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赤き狼は群れを作り敵を狩る~やがて最強の傭兵集団~  作者: 夜月紅輝
第3編 クズ金の山

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第72話 ファイトポーカー#8

 第三回戦のファイター同士の戦いが幕を閉じた。

 結果はリュートチームの一人であるソウガの勝利。

 この結果に対し、ゲーマー同士がいる部屋ではガルバンが真っ青な顔をしていた。


「お、まさかガルバンが勝つとは思わなかったな。

 やっぱバフ、デバフの効果ってここまでファイターの戦いに影響するんだな」


 違う、とガルバンは水晶から壁に映し出された画面を見つめるリュートを睨む。

 確かに、ファイター同士の戦いでバフとデバフの存在は勝敗に大きく左右する。

 しかし、それでも緑の怪物(グレイマス)は人智を超えた化け物だ。


 いくらバフをつんだ人間であろうと勝てるような存在じゃない。

 ましてや、ソウガに至っては初期の戦闘データを大きくした。

 つまり、バフを積んだとしてもその上昇率は高くない。


 故に、この結果はあまりにも予想外だ。

 考えられることがあるとすれば、内部に裏切者がいる場合。

 もしくは、純粋にソウガという男の戦闘能力を見誤っていた場合。


 しかし、後者はあまり考えづらい。

 なぜなら、ソウガはこの金檻の箱庭(くに)で生まれ、育った人間だ。

 それが意味するのはソウガという人物のデータが揃っているということだ。


 ただ、ソウガが魔法工学学院に言っていた時のデータはない。

 しかし、その男は優秀生徒としてこの国の治安維持のために戻ってきた。

 つまり、これまでここにいたソウガのデータが全てのはず。


「お前、一体何をした......?」


「何をしただ? 人聞きの悪いことを言う。

 この結果をくれたのは他ならぬあんたじゃないか。

 だから、お言葉に甘えてお情けで勝利をもらっただけ。

 さすがエンターテイメントをよく理解している御仁だ。

 ただ、これでも俺の勝利は紛れもなくワンカウントされるけどな」


 そう、リュートにはこの言い訳が通じる。

 実際そういう流れにしてしまったのは自分だ。

 これはすでに多くの観客によって視聴されていて言い逃れは難しい。


 今回の勝負に関しては相手の方が有利だ。

 下手に駄々をこねれば王の威厳にかかわる。

 くっ、下手に調子に乗らなければ良かった。

 まさかキュクロプスが負けるとは思わんだろ。


「まぁいい、確かにこの八百長は俺が認めたものだ。

 俺がそんなことをしても負けるような相手じゃ、せっかくの特別企画だってのに興ざめな見世物になってしまう。それがなかっただけマシってものだ」


「さすが王様だ。太っ腹な考えに脱帽する」


「だが、それも今回までは次の第四回戦からは正々堂々と勝負させてもらおう。

 つまり、お前との勝負は次で最後だってことだ。せいぜい頑張って足掻くんだな」


「そうさせてもらうとするよ」


「それじゃ、次の勝負だ。バリアン、カードを配れ」


「はいはーい。それじゃ、ゲーマー同士の話も終わったところですし、お次の第四回戦に進みたいと思います。

 第一回戦、第二回戦で勝利を収めたガルバン王、第三回戦で八百長ありきではありながらも勝利を収めたリュート選手。しかし、次の勝負ではもう公式八百長は出来ない!

 それでは始めましょう! 運命の第4回戦! 勝つのはガルバン王か、リュート選手か!」


 バリアンは慣れた手つきでシャッフルし始め、カードを配り始める。

 この時点ではまだ自分の特殊魔法は使えない。

 自分の特殊魔法「ルール」は限定的な力だ。ゲームの中でしか使えない。

 そして、今回のルールではカードを配られた直後に発動する。


 カードが配られた。

 その五枚はそれぞれ「K」「8」「8」「8」「3」だ。

 最初からスリーカードとは運がいい。

 しかし、いくらこちらの役が強くても相手の方が強ければ意味がない。


「さて、お手並み拝見と行こうじゃないか」


「さっき流れが変わったから今来てると思うぜ」


 リュートが不敵な笑みを浮かべて見てくる。

 どうやら先程の勝負で調子づいたみたいだな。

 しかし、それは所詮味方の力で勝ったに過ぎない。

 そして、ここでは俺の能力が独壇場!


