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赤き狼は群れを作り敵を狩る~やがて最強の傭兵集団~  作者: 夜月紅輝
第3編 クズ金の山

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第78話  目指すべき場所

 バイオグリーン研究所......それがガルバンが残していた書類にあった取引先の名前。

 そこではガルバンが緑の怪物(グレイマス)を購入した履歴があった。

 また、そこで取引されていたことをカフカが認めた。


「その言葉は本当か?」


「さすがに実際の現場を見たわけじゃないよ。

 ずっと頭の片隅にぼんやりとあったけど、その紙を見て完全に思い出した。

 前に一度だけ酒に上機嫌になっている時に話をしてくれたんだよ」


「たった一回のお酒の席でよく覚えてたわね」


「情報屋だからね。一度聞いたことは忘れないよ。ま、職業病的なやつもあっただろうけど」


「それでもいい。その情報のおかげでこの研究所が重要拠点であるということが証明されたんだからな。

 加えて、ガルバンとの取引があったとすれば、数年前までは確実に活動していたことになる。

 となると、仮に今放棄されていたとしても何か重要な情報が手に入るはずだ」


「それにこのまま放置してまた僕の故郷みたいになっても嫌だし、どっちにしろ言った方がいいと思う」


 ナハクは過去のことを思い出し、暗い表情を見せた。

 そのことを察したカフカ以外のメンバーは神妙な面持ちになる。

 全員があの時の悲惨さを身に染みて理解しているからこその表情だ。


―――コンコンコン


 その時、この屋敷に誰かが訪ねてきた。

 全員が顔を見合わせるが、誰かが訪ねて来ることを知っている人はいない。

 可能性は低いが、ガルバンに対する報復の可能性も考え、リュートだけが玄関に向かった。


「誰だ?」


「夜分にすまない、ダバルだ。知らせた方がいい情報だと思ってな」


 リュートが玄関ドアを開ければ、そこにいるのはダバル一人だけ。

 どうやら誰かに脅されてという線もないようだ。


「ダバルか、どうした? てっきり今頃家族と団らんのひと時を過ごしていると思ってたが」


「そうしたかったけどさ。だが、仲間の中にはガルバンが王であることで利益を得ていた奴も少数ながらいる。

 そいつらに重要な書類を破棄されたら目も当てられないからな。有志を募って奴の部屋を漁ってたんだ。

 で、その最中で気になるものを見つけてな。この紙を見てもらいたい」


 リュートはダバルから一枚の紙を受け取った。


「これは......?」


「端的に言えば、残りの見つからない子供達が取引された場所とのやり取りを記した紙だ」


「なんだって!? それはどこで!?」


「たまたま仲間がガルバンの隠し金庫を見つけてな。

 で、仲間内には手癖の悪い連中も多いから、その一人に金庫を開けてもらったんだ。

 何が入ってるのかと期待してみればその紙切れ一枚。だが、この情報はお前さん達には必要なものだろ?」


 リュートは先程流し読みしてしまった紙を改めて頭から丁寧に読む。

 すると、そこにはとある名前があった。


「バイオグリーン研究所......!!」


 その言葉にリュートは衝撃を受けるとともに思わず笑みが零れた。

 なぜなら、これでその研究所に子供達がいる可能性が高くなったのだ。

 あやふやな情報が確定される。これほどうれしいことはないだろう。


 しかし、同時に嫌な予感も脳裏に過る。

 それは子供達が攫われてからどのくらい期間が経ったのかということ。

 全員無事であればそれに越したことはない。だが、それは恐らく低い。


「どうした? 急に笑ったと思ったら今度は真剣な表情になって」


「え? あ、あぁ、気にしないでくれ。こっちのことだ」


「ならいいんだが......」


 ダバルは心配した様子でリュートを見る。

 そんな彼にリュートは笑って話を切り上げた。


「伝えたい情報はこれで以上か?」


「あぁ、そうだ。悪いな、ゆっくりしてるとこ邪魔して」


「気にしなくていい。貴重な情報をくれたんだ。感謝しかない。

 だから、そっちも部屋漁りはほどほどにして家族サービスしてやれよ?

