表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/40

第19話:公爵様に夜食をお作りしました ~濃厚トマトリゾットとお芋のあったかミルク~

「お夜食だから、軽い料理の方がいいわね」


夕ご飯はもうお食べになったから、小腹を満たすくらいがちょうどいいだろう。

なおかつ、満腹感のあるお料理。

まずは、食材を探してみましょうかしら。

たしか、トマトが残っていたはず。

冷蔵箱を見ると、真っ赤なトマトがいくらか入っていた。

私はジッと眺める。

何か良いレシピが浮かびそうな……。


「そうだ、トマトリゾットを作りましょう」


リゾットならご飯がクタクタだから、胃もたれしないだろう。

それに、トマトの酸味でリフレッシュできる。

そうと決まったら、さっそく準備ね。

玉ねぎとにんにくも、一緒に入れましょう。

まずはお米を研いだら、玉ねぎを細かく刻んでいく。

このとき、にんにくも一緒に切ってしまう。

トマトも細かく切ったら、下準備はおしまい。

フライパンに火をつけて……とそこで、誰かがキッチンにやってきた。


「メルフィー、こんな遅くに何をしてるんだい?」


ラベンテさんが、目を擦りながら入ってきた。


「あっ、すみません。起こしてしまいましたか?」

「いや、ちょっと喉が渇いちゃってね。目が覚めたのさ……って、ずいぶんと美味しそうな物を作っているねぇ」

「ルーク様のお夜食に、トマトリゾットを作っているんです」

「いいじゃないか。最近、公爵様は夜が遅いみたいだからね。お腹を空かせているだろうよ」


私は玉ねぎとにんにくを、じゅわーっと炒めていく。

にんにくの芳ばしい香りが漂ってきた。

良い匂いが出てきたところで、研いでおいたお米を加える。

やがて、お米が透明になってきた。

そろそろ頃合いなので、切ったトマトも入れる。

焦げないように注意して、軽く混ぜてと。

お水を入れて、コトコトと15分ほど煮ていく。


「良い匂いがしてきたね、メルフィー。食欲が刺激されるよ。そろそろ出来上がりかい?」

「仕上げに火を強くして、煮詰めていきます。リゾットがとろりとするくらいがちょうどいいです」


最後に、塩コショウを少し振ったら完成だ。

真っ赤なリゾットから、ホカホカと温かい湯気が上っている。


「とっても美味しそうじゃないか。見てたらお腹が空いてきちゃったよ」

「ちょっと味見してみます」


私は一口食べてみる。

はぁ……おいしい。

お米は柔らかくて、野菜の旨味を吸い込んでいる。

トマトは、ほんのり酸っぱくて、滑らかな舌触りも最高だ。

うん、これならいける。


「アタイもちょっと食べてみたいな」

「ラベンテさんも味見しますか?」


私はトマトリゾットを、少し差し出した。


「いいのかい、メルフィー。じゃあ、いただきま……いや、でも、ダイエットしないと。そうよ。食べたいけど我慢しなさい、ラベンテ。これ以上太ったら、どうしようもないって」


ラベンテさんは手を伸ばそうとしては、ひっこめていた。

そういえば、ダイエット中とかなんとか言ってたっけ。


「軽めの食事ですから、食べても太らないと思いますよ」

「そうかい!? そうだよね! 味見くらいなら大丈夫ね!」


そう言うと、ラベンテさんはリゾットを一口食べた。

すぐさま、満面の笑顔になる。


「美味しいねぇ、メルフィー。頬っぺたが落ちそうだよ」


よし、これでメインは決まったわね。

できれば、もう一品作りたい。


「う~ん、飲み物も作ろうかな。リゾットだけだと寂しいし」

「どんなものがいいかねぇ」

「リゾットはさっぱり系だから、飲み物は少し甘くしようと思います」


味の変化があった方が、ルーク様も楽しめるだろう。

あまり多くの種類は作れないからこそ、こういうところで楽しんで頂きたい。


「どんなのを作るんだい?」

「これを使います」


私は冷蔵箱から、サツマイモを取り出した。

ラベンテさんは、驚いた顔をしている。


「サツマイモで飲み物? 全然想像つかないよ」

「ホットミルクを作ります。お芋の甘さを活かすんです」


サツマイモを潰して温かいミルクと混ぜれば、おいしい飲み物になる。

スープみたいだし、ルーク様のお腹も膨れるだろう。


「ホットミルクかぁ。思い浮かべるだけで美味しそうだね」

「素材の味を十分に使っていきます」


サツマイモを輪切りにしたら、茹でて柔らかくする。

フォークの背中で潰すと、ホクホクと崩れてきた。

裏ごしして、滑らかにしましょう。

ミルクを入れて、お鍋で温めていく。

ヘラでかき混ぜていくうちに、だんだんスープみたいになってきた。

サツマイモのかぐわしい香りが沸き立つ。


「サツマイモは匂いも甘いね」

「砂糖なんていらないくらい、甘いと思います」


私はすりおろした生姜も、お鍋に少し加えた。


「生姜も一緒に入れるのかい?」

「ピリリとした辛さが、アクセントになってくれるはずです。生姜には体を温める効果もありますから」


夜は冷えるから、風邪をひいてしまうと良くない。

ミルクが温まったところで、私はコクンと一口飲む。

……甘くておいしい。

サツマイモの味がしっかり出ていて、まるで丸ごと食べているみたいだ。

思った通り、生姜の辛さが良いアクセントになっていた。

サツマイモの甘さの後に、生姜の辛みが出てくる。

飲み物だけど、とても満足感があった。


「ラベンテさんも、少し飲んでみますか?」

「これはおいしい……おいしいよ、メルフィー。アタイはこんなにおいしいホットミルクなんて、初めて飲んだね」


だんだん、私の体がポカポカしてきた。

一口飲んだだけなのに、すごい効果だ。

これなら、体が温まること間違いなしだ。


「ルーク様もおいしく召し上がってくれたらいいな」

「メルフィーは本当に優しいねぇ。こんなに人のことを考えている人なんて、他に見たことがないよ」

「そうでしょうか。私は自分にできることをやっているだけですが……」

「きっと、メルフィーの優しさが、料理にも溶け込んでいるんだよ」


お盆にトマトリゾットとホットミルクを乗せたら、準備完了だ。


「では、ルーク様に届けてきますね」

「公爵様も喜んでくださるさ」


そして、私はルーク様の書斎まで来た。

コツコツと扉をノックする。

どうか、喜んでいただけますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