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昼顔  作者: 平岡祐
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プロローグ 〜麻衣〜

「・・・捨てられた私・・・。」


私が七歳の頃、私を置いて両親はどこかにいなくなってしまった。

「私は・・・泣けば良かったのだろうか・・・。」


不思議と涙は出なかった。なぜなら私はほとんど両親に親らしい事をしてもらった記憶が私には無かった。

私はなぜ両親がいなくなった理由が、七才の私が知るよしもなかった。


「・・・でも、いまならわかる・・・。伊達にそれから六年も年を重ねてはいないから。」


私は実は母親の不倫相手との子供だったのだ。

生まれてから七年、それがついにばれ、私の本当の父は、裁判を恐れどこかに失踪した。どうやら他にも子供がいたそうだ。

私の母は、その失踪した本当の父親を探しに家を飛び出したそうだ。


残された私と父じゃない父。


「・・・自分の子じゃない私をかわいいと思える訳ない。」


父は事の詳細を書いた手紙を残し、父もまた、出ていってしまった。


「結局の所、私は三人の人から捨てられたのだ。」


路頭に迷う私を拾ってくれたのは施設の母親役の橘弘子(たちばなひろこ)さんだ。


施設には私の他にも子供が数人いる。

みんな優しかった。嬉しかった。

やっと私を必要としてくれる人達が現れたのだ。


「・・・でも、春がきて、夏がきて、季節をを幾つか重ねた時、私より年上ばかりの人達はみな自立していった。」


今は、私と弘子さんだけだ。他にも人が現れなかった。

まぁ、施設には人が来ない方が良いのだ。


「・・・そして、弘子さんは結婚した。」


相手は年上のサラリーマン。子供が二人。

結婚式の時の弘子さんの顔は忘れられない。

「・・・施設に、居ずらかった。」

でも中学生の私が自立するのは無理だ。

「・・・だから私はいつの日からか、よく公園のブランコに揺られるようになった。」


夕方の公園、影の伸びた鉄棒、迎えにくる親たち。


今日もまた、ブランコに揺られていた。


そして私は出会う。


夕闇のブランコ。いつもは影が一つ。だけど今日は影が二つ。

今日もまた影が夕闇に消されようとしていた。

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