 それから、もしまた何かあればバリアン......カフカに連絡してくれ。

 困ったことがあればいつでも力になる」


「それはこっちのセリフだ。お前さん達がいなかったら恐らく一生家族と会えなかっただろうしな。

 ま、そんなんで折れるあんたじゃないだろうし、ここはお互い様ってことで」


 ダバルは軽く手を振って帰っていった。

 その姿が小さく見えるほどの距離になると、リュートはそれを持って皆の元へ戻った。

 そして、受け取った紙をテーブルに置くとダバルとの話を説明していく。


「――というわけで、この場所に子供達がいる可能性が高いという結論になった」


「「「「「.......」」」」」


 その言葉に全員が渋い表情になる。

 さながら悪い予感が当たってしまったとばかりに。

 そして、その気持ちを言葉にしたのはリゼだった。


「......なんというか、想定していた最悪な結果になったというか.......信じたいけど、悪い予感しかしないわね」


「そうだな。緑の怪物の購入場所が明らかになってから皆薄っすらとは考えてただろう。

 だが、それをあえて言葉にしないようにしてた。本当になってしまうかもって思ったから」


「けれど、現実は非情であるという結果が待ち受けてそうな結果になってしまいましたね。

 覚悟はしていましたが.......やはりいざ受け止めるとなると辛いですね」


スーリヤの言葉に全員が黙り込む。

 そんな中、唯一悲観的になっていないカフカがリュートに意思を確認した。


「で、どーすんの? このままここで立ち止まるつもり?」


「まさか。確かに残酷な未来が見える可能性が高まってしまったのは事実だが、その逆という可能性だって潰えたわけじゃない。

 例えどんな結果になろうとも俺は覚悟して前に進むつもりだ」


――ピロロロロン♪


 その時、リュートの小型通信機(アクシル)に着信があった。

 その発信元はローゼフ学院長からのものだ。

 これが意味するのは、攫われた妹の手がかりが手に入ったということ。

 リュートは「学院長からだ」とみんなに伝え、静かにしてもらうと着信に出た。


「もしもし、ローゼフ学院長ですか? お久しぶりです」


『久しぶりだな。調子はどうだい?』


「体調に問題はありません。つい数時間前に大きな仕事が終わったばかりなのでこれからゆっくり休むつもりです」


『そうか。息災なら何よりだ。そんな君に朗報がある』


「朗報......ですか?」


『あぁ、君の妹を攫ったであろう犯人の足取りが掴めた』


「っ!」


 その言葉にリュートは目を見開く。そして、すぐさまその言葉に食いついた。


『それは本当ですか!?』


「あぁ、数日前に目的地近くで君の妹らしき特徴の少女を乗せた馬車を見たという声があってな。

 その馬車が言った方向を追いかけたらとある施設を発見した。

 恐らくその場所にいる可能性が高いが.......情報の伝達までにそれなりの時間が経過してしまっている。

 一応、近くに私の兵を置いて監視しているが、現状動きはない。すでにいない可能性も考慮しといてくれ」


『それでも構わない。何かしらの手がかりがあればそれでも十分だ。それで場所はどこだ?』


「場所は――バイオグリーン研究所という所だ」


『なんだって!?』


 その言葉にリュートを含めた全員が唖然となった。

 開いた口が塞がらないといった様子で、ローゼフの言葉で正気に戻る。


「何か知っているのか?」


『あ、いや、なんでもない。少しこっちのことと関連性がある情報でして.......では、その場所の位置情報を送ってくださいますか?』


「わかった。少し待っていてくれ」


 そして、リュートはローゼフから位置情報をもらった。

 ホルバス村という場所から十数分ほど山を登った先にその施設はあるらしい。


「ありがとうございます。助かります」


『これで伝えるべきことは伝えた。幸運を祈る』


 それでローゼフとの通信は終わった。

 瞬間、リュートはどっと疲れが出たようにソファにもたれかかる。

 たった数分の会話だった。にもかかわらず、計り知れない精神的疲労感。

 伝えられた情報は確かに朗報であったが、場所が場所だけに嫌な予感が過り続ける。


「リュート、大丈夫?」


「クゥ~ン」


 ナハクが心配の声をかけ、彼の相棒のセイガが慰めるようにすり寄ってきた。

 それに対し、リュートは「あぁ、大丈夫」と答え、セイガの頭を優しくなでると、姿勢を戻した。


「色々と思う所はあるが.......ひとまず今後の方針はこれで決まった。

 バイオグリーン研究所に向かって残りの子供達と妹を取り戻す。

 こうして情報も手に入ったことだしな。カフカ、悪い。仕事がなくなっちまったな」


「気にしなくていいよ。急ぎでしょ?

 だったら、ダーリンの代わりにこの箱庭の管理をしておくよ」


「あぁ、よろしく頼む。それじゃ、早めの内にその場所に向かいたい。

 疲れているとこ皆には悪いが、すぐに出立の準備をしといてくれ。

 明日は午前中に必要な物資を調達したら、午後には目的地へ向かう」


 リュートは一人ソファに立ち上がると、ドアの方へ移動していく。


「俺は先に部屋に戻る。あんまり夜更かしするなよ? おやすみ」


 ガチャンとドアがしまり、部屋からリュートの姿が消えた。

 そんな彼が居なくなった場所を残りのメンバーは浮かない顔で見つめていた。


「大丈夫かな、リュート......いや、メンタルが強い人とは思ってるけどさ」


「妹さんを探し続けてる方のメンタルがそう強いわけないですよ。

 加えて、その情報を得たのはバイオグリーン研究所という場所の内容を知った後。

 可能性を信じたくとも、不安がぬぐい切れないって感じでしょう」


「それをリーダーだから皆を不安にさせないように必死に隠してるって感じかな。

 おじいちゃんの時と似たような顔をしている気がする」


「ウォン!」


「ダーリンは優しすぎるからね。でも、優しいからこそ怒らせると怖い。

 ダーリンを怒らせた人はバカだね。何にも彼のことをわかっちゃいない」


 リゼ、スーリヤ、ナハク、セイガ、カフカが続けてしゃべる。

 そして、イマイチ表情が暗い若者を見たカフカが苦言を呈した。


「ちょっと、君らがそんな顔してどうするのさ?

 彼が恩人なら少しぐらいは安心させるような態度を見せないと。

 言っておくけど、ダーリンの足を引っ張ったら許さないから」


「わかってるわよ。もうこれ以上アイツだけに責任を背負わせない。

 だから、今度は私達が彼を助ける番。いい? 三人とも」


「当然です」


「当たり前」


「ウォン!」


 リュートが居なくなった場所では、彼のために仲間達が結束を高めていた。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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