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第18話:公爵様はお疲れのようです

「ふぅ、美味かった」

「お皿を下げますね、ルーク様」


今日のお夕食も、無事に終わった。

しかし……。

私はルーク様の顔を、じっくりと見る。


「どうした、メルフィー。私の顔に何かついているか?」

「ルーク様、目の下にくまが……」

「ああ、そのことか」


ルーク様は、ゴシゴシと目をこすっている。

そういえば、お食事中もとても眠そうだった。


「昨日も徹夜だったんですか?」

「ちょっとばかし、難しいところがあってな」

「私が申し上げられる立場ではないですが、少しだけでもお休みになられた方が良いかと……」

「なに、大丈夫だ」


ここのところ、私には心配なことがあった。

ルーク様が夜遅くまで、ずっとお仕事をされているのだ。

大丈夫と言っていたけど、目の下のくまが疲労を物語っていた。


「魔法省のお仕事が、お忙しいんですか?」

「最近、案件が溜まっていてな。少々忙しいのだ」


この調子だと、今夜も遅いのだろう。

もちろん、お仕事だからしょうがない。

だけど、ルーク様が倒れてしまったらどうしよう。

私はルーク様には、とにかく健康でいてほしかった。


「少し外の空気を吸ってくる」


そう言うと、ルーク様はお庭に行った。

すぅはぁと、深呼吸をしている。

遠目でも、疲れているのがわかった。


『おーい、メルフィー』


そのとき、お庭の奥からルフェリンさんがやってきた。


「こんばんは」

『ルークのヤツ、あそこで何やってんだ?』


ルフェリンさんは、ルーク様を見て言った。


「お仕事が大変らしくて、お疲れのようなんです」

『そうだったのか。まぁ、新魔法開発部は、ただでさえ忙しいみたいだからな。ルークにしかできない案件もあるだろうし』

「昨日も徹夜って言ってました」

『そりゃ疲れるわけだ』

「私もルーク様の役に立ちたいんです。でも、私には魔法省の仕事は手伝えないし」


私は魔法のことを、あまりよく知らない。

それどころか、簡単な魔法さえ上手くできるかわからないくらいだ。


『昔からアイツは、頑張りすぎるところがあるんだ。メルフィーの言うように、もう少し休んでもいいとは思うが』

「せめて、私も魔法に詳しかったら良かったのに……」


ルーク様の役に立てないもどかしさが恨めしかった。


『アイツにとって、メルフィーはいてくれるだけでいいんじゃないか?』

「何かできることがないか、聞いてみます」

『あっ、メルフィー!』


私もお庭に出ていく。


「ルーク様、私にお手伝いできることはありませんか?」

「お手伝いできること? どうした、急に」

「いえ、ルーク様のお役に立てたらと思いまして……」

「ふむ、そういうことか」


ルーク様は顎に手を当てて、しばし考えている。


「大丈夫だ。気持ちだけ、いただいておこう。君は料理を作ってくれていれば、それでいい」


だけど、そう言われただけだった。

料理を作ってくれていれば……。

そうだ、と私は良いことを思いついた。


「ルーク様、お夜食でもご用意しますか?」


夜食と聞いて、ルーク様はピクっとした。


「ほぅ……夜食か」

「もしかしたら、夜はお腹が空いているかと思いまして。夕ご飯とは別に、何かお作りしますか?」


ルーク様は虚空を見つめて、何かを考えている。


「ふむ……それは良い案だ」

「ご飯を食べると元気も出ますし、気持ちもリフレッシュできると思います」


私に魔法省のお仕事は手伝えないけど、お料理なら作れる。

少しでも、ルーク様の役に立ちたかった。

おいしい食事をご用意するんだ。


「そうだな。では、頼むとするか」

「ルーク様、どんな物がよろしいですか? 何か食べたい物があったら、教えてください。どんなものでもお作りします」

「何でもいい」


そうか、また何でもいいか……。

わかってはいたけど、ちょっぴり寂しくなった。

相変わらず、ルーク様は食べたい物を教えてくださらない。

たぶん、好きな物がないわけではないと思うのだけど。


「わかりました。では、なるべく食べやすい物をご用意しますね」

「念のため言っておくが。何でもいいとは、“君が作る物なら何でもいい”という意味だからな」


すると、ルーク様はそっぽを向きながら、ぞんざいに言ってきた。

そのお言葉を聞いて、私は嬉しくなる。


「そんな風に言ってくださるなんて……恐縮してしまいます」

「料理ができたら、私の書斎に持ってきてくれ。ノックして返事が無かったら、勝手に部屋に置いて構わない。もしかしたら、席を外しているかもしれんからな」

「わかりました。出来上がったらお持ちしますね」


そして、ルーク様は書斎に行ってしまわれた。

私はレシピを考えながら、お屋敷に戻る。


『どうだった、メルフィー? アイツの仕事を何か手伝うのか?』

「いいえ、お仕事の手伝いではなく、お夜食を作ることになりました」

『そうか、それは良かったじゃないか。メルフィーの料理を食べたら、徹夜なんていくらでもできるさ』


私はパン! と顔を叩いて、気合いを入れた。

お夜食か……。

心がホッとするような、おいしいご飯を作りたい。

私はキッチンに急いだ。

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