うわばみ伝説降臨
ユカは現在シャワーを浴びている。
スーツ以外でも下着や腕周りや足にも血痕が生々しいからである。
謎生物ポンニャーの言う事は10%くらいしか理解していないので、シャワー中も身体…特に頭部の異変がないか入念にチェックしている。
「うーん…さっぱり解らない。って言うか本当に一度死んだかも疑わしい…。」
実感が無い以上仕方ないが血糊だらけという物証があるだけに混乱中だ。
居間を覗くとポンニャーがテレビ観ながら酒盛り継続中。
「あいつ、うちにこのまま居座る気じゃないよね…
だいたい宇宙から来た目的とか判らないし。」
シャワー室から出たユカは新しい下着と部屋着に着替えて冷蔵庫を開けた。
ポンニャーの酒盛りを見ていると自分も飲みたくなったので、冷やしてある梅酒を出した。
「お、洗浄完了か?首から下の新陳代謝は前のままだからメンテナンスは必要だしね。」
何だかロボットやアンドロイドみたいな言い方をされたので、ユカはちょっと不機嫌だ。
「ペットを探している?」
ユカはポンニャーから地球に来た目的を聞いてみた答えである。
「そうね。地球の原住民は移動するのに馬という乗り物を試用しているのと同じね。
僕の馬のモノリアスという名前で、凄く由緒正しい血統なのね。
ビジュアル再生するか?」
そう言われるとちょっと気になるので、ユカはポンニャーが空中に再生した映像を見てみた。
最初の5秒は何が映ってるのか理解が出来なかった。
次の10秒で何が映っているのかが判った。
「ちょっ!馬って言うからかわいいのを期待したら、何よこのスライムみたいな粘着生物は!!」
間違いなくスライムである。
「失敬な!!この美しい容姿が理解出来ないとは!これだから原住民は!こう見えても品評会では常にトップクラスなんだよ!」
「…少なくとも私ゃその品評会の選定委員にはなりたくないわ。」
「まあ僕としても、何故僕の星で軟体生物ブームが流行しているのか意味が解らないんだけどね。」
「…ポンニャーも地味にキモいと思ってんじゃねぇかよ。」
そういえば何年か前のダイオウグソク虫の流行とかあったので、流行とはそんなものかとユカは思った。
ユカとポンニャーの酒盛りが続き、気付いたら深夜を通り越して早朝に突入していた。
そこでユカは身体の異変に二点ほど気付いた事があった。
「…ねぇ、ポンニャー。
ちょっと聞きたいんだけど、いつもの3倍くらい飲んでるんだけど。何故か一向に酔わないのは何故かな?」
ユカはお酒は好きだが、アルコールに強い訳ではない。
ビールならジョッキ2杯、日本酒ならトックリ2本くらいで眠気が襲ってくるのか日常だ。
そして、第2の違和感の正体もソレである。
「…あとこれだけ飲んでも眠くならないんだけど?」
こんな状況なので酔いが回らないと言えるかも知れないが、まるで水の様に飲めるのはさすがに不自然だ。
「睡眠?酩酊?そんな機能は無いよ。キムキムはそんな誤作動は起きないよ。」
さも当然と言わんばかりに
えっへん!と胸を張るポンニャー。
「うおい!ほろ酔いからの熟睡は私の毎晩の楽しみなのよ!」
早朝の清々しい空気。
一晩中飲み明かしたユカは出社時間が近付いて来たので出勤準備にとりかかるのであった。