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赤き狼は群れを作り敵を狩る~やがて最強の傭兵集団~  作者: 夜月紅輝
最終章 赤狼の群れ

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第86話 決戦の地#4

 ロズワルドによって竜へと変えられてしまったリュートの妹ネリル。

 妹の原型が残っている以上、助ける手段は必ずある。

 しかし、問題は助けるためにどうやってあの竜の動きを鎮めるか。


「リュート!」


 リュートの背後から声がした。

 その声に振り返るとロズワルドに分断されたリゼ達が集まってきた。


「リゼ、ソウガ、ナハク、セイガ、カフカ.......無事だったか」


「これまでの方がよっぽど強い敵だったからこの程度。

 それよりもアレが竜なのよね? さすがにデカいし、威圧感があるわね。

 一部の理性ある魔物が逃げ出すぐらいよ。それにあの胸にいる人って――」


「あぁ、俺の妹のネリルだ。俺もまさかの再開でド肝を抜かれたけどな」


 リュートが竜を見て苦笑いを浮かべる。

 その反応にカフカは真面目な顔つきをして聞いた。


「で、どうやって助けるつもなんだいダーリン?」


「そうだな......見た感じ融合というより肉体が取り込まれているようにも見える。

 どちらかはわからないけど......後者だと考えて作戦を立てることにする」


「つまり?」


「あの竜の息の根を止め、ネリルを竜の体から引きはがす。

 だが、相手が相手だ。生半可な攻撃じゃ殺すことはできないだろう。

 だから、皆に一つ作戦を頼みたい。恐らく一度きりだ。よく聞いてくれ」


 リュートは咄嗟に思い付いた作戦を仲間達に伝える。

 それを聞いたリゼ達はコクリと頷く。


「わかったわ。私達に任せなさい」


「出来る限り悟られないように頼む。

 それから、カフカはスーリヤへ伝言を頼む。彼女の力がカギだ」


「オッケー、任せて」


「セイガは誰かが倒れたら引きずってでも前線から退かせてくれ。

 死ぬ確率を一パーセントでも下げてくれると助かる」


「ウォン!」


「ソウガ、ナハク、二人は俺に次ぐ火力要員だ。

 もし俺に何があっても絶対に手を緩めるな。

 優先すべきは竜を倒し、ネリルを救うことだ」


「ま、お前が倒れるなんて想像つかないけどな。けど、わかった」


「うん、ネリルさんは必ず助ける。だけど、やっぱそこには家族が居なきゃね」


「あぁ、俺も気を付ける。それじゃ、作戦開始だ」


 リュートが作戦行動開始の宣言をした。

 瞬間、リゼ達は一斉に散り散りに動き出す。

 竜を囲むようにして走り続ける彼女達。

 その中で最初に攻撃を仕掛けたのはリゼであった。


「ほーら、こっちよ!」


 リゼは両手に持つ二丁拳銃の一つから雷の弾丸を射出させる。

 その弾丸は瞬く間に空中を駆け抜け、竜の鱗へと着弾した。

 しかし、それは壁に投げ当てた石ころのように弾かれる。


「ただの牽制弾とはいえ、ああも簡単に弾かれると泣けるわね。

 純粋な魔力を込めた攻撃だけじゃ通用しない。これが竜の鱗.....!」


 しかし、竜の気は引けたようで、縦長に伸びた瞳がギロリと動いてリゼを捉える。

 竜は前足をあげると、振り被ったそれを地面に叩きつけた。

 リゼは軌道を予測してその場から回避。

 直後、地面にドンッと衝撃が伝わり、風圧が地面を駆け抜ける。

 それはおおよそ人が耐えられる風圧ではなく、リゼは風に押されるがままに吹き飛ばされた。

 そして、リゼは地面をゴロゴロと転がっていく。


「痛ったぁ......まるで風に殴られたみたい。まともに踏ん張っても耐えられなさそうね。

 ともあれ、この一撃のうちに皆もだいぶ行動できたはず」


 リゼは左右に首を動かし、チラッチラッと周囲を確認する。

 竜の左右からはソウガとナハクが挟み込む形で移動している。

 そして、リゼが注意を引いた影響で竜がよそ見をしている隙に二人は攻め込んだ。


「火炎鉄拳!」


「エアロブレイブ!」


 ソウガとナハクによる炎の拳と風の刃。

 それは直撃――することなく、竜が巨大な翼を盾にして防がれた。

 そして、ソウガとナハクの二人は翼に押し返され、吹き飛ばされた。


 しかし、これでリュート陣営の攻撃が終わったわけではない。

 竜の注意は今左右の二人に向いている。

 竜の背後にはカフカがスタンバイしており、隙を見せてる竜に奇襲を仕掛ける。


 しかし、竜も生物であり、生物は身に迫る危険には敏感だ。

 犬が嗅覚や聴力でもって人の居場所を探し出すように、竜も生来の高い感覚によってカフカの行動を感知した。

 そして、山を掴めるかのような長く太い尻尾をゆらゆらと動かし叩きつける。


 ドスンと地面が揺れる。長い尻尾は森の一部に切り込みを入れた。

 カフカは直撃こそそいなかったものの、叩きつけの風圧で体が吹き飛ばされる。

 竜の攻撃はまだ止まらない。地面にビタンと伸びた尻尾をズサーッと横に払う。


 尻尾に引かれた木々は砕けたり、根元からひっくり返されたり。

 地面は抉れ、緑豊かな大地だったそこは一部草木も生えていない茶色の大地と変化する。

 それほどまでの威力の尻尾がカフカへと迫った。


「舐めてもらっちゃ困るよ!」


 カフカは目の前から迫りくる壁のような尻尾に自ら突っ込んだ。

 カフカは獣人の高い身体能力を活かし、尻尾を飛び越えるように跳躍。

 その後、尻尾の動きが鈍い付け根の部分に着地する。

 竜の顔が背後へと向き、カフカを見た。


