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赤き狼は群れを作り敵を狩る~やがて最強の傭兵集団~  作者: 夜月紅輝
第3編 クズ金の山

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第65話 ファイトポーカー#1

「それでは公平を規して僕がカードのシャッフルを行います。

 僕はあくまで中立の立場としてディーラーをするのであしからず。

 当然ですけど、ゲームに参加しませんよ」


 バリアンはトランプの山を巧みな手さばきでシャッフルし始めた。

 そして、それをガルバンとリュートのそれぞれに一枚ずつ配って行く。


 ゲーマーの二人はそれぞれ伏せられた五枚の手札を手に持ち、中身を確認し始めた。

 この時のリュートの手札は――「5」「6」「7」「7」「4」の五枚。


 現状ワンぺアであり、ギリギリバフが与えられる数字だ。ただし、倍率は小さい。

 マークはバラバラだが、「3」か「8」が来ればストレートが狙える手札だ。


 五枚の手札を扇のように開き、手札の内容とにらめっこするリュート。

 強くも弱くもないワンペアであるため数字を変えて大きな役を作れればベスト。


「弱いなぁ」


「っ!」


 その声にビクッと反応したリュートはすぐさまガルバンを見た。

 目の前の成金男は頬杖を突きながらニヤケ面で眺めてくる。


「弱い手札だって顔に書いてあるぜ。どうした?

 弱いと思うなら交換すればいいじゃないか」


「まだ弱いと決まったわけじゃねぇよ。

 逆に聞くが、随分と余裕そうな面するじゃねぇか。

 それほど自信がある手札なのか?」


「さて、どうかな。ただ場数が違うから俺が何考えてるかも分からねぇだろ」


 実際、リュートにはガルバンが浮かべている笑みが本当に自信があるのか、ハッタリなのか分かっていない。


 しかし、一つわかりきった事実として、このゲームは絶対にガルバンが有利となるようなゲームである。


 監獄デスマッチのエキシビションの時も、ガルバンが有利となるような能力行使による動きが確認できた。


 あの時のガルバンは「相手の動きの数秒先が見える」だったようだが、今回のガルバンはどのような有利な能力が働いているのか。


 このようなゲームでの駆け引きを想定した場合だと現状で考えられる候補は三つ。

 一つは、カードの交換の際にどのようなマークと数字のカードが来るか先にわかる能力。


 ポーカーというゲームにおいて、カードを交換する際に順番が決まっているものではない。

 先に交換したい方が挙手をし、ディーラーが新たなカードを配る。


 この時、些細な違いであるがどちらが先に交換するかで当然手にする手札の内容は変わってくる。

 それによって組み合わせで出来る役の種類も強さも。


 それを考えれば、ガルバンが最初にリュートが手札交換をすることを勧めたことにも理由がつく。


 二つは、相手の手札が透けて見える能力。

 これは言葉通りの意味であり、それで分かるのは相手の役がどの程度の強さがいかほどかということだ。


 これ単体だと能力としては弱い。先に結果が分かるだけだからだ。

 だが、これが先ほどの山札の内容が見える能力と同時に発動していると話は変わる。


 このポーカーでの試合は、あくまで次のファイター同士の戦いで味方に与えるバフを決めるための戦いだ。


 当然、バフをかけることに越したことは無いが、場合によっては降りた方が味方に余計な影響を与えずに済む場合がある。


 例えば、ガルバンの手札が「3」のワンペアとして、リュートが「7」のワンペア。

 この場合、二人が勝負すれば、ガルバンが負けるのは考えるまでもない。


 ゲームルールとして、勝敗が決した時、勝者にはバフ、敗者にはデバフが自動的に与えられる。

 ただし、勝負した時のみ、追加で勝負に出した手札の数字でバフまたはデバフが決まる。


 つまり、ガルバンが勝負して負けた場合、勝敗のデバフにプラスして数字の小ささによるデバフの影響を味方に与えることになるのだ。

 となれば、あえて辞退した方が味方への影響が小さくなる。


 先ほどの一つ目の能力たけでは、結局手札を引かせるのがどっちかというだけで、その交換によって相手の役がどう揃うかわからない。


 二つ目の能力だけだとしても、結果だけが先にわかるようなもので、場合によっては交換によってさらに自分の手札が強くなる可能性があったかもしれない。


 故に、互いにどっちつかずの能力ではあるが、何も発動がそれ一つとは限らない以上、警戒しておくことに越したことはない。


 三つは、相手の思考をそのまま読み取れる能力だということだ。


 これは単純に厄介な能力であり、人間は表情に出さないことは出来るが、考えないことは出来ない。


 考えずに行動すれば運だけの勝負になり、イカサマしている相手には勝てない。

 何もガルバンのイカサマが特殊魔法による効果だけとは限らないからだ。


 ガルバンの格好は袖の無いファーのついたジャケットを裸の上出来ているだけだが、例えばテーブルに仕込みがあった場合、現状では気づきようがない。


 他の可能性としては、ガルバンの両腕についている沢山の指輪、首にかけたジャラジャラとしたネックレスなどが魔力を流すだけでイカサマの効果を及ぼす魔道具であれば、十分勝負として脅威になる。


