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黒翅ゲノム   作者: 鎌糸
18/27

十八話 自然の力

「ここどこだよ…」

「アタシに言われてもどうしようも無いッスよ、レヴィが適当に飛んだんスから」

ゴーストタウンから脱出はできたものの、ドコがドコなのか全く分からない。

挙句何かに打ち落とされ、地面に叩きつけられた。

「見つけたぜ… まさか、脱出するとは…」

「焼灼…」

恐らく撃ち落としたのは焼灼だろう。

焦げを掻きながら、不機嫌にこちらを見下ろす。

「もう一人はお前を追った第三部隊をほぼ壊滅させた、完全に敵になっちまったな」

変身を解かれた二人の前に胡座をかいて座った。

「どうだ、なったか? 俺と一緒に来ないか?」

「なにすんだよ、来て」

「言ったろ、戦力だよ、お前が居場所を手に入れるには、魔人につくしかねえの」

「いや、残念だが、俺達の目的はそのもう一人を殺す事だ」

「じゃあ尚更だ、俺達は仲間じゃ無い、もう一人を殺させる条件をつける…と言ったら?」

「簡単には頷けねえな、自分で言っといてなんだが、もう一人が目的の人間と限らねえ」

「まあ、そうでなくとも、無理矢理連れてくが!」

飛びかかる焼灼の眼前に、暗雲が現れる。

「なんだ!?」

それが晴れ、骨と皮で出来た不気味なドアが現れる。

距離を取り、瞳孔を絞る。

やがてそれがゆっくりと開き、三つの人影が中から覗く。

「…どこに出た…?」

「本部からは遠い場所だろうが… どこかは分からないね」

「クソっ…! 俺様の腕が…!?」

目が合う。

レヴィオスとカメレオン。

「テメェ…!」

「殺す…殺すゥ!!」

「コッチのセリフだァ!」

再生したての右腕から繰り出された拳を、漆黒の翼が受け止める。

「レヴィオスか!」

「ダザム!? あっ! この前の!」

「丁度良い、お前に聞きたい事があったんだ」

「俺もだ!」

死神の手が、カメレオンの身体を掴んだ。

「離せ! 殺させる約束だろ!?」

「ちょっと待て! 後で殺らせてやるから!」

ダザムはカメレオンの拘束を確認すると、ゲノムへ近づいた。

「なあ、第三部隊を襲ったのは… お前か?」

「俺は———」

レヴィオスが口を開こうとした瞬間、二人を炎が別つ。

「邪魔すんな…!」

焼灼が炎を鞭の様に唸らせ、二人に襲い掛かる。

「何回言やあ分かんだぁ!? コイツはテメェらをぶっ殺して俺につくんだよ!」

ゲノムの胸に左手を叩きつけると、そこから放射された蒼炎がゲノムを包む。

そしてその左腕に引っ掛けた何かをダザムに見せた。

「コイツはお前が部下に持たせたカメラだ… たった今奪った、コレがレヴィオスがお前達と敵対したという証拠だ」

しかしダザムは表情を変えず、カメレオンを解き放った。

「俺達今さっき騎士団追い出されたからな… ぶっちゃけ意味無え」

「んじゃあ何がしてえのよ?」

「言うと思うか?」

死神の拳とカメレオンの拳が同時に焼灼を襲うが、炎を噴射し上空に避ける。

「カメレオン! お前に心臓を渡したのはコイツか!?」

「その前にレヴィオスを殺させろ!」

カメレオンはゲノムを包んだ火球に飛びかかり、何度も殴りつけた。

「ダザム!」

「ラブラ! お前は離れてろ!」

「この地帯は危険だ! 早く離れた方が良い!」

「そんなこと言ってもさぁ! レヴィオスとカメレオン持って行きてぇんだけど!?」

「とっとと十三番目の死神(デス・サーティン)使って逃げろ!」

刀を振り、焼灼の炎を払おうとした、その時。

時間が止まった。

その場に居た全員の動き、それどころか、死神の腕も、焼灼の炎も、その揺らめきを静止させていた。

「なんだ…これは!?」

「マズイ… 非常にマズイぞ…! 来る…!」

「来るって…何が来るんだよ!?」

ダザムからラブラの顔は見えなかったが、怯えている事は確かだった。

徐々に昼間のはずの空が霧に覆われ、不気味な駆動音が鳴る。

それは徐々に大きくなり、遠吠えの様な音が混ざる。

その音の正体を、最初に視界に入れたのは、上を向いていたダザムだ。

深い霧で影しか見えないが、とてつもなく巨大なモノである事はわかる。

「クジラ…?」

その影から無数の細い触手が伸び、目の前に迫る。

「止めろっ…!」

しかしいくら暴れても、微塵も動かない。

…が、触手はダザムを避け、その背後のラブラへ伸びていった。

霧も更に深くなり、意識が曇る。

触手が影へ登っていく。

そこに絡め取られていたのは、ラブラと火球。

なんとか十三番目の死神(デス・サーティン)だけでも動かそうとするが、やはり動かない。

影が消え、霧が晴れ、身体も動く様になる。

「はあっ…! 何だったんだ…!? ラブラ…!」

「がああっ!」

火球を持っていくときに篩い落とされたらしいカメレオンがもがいていた。

「キリクジラ… ここは平原魚類共のテリトリーだったワケか…」

一人納得する焼灼に、一人と一匹が襲い掛かる。

「どう言う事だ!?」

「アイツはキリクジラ、地上魚類の一種だ」

地上魚類、その名の通り地上に生息する魚類…というより、海中生物だ。

シンリンザメなどもこれに含まれる。

主食は人間、戦闘力も高く、先程のキリクジラの様に周囲に異常を起こすモノもあるため、中央(セントラル)では特定警戒生物に指定されている。

「ああ、つまり… レヴィオスフェーズとラブラだけ持ってかれたのは、そういうことか」

「ああ、俺は魔人、カメレオンは半分魔人、お前は死神と契約した、だからだろうな、フェーズも落とされて来るんだろうな」

「取り戻さねえのか?」

「無論、ヤツを狩る、手伝え契約者」

「ああ、カメレオン!」

カメレオンは空を見上げ、目玉を回転させていた。

「わかってる… レヴィオスを殺すのは俺様だ… 他のヤツ、まして野生動物に喰われるなんざ俺達が許さねえ!」

焼灼は手足に炎を纏い、上を向いた。

「キリクジラは獲物を取った後、更に上空、雲が出来る層の上へと登る、そこが住処だ」

「霧が晴れて… 雲がこの周辺にだけあるのは、そういう事か」

「ああ、キリクジラの腹の孔から出る水が、霧の正体だ」

「どうすんだ、このまま上に行っても、さっきみたいに動けなくなるぞ」

「俺の炎だ、キリクジラの霧は魔力、俺の火の球の中にいれば影響を受けない」

そう言い、手を上空に翳すと、炎のドームが三人を包む。

「コワチ! お前の目でクジラを探せ」

「コワチ? カメレオンの本名か?」

「フン、とっとと上がれ」

火球が飛び上がり、雲の中へと入っていく。


十八話です。

書く事が無いです。

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