「あれれ~? この猫ちゃんが気になる? でも、残念。構ってあげない」


 カフカは攻撃をしない。いや、攻撃をしても意味がない。

 攻撃的な魔法を持たない彼女には竜の鱗を傷つけるほどの力はない。

 そんな彼女に出来るのは相手を騙すことだけ。


「赫狼爪月」


 竜の頭上からリュートが落ちて来る。

 彼はリゼ達が注意を引いている間に空中へと跳んでいたのだ。

 そして、リュートは大剣に炎を纏わせ、それを竜の背中に斬りつける。

 バツ印の二連斬り。それは強固な竜の鱗を突破し、肉を斬った。


「グオオオオォォォォ!」


 竜が叫び、痛みで悶えるように背中を逸らした。

 すると、竜は大きく翼を動かし、すかさず空中へと逃げる。


「くっ」


 リュートは空を飛ぶ竜の尻尾を掴んで堪える。

 制空権を竜に取られれば、厳しい戦いを強いられることになる。

 そう思うリュートをよそに、竜はリュートを引きはがす強硬策に出た。


 竜は空中で前方宙返りをし始める。

 ぐるんと一回転するその軌道はリュートに猛烈な負荷をかけた。

 例えば、長い棒を振るった時、その棒の先端は遠心力による凄まじく加速する。

 それは竜の長い尻尾でも同じ。今のリュートは全身が何倍にも重くなっているようなものだ。


 リュートは遠心力に耐え切れず吹き飛ばされる。

 砲弾より速い速度でもって地面に着弾した。

 地面には大きなクレーターが出来上がり、周囲の魔物は風圧で吹き飛ぶ。


「ぐはっ」


 リュートは全身を強く打ち付けられて動けない。

 そこへ「リュート様!」と声をあげながらスーリヤが駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか!? 意識はありますか!?」


「だ、大丈夫......けど、悪い......すぐに動けそうにない......」


 リュートの視界は朦朧としている。

 さながら濁った水面で目を開いているように焦点が合わない。

 体はビリビリと痺れ、力が入らない。しゃべることすら精いっぱいだ。


「問題ありません。回復するまでの時間は稼ぎます!」


 その時、「スーリヤ様!」と聖騎士の一人がスーリヤに声をかけた。

 スーリヤがその騎士に視線を向けると、騎士は空中を指さしている。

 スーリヤはすぐに顔をあげた。そこには口の隙間から炎を漏らした竜の姿があった。


 その直後、竜からは赤熱したブレスが放たれる。

 ゴゴゴゴゴと空中で音を鳴らすそれはまるで天から火柱が落ちてきたかのよう。

 全てを焼き尽くす炎がリュートの息の根を止めるために襲い掛かる。


「ブレスを吐くつもり! そうさはせません!――『止まりなさい!』」


 スーリヤは言霊を放った。

 瞬間、配置された聖騎士によって結界が作り出される。それにブレスが直撃した。

 結界の形にそって炎が放射状に広がっていく。

 鳴り響く音は結界内にいる人々に恐怖を駆り立て、視界に広がる炎は死のイメージを連想させる。


 パキッ。結界にヒビが入った。それほどまでに強力な圧が結界に負荷をかけている。

 スーリヤは「防ぎなさい」と結界内にさらに結界を作り出した。

 すると間もなくしてブレスにより一枚目の結界が崩壊した。


「くっ!」


 二枚目の結界が崩壊寸前へと迫る。

 スーリヤは再び結界を構築する。

 結界の創造と破壊が繰り返される。

 スーリヤは力を酷使するたびに額から大量の汗を流した。

 汗は頬へと流れ、やがて顎へ。顎先からリュートの服へ雫が滴る。


「ハァハァ.......」


 ブレスが終わった時、スーリヤは長時間有酸素運動をしたかのようなに呼吸を乱す。

 もともと白かったその顔はさらに青白くなっている。明らかな体調不良者の顔であった。

 スーリヤの「言霊」魔法は強力であるが故に制約が多い。

 そして、強力が故にその力を行使する時に負担も大きい。


 特に”聖域”の構築はスーリヤの精神に多大な負荷をかける。

 それこそ先程のブレスを防ぐために、聖域の再構築を繰り返したスーリヤの精神の摩耗は半端ではない。

 そして、スーリヤの聖域はもう使うことはできない。


「だい......じょうぶ、ですか......ハァハァ.......お、体、は........?」


「スーリヤ、もう大丈夫だ。俺は動ける。助けてくれてありがとう」


 スーリヤの頑張りのおかげでリュートの体は動けるまでに回復した。

 それもこれも竜の血の類稀なる回復能力のおかげなのだが、リュートはそれを知らない。

 いや、本人にとってはそれはどうでもいいことだ。妹を助けられるならば。


 リュートは起き上がり、立ち上がる。

 足が僅かにふらつく。しかし、それは大剣を支えにして堪えた。

 平衡感覚が安定するとようやく胸を張って竜を見上げた。


「もう......行かれるのですね」


「あぁ、俺が頑張らなきゃいけないことだからな。行ってくる。

 それとさっきカフカから小型通信機(アクシル)で連絡あったと思うけど、スーリヤの力がカギになる。行けそうか?」


「問題ありません。三回まで使える強制発動は女神様の力を行使するので。

 使用者であるわたくしに負担がかかることはありません」


「なら、良かった。俺は戦いに集中する。タイミングは任せた」


「お任せください」


 そして、リュートは竜に向かって走り始めた。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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