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第16話:公爵様にお弁当を作りました ~トマトライスの卵包みとまんまるエビフライ~

「どんなお弁当にしようかなぁ?」


今回も、私はキッチンで考えていた。

お弁当は普通の料理とは違う。

開けるまで中身が分からないから、見るまでの楽しみがある。


「おいしいのはもちろんだけど、開けたときに明るくなれるような物がいいな」


となると、彩り豊かなメニューにしたい。

カラフルな方が、見てると楽しいはずだ。

そして、汁気は少ない方が良いわよね。

運んでるときに、零れたりすると困るし。

よし、卵料理にしよう。

お米を卵で包むんだ。

これなら食べやすいし、明るい色をしているから、食べる時も気分が上がりそうだ。


「メルフィーさん、今日は何を作るんですか?」


キッチンで準備を始めると、リトル君がやってきた。


「ルーク様に、お弁当を作るのよ」

「そうですかぁ、お弁当! きっと公爵様も喜んでくださいますよ! それで、どんなメニューですか?」

「お米を卵で包むの。シンプルだけど、結構おいしいの」

「いいですねぇ、卵料理」

「じゃあ、始めるわよ」


準備を整えたら、さっそく作り始める。


「まずは、薄焼き卵から焼いていきましょう」


ボウルに卵を落として、勢い良くかき混ぜる。

しばらくすると、白身も黄身も均等に混ざった。

溶いた卵は一度よけといて、フライパンを火にかける。

温まってきたら火を弱くして、溶かした卵を注いだ。

すぐにさっと回して薄く広げる。


「メルフィーさんは、どんな料理も手際が良いです」

「のんびりしていると固まっちゃうからね」


半熟くらいまで焼けたら、用意しておいた濡れタオルに少しだけ乗せた。


「こうして冷やしながら調理すると、フライパンの温度がちょうど良くなって上手に焼けるのよ」

「へぇ~」


私はフライパンをもう一度火にかける。

じゅわーっと、卵が焼ける良い音が響く。


「見てるとお腹が空いてきました」

「ダメよ、ルーク様のお弁当なんだから」


そのまま少し焼いていると、卵の縁がフライパンから離れてきた。


「とても薄く焼けています」

「そろそろ良さそうだわ」


卵が破けないように、丁寧にお皿に乗せる。

これくらい焼けば十分だろう。


「次は中に入れるご飯ね」


お米はさっき炊いておいたので、ほっこり炊きあがっていた。

具材はどうしようかな?

……お肉にはソーセージ、お野菜には玉ねぎとピーマンを使いましょう。


「う~ん、卵にお米を詰めただけだと味気ないわよねぇ」

「そうでしょうか」

「塩味だけなのも物足りないし、色合いが良くない気がするわ」


黄色に白だと、スプーンで切ったとき少々殺風景だ。

私はしばしの間考える。


「あっ、そうだ。トマトで味付けしましょう。冷蔵箱にまだ入ってたはずよ」


冷蔵箱を開けてみると、新鮮なトマトと玉ねぎが入っていた。

さっそく、適当な大きさに切って、一緒にグリグリすりつぶした。

とろとろになったら、お鍋であっためる。

そのうち、こってりとしたスープみたいになってきた。

味付けは、砂糖と塩かな。

ぷくぷく煮詰めたら、トマトの酸っぱい香りがしてきた。


「味見をしましょう。リトル君もどうぞ」

「うわぁ、美味しいですよ、メルフィーさん。甘くて酸っぱくて、とても良いですね」


私は、さらに一口飲んでみる。

トマトの爽やかな酸味と、ほのかな甘さがおいしい。

とろりとした感じもいいわ。

あとはお皿に入れて冷ましておく。


「次はご飯の調理ね」


ソーセージは輪切り、玉ねぎとピーマンは角切りにしていく。

サクサク切る音が心地よい。


「大きさを揃えるように、切っているんですね。形がとてもキレイです」

「それだけではないわ。こうすると、熱がまんべんなく行き渡るのよ」

「なるほど~」


炒めていると、玉ねぎがくったりして透明になってきた。

火を弱くしたら、さっき作ったトマトソースを入れる。


「これを先にあっためておくと、トマトの酸っぱさが落ち着くの」

「メルフィーさんは、何でも知ってますね」


最後は、ご飯の出番だ。

温かいご飯を入れて、へらでシャッシャッと混ぜていく。

だんだん赤くなってきて、とてもおいしそうだ。


「ポイントはご飯を潰さないように、へらを立てることね」

「僕がやるとベチャベチャになりそうです」


こうすれば、食べた時の食感もおいしくなるはずだ。


「最後は一番大事なところよ」


トマトライスを卵で包むだけだけど、キレイに包むにはコツがいる。

キッチンから、手頃な入れ物を探す。

やや小さめの四角い箱があった。

お弁当箱はこれにしよう。


「卵は薄いから、すぐに破れちゃうんじゃないですか?」

「大丈夫よ、良い方法があるわ」


薄い羊皮紙を、キッチンの台に敷く。

この前、ルーク様に用意してもらったんだ。

そして、さっき焼いた卵を、キレイな面が下になるようにして乗せた。


「何してるんですか、メルフィーさん?」

「まぁ、見てて」


トマトライスを乗っけたら、お弁当箱に入れて羊皮紙を包み込む。


「これでひっくり返したら……」

「わぁ! キレイにできましたね!」


表面がつるんとした卵包みができた。


「これだけだと寂しいから、もう一品作りましょう」


お肉はソーセージで使ったから、魚介類の方が良いわよね。

冷蔵箱を探してみると、エビがあった。


「おいしそうなエビですねぇ」

「これをフライにしましょう」


殻を外して、頭と一緒に背中の筋もしっかり取る。

薄めの塩味をつけたら、卵液を混ぜた小麦粉に浸す。

余分な卵液をとって、全体を丸めていった。


「そんなに丸くしちゃうんですか?」

「小さくした方が、お弁当箱に入れやすいわ」

「たしかに、メルフィーさんの言う通りです」


そのまま、油で揚げてフライにする。

お弁当箱の端っこに、キュッと詰めといた。


「油で揚げてるから、しっぽまで食べられるわ」

「無駄がなくていいですね」


でも、渡すときルーク様に伝えておいた方がいいかも。

エビのしっぽは、食べにくいかもしれないし。


「これでお弁当はできたけど……なんか寂しい気がする」

「僕はこれでもいいと思いますが」


卵の黄色はキレイだけど、何かアクセントが欲しい。

でーん、と主張が激しすぎるような。


「う~ん、どうしよう。そうだ、トマトソースで模様をつけよう」

「いいですね、きっと公爵様も気に入りますよ」


それでは、と言ったところで、私は困ってしまった。

どんな模様にしよう。

お弁当箱は小さいといえ、卵は結構大きなスペースがある。

丸とか四角じゃそっけないよね。


「模様で悩んでいるんなら、ちょうどいいマークがあります。公爵様は、ハートマークがお好きなんですよ」

「へぇ~、ハートマークかぁ」


意外にもかわいいものがお好きなのかな?

もしかしたら、魔法学的に意味があるのかもしれない。

そうと決まったら、さっそくつけよう。

「小さいよりは大きい方が良い」というリトル君の助言で、でかでかとハートマークをつけといた。

これで完成だ。

卵で包んだトマトのライス。

シンプルな料理だけど、相性は抜群だ。


「ルーク様は喜んでくれるかな」

「きっと、とても喜んでくださいますよ。ウフフ」


私はルーク様のお弁当を、大事に包んだ。

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