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赤き狼は群れを作り敵を狩る~やがて最強の傭兵集団~  作者: 夜月紅輝
第3編 クズ金の山

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第75話  ファイトポーカー#11

 一発の銃声が鳴り響く。その直後、バリアンの体が崩れ始めた。

 そして、やがて地面に倒れ、その場から動かなくなる。

 そんな彼の姿を見てリュートは思わず叫んだ。


「バリアン!」


「ふっ、どうやらこれでお前達の悪事もこれで終わりだな。

 お前達がしていたイカサマはもうすでに終わったラウンド、その時に指摘できなければ無意味だ。

 だから、お前は安心してラストに挑め。ただし、もうこれまでのようにいかないがな」


「っ!」


 顔を暗くするリュートを見てガルバンは高笑いをした。

 その顔はさながらもうこの勝負に勝ったかのような笑みであった。

 そして、ガルバンはニヤリとした顔のままダバルを見た。


「それじゃあ、ダバル、お前が俺達の勝負を引き継げ」


「え?」


「仲間であるお前自ら引導を渡してやるんだ。お前もディーラーぐらいやったことがあるだろ?

 言っておくがお前に拒否権はない。お前が仲間を殺すんだ」


 その言葉にダバルは顔を青ざめさせた。

 大量の脂汗を書き始め、抵抗できない現状に悔しそうに顔を歪めながら拳を握る。

 しかし、彼は倒れて動かないバリアンを見つめながら、ゆっくりと歩きだした。

 そして、やがて彼はバリアンが立っていた場所に立った。


「リュート、すまない......」


「気にするな。家族が大事な気持ちはわかる」


「そうか......やっぱ良い奴みたいだな」


 ダバルは机に置かれたカードの山札を手に取り、山札をシャッフルし始める。

 今の状況にまだ緊張しているのか彼の手つきはおぼつかない。

 そんな彼を横目にガルバンはリュートに話しかけた。


「別れ話はすんだか、リュート?」


 ガルバンが向ける不敵な笑み。どうやら作戦を看破して上機嫌んもようだ。

 そして、彼はテンションをそのままに宣言した。


「それじゃあ、最後の勝負と行こうじゃないか! 勝っても負けても恨みっこなしだぜ!」


 ガルバンの言葉から開始された第五ラウンド。

 男は余裕しゃくしゃくと言った様子で配られた手札を見る。

 なぜなら、その部下は家族を人質に取っている以上、自分に逆らえないからだ。


 そんなダバルから配られた手札は「Q」「K」「K」「K」「Q」であった。

 台本の無い中配った手札としてはかなりいい手札だ。

 しかし、ダバルにもディーラーとしてのイカサマのテクは知っているはず。

 もっといい手札が配れたのではないかと疑ってしまう。


 とはいえ、それはリュートの表情を見れば考えすぎというものだろう。

 目の前の男にとって今の状況はバリアンという存在があったからある状況だ。

 しかし、その一番の障害は排除した。ダバルは家族を見捨てられない。

 今の状況で負ける要素が見つからない。


 ガルバンは改めて手札を確認する。

 今の手札はスリーカードの役がある。これだけで十分に強い。

 しかし、今はダバルが自分とグルである以上、それ以上の役が望める。

 本当に負ける要素がない。完膚無きまでに叩きのめせる。


「お前はどうすんだ? カードを交換するのか?」


「どうもこうもない。どうせ見えてるからわかってるんだろ? この役なし手札のことを」


「なんだ気づいていたのか? まぁ、そりゃ気付いてなきゃバリアンがあんな行動するはずないものな。

 ふ、それじゃあ、お前のあがきを見せてもらおう。おい、ダバル二枚交換だ」


「......はい」


 ダバルは山札をシャッフルし、そのうちの二枚を素早くガルバンに配った。

 交換した手札は「K]の二枚と「Q」の一枚で、代わりに来たのは「J」「10」「9」の三枚だった。

 望んでいたロイヤルストレートフラッシュではないが、スートが同じでありストレートフラッシュではある。


「チッ」


 ここ最近、ダバルには巡回警備を任せていた。そのツケが来たようだ。

 こういう時、バリアンなら確実に望む役をくれた。

 やはり咄嗟のアドリブではダバルとバリアンでは差があるらしい。

 本当に愚かなバリアン(ガキ)「だ。こっちについていれば一生安泰だったものを。

 とはいえ、この手札でもパフォーマンスには十分だ。


「で、お前は降りるか? 構わないぜ、俺は。お前が逃げるような臆病者ならそれでも。

 ククク、あぁ、いい気分だ。これからお前らが俺の所有物になると考えるとなぁ。

 特にあの女二人は高く売れそうだ。ま、その前に俺が直々に指導しておく必要はありそうだがな」


