表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒翅ゲノム   作者: 鎌糸
17/27

十七話 戦うより逃げた方がいい場合もある

「キミ達を堕とすまで…ね」

腕に巻きつくヴィングの翼を何回か殴りつけるが、ビクともしない。

それどころか徐々にヴィングの方へ引っ張られている。

「しゃーない… ここに住んでるヤツらには悪いがッ!!」

背から翼を伸ばし、天井に叩きつける。

容易く天井は崩壊し、ゲノムとヴィングを隔てた。

「ま… さすがに脚のは切れねえけど… これで時間は稼げ———」

しかしレヴィオスの見通しは甘かった。

瓦礫の壁は直後、黒い旋風によって破壊された。

「なんだと!?」

その黒い旋風は、ヴィングの右半身に収束し、その変質した姿を顕にした。

右半身は漆黒に尖り、左半身は焼け焦げた、グロテスクな姿だった。

ヴィングの黒翼展開体(ゲノム)… その不気味な影が揺らめく。

「マジかよ…!」

ヴィングの右手から伸びた翼の縄は、未だレヴィオスの右脚を捕らえている。

ヴィングが右腕を引き、レヴィオスを引き寄せる。

「さあ、早く…その中の可愛らしいキミを見せてくれ」

すぐさま右脚を切り落とし、出口へ飛び去る。

「逃すワケ…無いだろう!?」

その後を追い、ヴィングの左半身から肉塊の翼を広げる。

「レヴィ! アイツなんなんスか!?」

「深追いしないでくれ! とにかくアイツを撒く! 全速力で逃げるぞ!!」

翼を四枚に増やし、更に加速させる。

「見えた! 俺が入ってきた場所だ!」

振り向くと、ヴィングはもう既に脚を掴める位置まで迫って来ていた。

「ヤバい! このままじゃ出れてもすぐ追いつかれる!!」

「一旦Uターンしてから出るッス!」

扉のあった穴の横を蹴り、奥へ逆走する。

「なんのつもり?」

「馬鹿正直に追って来たな…!」

身を翻し、再び出口へ飛ぶ。

そして天井、壁に翼を叩きつけ、二回目の崩落を起こした。

「よし! そのまましばらく出てくんな!」

地下街を脱出し、周辺で最も高いビルに着地、様子を伺う。

「なんとか… この街を出るぞ、ヴィングは危険だ」

「…落ち着いたら、話してくれるッスか?」

「ああ、考えておく」

「わかったッス…」

そして、鴉人間はゴーストタウンを飛び去った。


カメレオンとの面会を終え、研究室へ戻るダザムは、階段を登りきった所をラブラに止められていた。

「なんだよ、通せ」

「無理だ、今は団長が来ている、見られたらヤバい」

「別に良いだろ」

「良くない!」

「ラブラ! 何をしている?」

ラブラの背後、その奥から聞こえる声は、確かに団長、ジェイルのモノだった。

「誰か、居るな」

「いえ…? ここは私以外に入る事はできません…」

「嘘をつくな、叩っ斬るぞ?ラブラ」

「私が嘘をつくとでも?」

「これ以上、やめてくれないか、お前の様な優秀な人材を失いたくない」

ジェイルの鋒が、ラブラの首元に迫る。

「…!」

「背後を、見せろ」

「フフ…!」

直後、ラブラは階段へ飛び、ダザムと共に地下へ転がり込んだ。

「ラブラァ!」

ジェイルもそれを追い、階段を降りていった。

「ラブラ! 何があったんだ!」

「キミが暴れたからだよ! その上最悪のタイミングで戻ってくるなんて!」

「お前が強制終了したからだろうが!」

「元はと言えばキミがカメレオンのチューブを間接的に抜いたせいだろう!?」

「黙れうるさい!」

二人の論争は、カメレオンの怒号によって中断された。

「なんだ急に戻ってきて! もう一日経ったのか!?」

「経ってねーよ! 黙れ爬虫類!」

「違う! そもそも俺様はカメレオンじゃねえんだよ!」

「だったらなんだよ! ああ!?」

「フォビュランオオヌマドラゴンだ!」

「そうだったのか…」

一人納得したラブラが、水槽を除き、カメレオンの身体を観察する。

「確かに… ぱっと見はセントラルカメレオンだが… 顎の下に独特の黄色いラインがある…」

更に画面を操作し、水槽内にカメラを投入した。

「この尾も… ゼンマイ尾はカメレオンの大きな特徴だが… フォビュランオオヌマドラゴンの尾も、似たようなゼンマイ型だ…」

「そ…そうなのか?」

話に置いていたかれたダザムの言葉に、ラブラが振り向き頷く。

「フォビュランドラゴンの尾はとても小さいからね…」

「ようやく理解者が現れた… 俺様のこの姿がカメレオンでないとわかってくれたのはお前が初めてだ…」

「っつーか! こんな事してる場合じゃねえだろ!? 団長が来てる! このままじゃ全員切り身だ!」

ダザムがカメレオンの水槽を叩き、ヒビを入れる。

「早く決めろ! レヴィオスを殺させる代わりに、俺の質問に答える… 乗るか乗らないか!」

カメレオンは勢いに押され、口籠った。

「乗らなきゃテメーを置いていく! そうなりゃテメーだけぶった斬られるぞ! 爬虫… じゃなくて両生類!」

カメレオンはしばらく困惑していたが。

「早く来い! 死にてえのか!?」

とダザムに押され。

「わかった! 乗るから出せ!」

ついに折れた。

「ラブラ! カメレオンを出せ!」

「だからカメレオンでは———」

「ラァブラァ! やっぱり隠していたなァ!」

「早くしろって!」

「無理だ! コントロール機器は研究室だ!」

「マジかよ… 仕方ない! 十三番目の死神(デス・サーティン)!」

ダザムが水槽のヒビに刀を突き刺し、死神の腕で破壊する。

液体とガラス片が飛び散り、カメレオンが咆哮を上げる。

それに応える様に、チューブが次々と抜ける。

それと同時、倒れた格子扉を、鋼のブーツが踏む。

「ラブラ…残念だよ、団長である私を裏切るという事は、騎士団を裏切るという事…」

そして鋒を三人… 二人と一匹へ向ける。

「ダザム…やはりお前は… 何か事情があると思っていたが…」

剣を構え、踏み込んだ。

「ッ! 十三番目の死神(デス・サーティン)! 防げ!」

ダザムが前に出、死神の腕を二重に重ねる。

なんとかジェイルの斬撃を防いだが、衝撃で背後のガラス筒に叩きつけられる。

すかさず二度目の斬撃が放たれ、カメレオンの右腕を切り落とした。

「がああああっ!?」

悶絶するカメレオン、その後ろに隠れるラブラが次の目標である事は明白だ。

「ラブラァ!」

十三番目の死神(デス・サーティン)! 逃がせ!」

暗雲が三つの影を包み込んだ。

直後、三度目の斬撃が放たれ、暗雲を切り裂いたが、二人と一匹は消えていた。

「ラブラ… ラブラ〜!」

ジェイルはその場にうつ伏せになり、床を何度か殴った。

「なんで行っちゃうんだよ〜置いてかないでよ〜…」

しばらく喚き、落ち着いたのか無表情で立ち上がり、溜息を吐いて静かにその場を去った。

その甲冑の下から、箱入りの葉が落ちる。

「あ〜… やばいやばい落とした… あぶない」

ジェイルは揺れながらそれを拾い、大切に握りしめながら階段を登っていった。

十七話です。

多分中盤です、きっと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