 リュートの手札は「A」「4」「6」「Q」「J」の五枚。

 数字的にはノーハンド......役なしだ。

 だが、「J」を除いて全てがクラブというのがまずい。

 もし、カード交換で「J」に代わるクラブが来た時、相手の役は化ける。

 その役の名はフラッシュ。俺のスリーカードより強い役になる。


 そして、フラッシュでのファイターに対する効果はバフの上昇倍率効果。

 つまり、単純に相手が強くなる。それは普通に厄介だ。

 加えて、次の相手のファイターは戦闘能力値を低く設定してある。

 見る限りどこかの令嬢みたいだったしな。顔を隠してるところとか。

 ただ、素性がわからなかったのが何とも言えないが。


「手札は良かったか?」


「そうだな。ま、カードの引き次第ってところだな。そちらさんはどうよ」


「同じ感じだな。つまり、どちらかに運の神様がほほ笑むってことだ」


 んなわけねぇよバ~~~カ。そんなお前の都合よく引けるわけねぇだろ。

 俺の能力はここからだ。山札の上二枚を盗み見る。これでお前との勝負が決まる。


 俺の現在の手札はスリーカード。

 相手が仮にフラッシュとなった場合、勝てる役はフルハウス以上しかない。

 今の手札から考えるに狙いたいのはフルハウスかフォーカードだ。


 しかし、ジョーカー一枚を抜いた総数五十一枚、さらにそこから互いに十枚の手札を引いた四十一枚から残り一枚を引くのはあまりにも確率が低い。

 そして、相手のクラブのマークを引く確率の方が圧倒的に確率が高い。

 であれば、ここで妨害して相手をノーハンドにした方が俺の勝ちの目がある。


「さて、どっちが先に引く?」


 ここで特殊魔法の効果発動! 次の山札から二枚のカードを透視する。

 これは俺にだけに許された絶対にバレないいかさまだ。

 そして、バリアンはこちらのディーラーであり、ディーラーの審判が絶対。

 つまり、俺のいかさまはどう足搔いたって止めることはできない。


 ふむ、一番手前のカードがハートの「7」で、もう一つが()()()()の「2」か。

 であれば、この二枚を取らせれば相手はノーハンド。こっちの勝ちが確定する。


「んじゃ、俺が先に引く」


「いくつ交換する?」


「一枚だ」


「オーケー、じゃ上から――っと!?」


 バリアンがカードを交換しようとした時、山札を持った手を滑らせた。

 瞬間、山札は一気にバラバラになって地面に広がり、散らばっていく。

 おい、バリアン、お前――!


「何やってんだ!」


「す、すみません、不注意でした。次はもうしません」


「次とかの問題じゃ――っ!」


 張り上げた声が短く息を吸って止まる。

 醜態を晒したバリアンを叱る自分の醜態が映像によって映し出された。

 その映像が流れる先にはこの催しを楽しむ大勢の観客がいる。

 つまり、自分の余裕のない様子が、威厳があり強者としての寛大なイメージが揺らいだ。


「......あー、申し訳ない。つい神聖な勝負でこんなことをされてしまったから怒ってしまった。

 だが、どうか大らかな目で俺達のことを許して欲しい。

 そして、引き続き楽しんでくれると幸いだ」


 こんなことをしている場合ではない! 早く、次の手札を確認しなければ!


「なぁ、この一枚でいいか? どうせバラバラになってるし」


 バラバラの一枚!? 不味い!

 俺の特殊魔法の効果はあくまで山札の上から二枚の確認だ。

 だから、山札じゃない場合には確認できない。

 しかし、バラバラの中からたまたま引いた一枚がクラブという可能性は......だが、なぜだ? なぜこんなにも嫌な予感がする!


「だ、ダメだ!」


「ダメなのか?」


「あ、いや......これはアクシデントだ。その状況で引いたなら、今は裏だが表を確認して引いたと思われるぞ」


「あぁ、それなら大丈夫。俺が見てないことは観客が証明しているから。

 だから、別に引いても構わないよな?」


 その時、目の前の赤髪の男の顔に一番のおぞましさを感じた。

 この男の頭が切れることは以前の戦いから知っている。

 しかし、第三回戦が始まってから何か流れがおかしい。

 この男が何かアクションでも起こしたのか!?


 だが、先ほどの八百長宣言は明らかに俺からの提案だ。

 俺がこの男の立場だったとしてもこのようなことを予測して動けるだろうか。

 いや、無理だ。この男に出会ったのは昨日が初めて。

 いくら情報を集めていたとしても思考回路を読み切ることは不可能。


 だが、もしその思考回路を読むにたる情報を得ていたとしたら、それは俺の身近にいる人物から情報を得ることしか知り得ようがない。

 だとすれば、俺のことを知る俺の仲間なんて.......まさか、バリアンテメェ!?


 クソ! そう考えれば、先ほどのトランプのばらまきも怪しく感じる。

 いや待て、憶測だけで焦って思考を乱すな。まだそうだと確定したわけではない。

 とはいえ、もしそうならこのゲームは俺のための出来レースではなく、この男のための出来レースになるわけか。


 いくら、俺の魔法がこのゲームで有利でも観客の目がある以上、表立ってイカサマ行為は出来ない。

 だからこそのバリアンという協力者が必要なわけだが、その相手が裏切っているのであればこのゲームに勝ち目はない。

 クソ、どうする? このままでは俺に勝ち目が――いや、待てよ?


「.......アイツは確か」


 ガルバンはバリアンの後ろにいる大勢の黒服達の姿を見る。

 あの男達は優秀な捨て駒達だ。中でのあのあの黒人。

 金のために家族も恋人も友人も、挙句には命を差し出すバカばかりだが、中には家族のためだの友人のために行動する大馬鹿もいる。

 そして、俺はそいつの生殺与奪件を握っている以上、そいつが逆らうことはない。


 つまり、バリアンを排除しても金にくらんで勝ち馬に乗るような裏切者にはならないというわけだ。

 この次のファイター同士の戦い、仮にゲームで負けても対戦相手のファイターはこれまでのファイターの中で最弱。

 とはいえ、油断はしない。念には念をだ。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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