 そんな意気揚々とし、脳裏に欲望を広げて笑みを浮かべるガルバン。

 そんな男に対し、リュートは持っていた手札を表にして机に広げた。


「なんだ? そのカスみたいな手札で勝負するのか?」


「いや、この五枚を交換してもらうだけだ。

 こうなってしまった以上、下手な策略はお前に看破されるだけ。

 なら、一世一代の大博打をこの場でかましてやろうと思ってな」


「ハッ、ダバル(コイツ)がお前に有利なカードを渡すとでも?」


「最後ぐらい天運に任せたっていいだろ? それともこの博打に負けるのが怖いのか?」


「いいだろう、見届けてやる。ついてにお前の手札も覗かないででおいてやるよ。楽しみが減っちまうからなぁ」


「それはどうぞご勝手に」


 リュートのカードをダバルが回収し、ダバルはシャッフルを始める。

 その様子をチラッと見ていたガルバンは自分の手札に目を移した。

 そして、ニヤニヤと笑い始める。

 ストレートフラッシュ......この役の効果は絶大だ。


 自身のバフはもちろんのこと、相手に対してもデバフをかける。

 加えて、相手のバフをの効果を無効化する。

 つまり、相手を弱体化した上で自身は超強化するという効果だ。

 勝敗が決まった時点で勝ち目はない。殺戮ショーの始まり始まり。

 さて、どのように調理してやろうか。


「......ところで、お前は狩りをしたことがあるか」


「あぁ?」


 リュートの突然の意味不明な質問にガルバンは首を傾げる。


「あるわけねぇだろ、んなもん。もうバレてるから言うが、俺は魔法は戦闘向きじゃねぇ。

 それに金さえあれば、苦労せずとも美味いもんが食え、好きなことが好きなだけできる。

 汗水たらして働かずともな。故に、もはやそんなことなどする必要が無い」


「なら、やっておいて損はないぞ? 狙っている獲物がどういう時に、どういう状況で、どういう行動をするかなんて大抵パターンが決まっているからな」


「あん? さっきから何が言いてぇ?」


「人間、心に余裕が出来れば多少のミスは気にしなくなるってことさ。

 特に最低を見ていると大抵のことはそれよりもマシだからな

 つまり、仕留めたと思った瞬間が最大の油断ってことだ」


 リュートは机に束ねたカードをバンと置く。

 そして、とても不利とは思えない表情で言った。


「さぁ、勝負を始めようぜ」


「勝負? 正気か?」


 ガルバンはリュートの自信のある様子に動揺する。

 すかさず透視能力を使うが、カードが束ねられた状態で透けており内容がわからない。

 なんだ? 一体何の役が出来上がってんだ!? ストレートフラッシュに勝てる役なんて。


 瞬間、ガルバンは戦慄した。

 ストレートフラッシュに勝てる役。

 そんなものポーカーにおいて一つしか存在していない。


「ま、まさか......!?」


「いざ尋常に勝負!」


 ダバルが叫ぶ。その勝負の映像が観客席に映し出される。

 ガルバンの逃げ場を無くすように告げられた勝負宣言。

 この時、ガルバンは理解した。


「謀ったな、ダバル!」


「俺の手札はこれだ」


 リュートは束ねたカードを表に叩きつけ、そっと手をスライドさせる。

 すると、束ねたカードは扇形に開かれ、リュートの手札が公開された。

 その手札の数字は「10」「J」「Q]「K」「A]。そして、スートは全て同じ。


「ろ、ロイヤルストレートフラッシュ......!?」


「さぁ、お前の手札を見せてくれ。もう逃げ場はねぇぞガルバン!」


 リュートの圧にガルバンは大量の脂汗をかき始めた。

 やがて顔を真っ青にし、カードを持っている手札は小刻みに震え、息切れが多くなる。


「どうした? 出せないのか?」


「.......」


「恐らくだが、お前がこの勝負から放棄すれば、その場合お前の強制負けになるんだろう。

 さて、今のお前に手札を公開しないという手段は取れるかな?」


「くっ......!」


 ガルバンはあごからポタポタと汗を流しながら、苦渋の決断をするように顔を歪め、手札を机に置いて公開した。

 

「いつからだ......」


 ガルバンは顔を手で覆い、そっとリュートに問う。

 それはもう自らが負けを認めたようなものであった。

 事実、今のガルバンにもう勝利はない。

 イカサマを見抜けず勝負が出そろった時点で。


「どうした?」


「いつから俺を罠に嵌めていた?」


 その問いにリュートは腕を組んで答えた。


「そうだな、知りたいなら教えてやろうか? この作戦の全てを」


 そして、リュートは語り始めた。

 バリアンもとい仲間達と一緒に企てた作戦の全てを。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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