第7話
「はぁ……はぁ……」
「ゆかりちゃん、大丈夫?少し休もうか?」
「だ、大丈夫……です……」
「どう見ても大丈夫じゃないよー」
長い長い、苔むした石の階段の上に、古びた神社がある。
三人でその階段を登っていたのだが、ゆかりが途中でダウンしてしまった。
体力が無い、という訳では無い。
宇宙で育った人間は、1Gの重力下での生活に慣れていないのだ。
骨も地球で育った人間に比べたら脆くなっているし、酸素を贅沢に使う大きな呼吸にも慣れていない。
ある程度の『慣らし』が終わっているとはいえ、長い階段を登ったりするのは大変なようだった。
「お水飲む?」
朝顔が水筒を差し出す。
ゆかりは頷くと、こくこくとゆっくり流し込む。
「ぷは……」
「ちょっと休憩しよう」
階段の左右は雑木林になっていて、石段には木漏れ日が差していた。
緩い風に合わせて、光もゆらゆらと揺れる。
少しずつ葉が色付き始める季節である。
風にも秋の色が混ざり始めていた。
「縁くんも昔は体力無くてね、鬼ごっこすると途中でバテちゃうの。よくこの階段でへたり込んでたな」
「こんな所5往復も10往復もする方が体力バカなだけだ」
子供の体力は無尽蔵というが、運動量を考えたらアスリートでもキツいだろう。
……朝顔は今でも涼しい顔でやりそうだが。
階段を登り切ると村が一望出来るのだが、7分目ほどの今の位置からでも、階段に腰掛け振り返るとそれなりの眺めは得られるようだった。
「綺麗でしょ。お気に入りの眺めなんだ」
誇らしげに朝顔がそう言う。
ゆかりは、そんな朝顔の横顔を流し見ると、一瞬自嘲したような微笑みを浮かべて答えた。
「ええ。とても綺麗」