第32話:王様方がいらっしゃいました
そして、王様にお会いする日がやってきた。
ルーク様たちと一緒に、門のところでキチンと並ぶ。
私は緊張して、体がカチコチになっていた。
「お、王様にお会いするのは初めてです」
「メルフィー、そんなに緊張しなくていい。陛下は意外と気さくな方だ。それに、これは単なる食事会だからな。いつも通りやってくれればいい」
「ルーク様がそう言ってくださると、本当に安心します」
やがて、道の向こうから、豪華な馬車がやってきた。
とても美しい白馬にひかれている。
「さて、王様のご到着だ」
馬車は門の前でピッタリと停まると、中からかっぷくの良い男性が降りてきた。
この国で一番偉い人、サンルーナ王だ。
「やあやあ、メルシレス卿。相変わらず、立派な屋敷だな」
「恐れ入ります、陛下」
ルーク様はうやうやしく膝をついた。
私も慌てて膝をつく。
「そして、こちらがウワサの、天才料理人メルフィー嬢かな?」
「は、はい、私がメルフィー・クックでございます。本日は王様方のために、全力でお食事をご用意させていただきます」
私は前もって考えていた口上を言った。
特に失礼じゃないわよね?
「まぁ、楽にしなさい。メルシレス卿から貴殿の作る料理を頂いたことがあってな。我輩はその美味さに驚愕したのだ」
「あ、ありがたき幸せでございます」
「それでは、陛下。大食堂にご案内いたします」
エルダさんたちが、王様と側近たちを丁寧に連れていく。
去り際、ルーク様がさりげなく私に囁いた。
「王様たちの相手は私がするから、君は料理を作るのに集中してくれ」
「わかりました」
とは言ったものの、さすがにドキドキする。
私は今までにないくらい緊張してきた。
おいしく作れるかな。
どうしても心配になってしまう。
そうだ、こういう時は深呼吸するのよ。
まずは気持ちを落ち着けて。
私が深呼吸を繰り返していると、ルーク様が私の肩にポンッと手を置いた。
「大丈夫だ、メルフィー。何も心配いらない。君の料理は、世界一おいしい。この私が保証する」
ルーク様の言葉を聞いて、手の温かみを感じて、私の心がどんどん落ち着いていく。
「ありがとうございます……ルーク様のおかげで、気持ちが落ち着きました」
「今日はずっと料理をすることになるが、すまないな。疲れたらすぐに言ってくれ」
「ご心配ありがとうございます。ですが、私なら大丈夫です」
「では、私は先に食堂へ行っているよ。また後でな、メルフィー」
「はい、また後で」
私はキッチンに行き、気持ちを整える。
いよいよ、王様が私のお料理を食べるのね。
よし、頑張るのよ、メルフィー。
いつものように、私はパン! と顔を叩いた。