 これからの危険性が溢れている以上で考えないのはもはや愚策。

 仮に思考が読み取られているとすれば、それを考慮して動くしかない。


「おいおい、随分な長考だな。まだ一ラウンドだぜ?」


「そりゃ、俺の勝敗が後に響くとなれば慎重にもなるだろ。

 それにお前の言う通り、俺の今の手札は微妙だ。

 だから、言われた通り交換させてもらう」


 リュートは手札から「4」「5」「6」の三つのカードをディーラーのバリアンに渡した。

 彼はそれを受け取る前に三枚のカードを渡し、リュートの交換カードを回収していく。


「ちなみに、交換って一回だよな」


「もちろん、皆平等にチャンスは一度切りだよ。ズルは許されない」


 バリアンの回答にリュートは分かっていたように「そっか」と呟く。

 彼のもとに届いたカードは「A」「2」「6」の三枚。

 どうやら今回の勝負に関してはワンペアで勝負するしかないようだ。


「俺は交換したけど、お前は交換しなくていいのか?」


「お前の表情を見るまでは考えてたがな。だが、どうやらお前は嘘が苦手なようだ。

 だからこそ、この勝負は勝てるって確信できた」


「お互いに勝負する手札が決まったみたいだね。それじゃ、早速結果を見ようじゃないか――勝負!」


 バリアンの合図にリュートとガルバンは同時に手札を公開した。

 リュートは「7」のワンペアに対し、ガルバンの手札は「Q」のワンペアだった。


「どうやらこの勝負は俺の勝ちのようだな。バフの倍率としては六倍か」


「倍率?」


「ルールにもあったバフ・デバフの与える効果の強さの話さ」


 ガルバン曰く、このゲームでの倍率は以下の通り

 ・「6」から「1」につれてデバフ倍率が最小で一倍であり、最大で六倍

 ・「7」から「A」につれてバフ倍率が最小で一倍であり、最大で八倍。


 また、この倍率はこれから戦うファイターの戦闘力数値によって変動する。

 例えば、バフの場合、数値が高いほどバフの倍率が上がるとあるが、その計算式はこうなる。


 戦闘力数値が「8」とし、バフの倍率が八倍とする。

 この場合、倍率は戦闘力数値で割られ、出た答えはさらに十分の一を乗算。

 その出た値が「1」が足された値が倍率となる。


 故に、戦闘力数値「8」の人は、まず除算で倍率が一倍になり、十分の一を掛けられ0.1倍。

 それに「1」を足し合わせて出る1.1倍率がその人のバフ倍率になる。


 逆に、デバフの時の場合の計算式はこうだ。

 戦闘力数値「2」の時、デバフ倍率が六倍とする。

 この場合、倍率は戦闘力数値で割られ、出た答えはさらに十分の一を乗算。


 故に、戦闘力数値「2」の人は、まず除算で倍率が三倍になり、それが分母となるので0.3倍。

 よって、0.3倍がその人のデバフ倍率となる。


「ちなみに、勝敗に関してのバフ・デバフの倍率に関しては、それぞれ1.2倍と0.8倍。

 だから、これらの特殊な計算式から戦う戦闘力数値の高い奴はバフの倍率が小さく、デバフの倍率が大きいってことになる」


「だが、例えデバフを受けようとも、ファイターがその逆境を跳ねのけて勝利すれば、そのラウンドはファイターが勝った方のチームってことだろ?」


「あぁ、そうだ。もっとも、デバフを受けた奴がまともに戦えるのかは見物だけどな。

 だからこそ、お前は負けてはいけなかった。

 お前は後悔するぜ、これから起きる未来を見てな」


 ガルバンのニヤケ面に対し、リュートが無反応を貫いていると、バリアンが注目を集めように手を叩いた。


「はいはい、勝負はここからだよ。

 さて、このゲーマー同士の戦いではガルバンが勝利した。

 そして、勝敗に加え、それぞれの役のバフ・デバフが味方のファイターに与えられる」


 バリアンは二人の視線を壁に映し出されている映像へと仕向ける。

 すると、その映像が見せる殺風景の空間の端からリゼが入場した。

 リゼの頭上には戦闘力数値「7」と表示されている。


「おや、先に入場してきたのはリゼさ......ごほん、リゼ選手のようだ。

 戦闘力数値は『7』。強いオーラを放っていたけど、やっぱりやるようだね。

 対するガルバン選手の対戦相手は――」


 バリアンが実況している。

 その時、リュートはすぐ横でガルバンがニヤッと笑ったのに気が付いた。

 その笑みの理由はすぐに映像に映し出された。


―――ドスン、ドスン


 そんな鈍重な音が映像越しにも伝わってきそうなほど巨大な生物が現れた。

 瞬間、リュートは大きく目を開き、息を呑んだ。


「あ、あれは――緑の人間(グレイム)!?」


 人間の形をした全身緑色の異形の生物。

 ナハクがいた山にあった研究所で戦ったのと同じタイプだ。

 ただし、サイズは普通の人間ではなく、三メートルほどある。


 リュートの呟いた言葉にガルバンは感心した表情をする。


「ほぉ、アイツを知ってるんだな。だが、惜しいな。アイツは緑の人間(グレイム)じゃない」


「何?」


「そいつにさらに改良を施した緑の怪物(グレイマス)だ。

 さて、俺の可愛いペット相手にどれだけ通じるか楽しみだな」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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