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赤き狼は群れを作り敵を狩る~やがて最強の傭兵集団~  作者: 夜月紅輝
第3編 クズ金の山

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第67話 ファイトポーカー#3

「ハッハッハ、どうやらお前のチームは負けちまったようだな。

 ま、このゲームは基本的に俺達の勝負で勝敗が決まる。

 だから、味方を責めてやるなよ。責めるならテメェの運の悪さを責めな」


「......」


 ガルバンの煽りにリュートはだんまりを決め込む。

 青年の表情はまさに男の言った通り、味方が負けてしまった原因を作った自分を呪うようだった。

 男の顔は増々醜悪に歪む。


「まぁ、責めるなよ。確かにこの勝負は落としちまったが、まだこのゲーム自体に負けたわけじゃねぇ。そう落ち込むなって」


「うるせぇ。お前は金しか見てねぇだろうが。

 それにリゼが戦ったあの化け物のことは知ってるぞ。

 あれは人間に薬液を打って出来たもんだろ。なんであんなものを飼ってる?」


 リゼが戦った緑の怪物(グレイマス)は研究所にいた存在と同一だ。

 それにガルバンが関わっていたとすれば、あの研究所について何か知っているかもしれない。


「アレはいわば貰い物だ。偉く従順な奴らだけど、一度放し飼いにしちまえばこれが大変でな。

 遊ぶのが大好きなもんで捕まえるのに時間がかかっちまうのよ。

 それでいくらうちの大事な従業員が死んだことか」


「......何がいいたい?」


「なーに、君の大事な仲間が死んでなければいいなーってな」


「黙れ、ガルバン。リゼは死んでねぇ。死ぬような人間でもない」


 ダンッと拳をテーブルに叩きつけて睨みを利かすリュート。

 しかし、勝者の余裕がその威圧をそよ風のように受け流していく。

 この勝負、戦力を見誤っていたのはリュートの方だったかもしれない。


「まぁまぁ、舌戦はこれぐらいにして。まだこの勝負は第一ラウンドが終わったばかり、次のラウンドに参りましょう」


 バリアンはゲーマー達からカードを回収すると、巧みな手さばきでパーフォーマンスのようにカードをシャッフルしていく。

 それらを配り終えると、ガルバンとリュートにそれぞれ一枚ずつ計五枚のカードを配った。


「さぁ、続いて始まります! 第二ラウンド!

