き、モワッと黒い煙が溢れ出て天へと昇っていく。

 しかし、まだ竜の目は死んでいない。体を起こし、首を伸ばそうとする。

 そこへ現れたのはリゼだった。


「獣華虎脚!」


 リゼは竜の手足を使って上ると、竜の頭を超えるように跳躍する。

 そして、リゼはグルグルと前方回転を繰り返し、遠心力を活かしたかかと落としを竜の頭に叩き込んだ。


「今よ!」


「おう!」


 リゼの攻撃で竜の頭が下がる。

 リュートが眼下で捉えたのは竜の長い首。

 そこにリュートは落下の勢いと全体重をを乗せた大剣を首に叩き込んだ。


「銀狼爪大裂斬!」


 リュートは竜の首に大剣を叩き込む。

 うおおおおお、とリュートは雄たけびを上げながら剣を押し込み、切断した。

 竜の頭がドスンと大地に落ちる。そして、その数秒後に頭を無くした体が横に倒れた。


「ゼェゼェ......」


 リュートは地面に着地する。

 肩を大きく動かし、大剣を振り下ろした態勢のまましばらく動かない。

 正しく持てる力全てを活かしたという印象の戦いであった。

 これが太古に世界を支配した竜の力。一人では到底勝てなかっただろう。

 そう考えると、昔はこの竜がたくさんいたと考えるとゾッとする。


「リュート、大丈夫?」


「あぁ、俺は問題ない。ただちょっと疲れた......けど、まだ終わりじゃない」


 リュートは今にも動かなくなりそうな体を無理やり動かし、竜の胸に向かう。

 そして、そこにくっついているネリルを見た。


「ネリル、今助けてやるから生きててくれよ」


「私も手伝うわ。はい、これ。さっきそこら辺に落ちてた短剣よ」


「ありがとう。助かる」


 リュートとリゼはネリルの体の位置を把握し、慎重に竜の腹部に短剣を刺す。

 竜の腹部はなぜか短剣で切れるほど柔らかかった。

 しかし、理由なんてどうでもいい。これで妹が助かるのであれば。


 途中でソウガ、ナハク、セイガ、カフカが合流する。

 その三人にも手伝ってもらい、無事にネリルの体を竜から切り離した。

 ネリルの体は五体満足で無事であった。不幸中の幸いというべきだろう。


 リュートはネリルの体を抱える。

 ネリルの体は暖かい。しかし、それは竜の体温の影響だろう。

 左胸に耳を当てる。弱い鼓動であるが確かに心音がした。

 リュートの目に希望が満ちる。


「ネリル......良かった、無事で」


 リュートの目から涙が溢れ、頬を伝い、そして顎先へ流れていく。

 顎からは暖かい雫が滴り落ち、ネリルの頬にピトンと落ちた。

 すると、天の恵みが地上の植物に命を与えるように、その雫でネリルの瞼が震えた。


「あぇ......ここは.......あれ? 兄さん......?」


 ネリルが目覚めた。

 目覚めたばかりなのか目の焦点が合ってない。

 しかし、誰がそばにいるかはわかるようだ。

 「兄さん」......その言葉にリュートは笑った。


「ネリル.......おかえり」


 リュートはようやく心から安堵した。

 ロズワルドによって傭兵団が壊滅し、ネリルが攫われた。

 リュートは妹が生きていると信じ、今の今までずっと妹の場所探していた。

 そして、見つけた時には竜の姿になっていて、それでも希望を捨てずに頑張ってきた。

 それが今報われた。これでやっと銀狼の群れ(家族)に報告ができる。


「兄さん.....うん、ただいま」


 ネリルはくしゃっとした笑顔で返答する。

 リュートはそっとネリルを抱きしめた。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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