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第8話
少女は憎悪していた。
白銀に輝く月を。
月下に咲く花々を。
けれど、少し、分からなくなる。
緩やかな時間の流れに、暖かな豊かさに溶かされていく。
出会った少女は、優しくて、暖かくて、自信に満ちていた。
それは『豊かさ』から来るものだろう。
嫌味の無い、大らかな生き方。
『向こう』ではお目にかかれなかったものだ
出会った少年は、肉親であるという。
なるほど、確かに、自分に似ていると思った。
人との距離の取り方も、詰め方も。
私も地球に生まれていたら、あの月を見て、あの少女と共に毎日釣りでもしていたらこんな風になったかも知れない。
鏡写しの少年。
一つの同じ根から分かれた存在。
『受け入れろ』とは、あの二人は言わないだろう。
多分思ってもいない。
しかし、その優しさは、この地球が育んだものだ。
資本と暴力の中で、人を踏みつけて得られた、極一部の安寧が生み出したものだ。
自分の中の激しさに自信が持てなくなる。
こんな人生も良いかもしれない、これ以上何を望むのだろうと……。
しかし、藤野ゆかりには、誰にも明かしていない秘密がある。