 この勝負に勝つのはこの国の絶対的な王であるガルバンか。

 はたまた、生きる英雄であり挑戦者であるリュートか。

 ガルバンがこの勝負に勝てばこのゲームの勝利に大手となります。

 リュート選手としては是非ともこの勝負は落としたくないところ。

 それでは行きましょう――第二ラウンド、スタートです」


****


 バリアンがゴングを鳴らす。

 同時に、ガルバンとリュートがそれぞれの手札を手にして内容を確認していく。


 ガルバンの手札は「3」「3」「3」「K」「9」の五枚。

 この時点でスリーカードであり、手札としては悪くない方だ。

 ただし、数字的に味方にデバフがかかってしまう。


 しかし、勝利することを考えるなら、味方にデバフをかけてでも勝負には勝つ。

 それに、こっちのファイターはデバフをものともしない怪物だらけだ。

 そもそもデメリットを考える必要もない。


 「3」のカードを残すのは前提とし、残りの二枚を変えるとするなら、狙いはフォーカードもしくはフルハウス。


 フルハウスは味方にバフ、敵にはデバフを掛けられる貴重な役だ。

 となれば、狙うとするなら当然フルハウスになるだろう。

 この時点で勝利の可能性が非常に高いことにガルバンをほくそ笑む。


 しかし、ガルバンはすぐに顔を横に振って油断の思考を振り払う。

 ギャンブルというゲームは勝利を確信した者ほど泥沼にハマものだ。

 このゲームが如何に俺の有利に働いているイカサマゲームであろうと油断だけはあってはならない。


 それに相手は前回のゲームがフィジカル勝負。

 とはいえ、二秒先の未来を見得る俺のイカサマを相手にしながら互角以上の相手となった。

 幸い、こちらの攻撃の手が先に届いたおかげで勝利した。

 だが、再び同じような窮地に立たされるかもしれない。


「どうだ? お前の手札は俺に勝てそうな強さだったか?」


「俺の手札はボチボチだ。どうにもこうにも世の中ってのは上手く行かないもんだな」


「ボチボチ、ね。それがブラフかどうか」


 確かめさせてもらう、とガルバンはリュートの手札を透視し始めた。

 リュートの手札は「4」「8」「8」「Q」「A]の五枚。役は「8」のワンペアだ。

 現状では勝っているが、手札交換次第ではスリーカードとして並ばれる。


 その場合、自分の負けは間逃れない。

 相手も当然スリカード狙いで手札を交換するだろう。

 問題は自分が山札で透視出来るのが上から二枚までということ。

 そして、その二枚のうちに「8」のカードが存在していることだ。


 つまり、山札にそのカードがある状態で先にリュートが手札交換をしてしまえば、相手の手札に「8」のスリカードが出来ることになってしまう。


 当然、自分が交換する時に数字が揃う場合もあるが、その確率は非常に低い。

 それどころか確実に迫りくるスリカードに対する危険に対処した方がいい。


「俺にはお前の手札がわからないが、もう少し自信を持った方が良いんじゃないか?」


「いや、これじゃ勝てない。それに狙うなら高みの方だ」


 リュートは考えるようにテーブルで指をトントンと音を立てる。

 微妙に何かのリズム感が出来ているが、ガルバンは有利的状況でさほど気にならなかった。


「なら、先に俺が交換させてもらおうかな」


「もしかして、先に引くことでメリットがあるのか?」


 その言葉にガルバンの上げる手はピタッと止まった。

 もしかして俺のイカサマに気付いたのか!? と僅かに冷や汗が流れる。

 本当なのかブラフなのか。決めるには情報が足りない。


「どういう意味だ?」


「悪いね、俺はお前が何もしてないとは思えないんだ。

 わざわざリスクのある俺との戦いにこうして乗ったのは勝つ算段があるから。

 少なからずそう思ってるんだが......どうだ?」


 ガルバンは務めて表情を変えない様に意識した。

 しかし、リュートの言葉は彼の心を揺さぶるには十分すぎた。

 くっ、この野郎、どっちとも取れる言い方でこっちの反応を見てるのか?

 とすれば、このゲームはあえて負けるべきか? いや、その考えは早計だ。


「さっきの俺に自信を持った方がいいという発言......一見すれば、俺の様子を見たままの助言にも感じる。

 だが、もし俺の手札が見えてる状態での発言であれば、お前のこれからの行動は意味が変わってくる」


「......どのように?」


「俺に自信を持たせ、その間に流れるように自分の手札を引く。

 それを考えるに、可能性としては二つある。

 まず一つが俺の手札に危機意識を持っている場合で、俺の手札から危険を排除しようとしている。

 二つ目が自分の手札に有利なカードを引こうとしている場合。これは言わずもがなだな」


 やはりこの男は危険だ、とガルバンは歯を噛み締めた。

 この尋常じゃない勘の鋭さは戦場で生き延びた故に学びついたものか。

 だとすれば、さすが英雄と呼ばれる存在であり、同時にこの上なく厄介だ。


「さすがにそれは考え過ぎじゃないか?

 現に俺は前回の勝負では()()で勝っただろ?」


 自分の特殊魔法は自分だけのオリジナルの技だ。

 であれば、実力と評価しても間違いではない。

 つまり、嘘はついていない。

 ただ解釈を捻じ曲げて本当のことを誤魔化してるだけだ。

 ただ、このごまかしがどこまで通じるのか......。


「それは俺の手札に対する透視しているということだけを否定する言葉か?」


「当然だろ! 俺との勝負でこれまでイカサマを主張出来た相手はいない!

 仮に俺がイカサマをしていようとその事実が証明できない以上、それは存在していない事実とそう変わりないだろ?」


「.......ま、確かにそうだな。負けたせいで考え過ぎてたのかもな」


「ハハハ、だろうな! 誰だって大事な勝負で負けたら視野が狭くなる! 仕方ない事さ!」


 指をトントンと二回ほどタップしながらリュートは自分の意見を引いた。

 その瞬間、ガルバンはやっと呼吸が出来るかのように重たいため息を吐き出す。

 やはり、この男は危険だ。ただでさえ、勘が鋭いのに疑り深い。

 ここは早々にリーチをかけた方がいいかもしれない。

 ガッツリデバフさえかけられなければ、俺のファイターが負けるはずがない。


「それじゃ、俺は手札を引くぜ。交換するのかこの二枚だ」


 ガルバンは交換する「K」と「9」の手札を伏せて差し出す。

 バリアンがそれを回収すると山札の上から二枚の手札を渡していく。

 渡されたカードは「1」と「8」。

 これによって、リュートがスリーカードになる未来は潰えた。

 念のため山札から二枚のカードを確かめても、「5」と「J」だ。


 リュートがスリーカード狙いで役のない三つを交換したとしても、役が揃うことは無い。

 加えて、ジョーカーを一枚抜いた計五十一枚のカードから残り一つの「8」を引くなど、確率的に見ても圧倒的に低い。


「んじゃ、俺も三枚のカードを変える」


 リュートがバリアンからカードを交換してもらう光景を見ながら、ガルバンはほくそ笑んだ。

 リュートの手札が揃ってから透視しても、三枚目のカードは「A」で役は出来ず。


 つまり、カードでは不利だが、勝負自体には勝てるという未来が確定したのだ。

 全てのバフを食らえば、不味いが相手もバフを食らうとなれば、純粋な肉体のスペックでこちらのファイターが勝る。

 そして、これで紛れもない――リーチだ。


「それじゃ、二人の手札が揃ったことだし、早速お互いの手札をオープンとしようか。

 さて、これでリュート選手が勝ってガルバンに並ぶのか、はたまたガルバンは連勝を続けてリーチになるのか。いざ勝負!」


 リュートとガルバンは同時に手札を公開する。

 当然ながら、このゲーマー同士の勝負はガルバンの価値となる。


「ふぅ~、あぶねぇ。こっちは『3』のスリーカードだったからよ。

 全替えしようか考えたんだが、それは流石にリスクあったしな。

 お? 頭を抱えてどうした? あぁ、そう言えばお前の味方はオールデバフ食らうんだったな」


 ファイトポーカーの役について。

 ワンペア、ツーペアの場合味方にバフを与えられるが、スリーカード、フォーカードの場合相手にデバフを与えるのだ。


 つまり、勝負に負けたリュートはその勝敗でデバフがファイターに付与され、さらにガルバンのスリーカードの効果でデバフが加えられる。

 デバフの効果は従来のデバフ計算と同じだ。


「さぁ、次に蹂躙される味方の名前を教えてくれよ。見納めになるかもしれねぇからさ」


 ガルバンは憎たらしく笑った。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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