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4話

4話



 その後、男たちは俺が準備を終えて程なく目を覚ました。


 準備と言っても、大したものではない。ただ二人を下が湖のそれほど高くない崖の上に連れてきて、身体を大きな岩と鎖で繋いでやっただけのことだ。


「っあ〝……ぅ……」


「よく眠れたか……って、気絶してただけだったな。まあとりあえず、ちゃんと目を覚ましてくれてよかった」


 男たちは足と目の激痛に悶えていたが、縄で拘束されていてはどうすることもできない。何も見えない真っ暗な視界の中で、ただ痛みだけが二人を襲う。


「そのまま死なれたら俺の努力が無駄になるところだったからな。これから、じっくりと殺らせてもらうぞ」


 ビクッ、と俺の言葉に二人の身体が震える。そしてそのうちの一人が、俺に命乞いを始めた。


「だ、のむ……助、げでぐれ……」


 命だけは、命だけはというお決まりの台詞。この先視界と歩く力を失った人生を、そこまで生きていたいのだろうか。


 まあどちらにせよ助ける気などさらさら無い。ここからは覆らない現実をしっかりと恐怖と共に植え付け、処刑する時間だ。


「命だけはとらないでくれ、か。そうやって許しを乞う魔族たちを、お前らは何体殺してきた?」


 コツ、コツ、コツ。足音を立てながらゆっくりと、震える二人の元に近づいていく。


「無抵抗な弱者をいたぶるのは楽しかったか? 楽しかったよな? ほら、どうなんだよ。正直に答えれば、助けてもらえるかもしれないぞ?」


 崖の淵で男の身体を足蹴にして揺らしながら、問いかける。


「う〝、ぁ……」


「ん? なんだハッキリと言えよ」


 俺が少し口調を強めてそう言うと、一人は恐怖のあまり失禁して完全に言葉を失った。


 もうさっさと落としてしまおうかなんて思ったが、グッと我慢。そうしていると、もう一人がゆっくりと口を開いた。


「ごべん、なざぃ……楽、じんでまじだ……」


 ひっぐ、びっぐと色んな体液を汚く撒き散らしながら、男はそう答えて泣きじゃくる。


 恐らく目が見えていなくとも、自分が死の淵にいることは理解できているのだろう。もういつ殺されるのかと、不安で不安で仕方ないらしい。


「そうか。正直に言ってくれて嬉しいよ」


 確認する必要など無いのだが、コイツらを殺すたびに改めて再認識できる。


 やはり勇者などただの害虫だ。俺たち魔族の生活を脅かし、殺すことを楽しむ。


 他人を傷つけることでしか愉悦観に浸れない、正真正銘のクズの集まりであると。


「本当に、お前たちは殺しやすいな」


「う〝あ〝……あ〝あ〝ぐっ……! う〝ぅぅ!!」


 もはやまともに抵抗できない二人の口元に布を巻き付け、声を奪う。これから行う処刑は、二人に叫ばれては失敗の確率が上がってしまうものだからだ。


「さ、行ってこい!」


「「ん〝う〝ぅぅぅっ!?」」


 俺は最後にそう一声をかけると、二人を崖から突き落とした。


 だが声にならない小さな悲鳴と共に落下したのは、たったの数秒。湖に身体が浸かろうかという一歩手前で、二人は岩に繋がれた鎖によって宙吊りとなった。


「ふぅっ……ふぅぅ……っ!!」


「そんなに焦るなよ。大丈夫。あと三時間くらいは生きてられるぞ」


 処刑はこれで終わりだ。ちゃんと死ぬのかと思うかもしれないが、全くもって問題ない。


 これは、俺が暮らしている人間の村の本屋で手に入れた、″人間を苦しませて殺すための″あれこれが書かれている本の通りに行った処刑だ。


 なんでも、コイツらはずっと頭を下に向けた状態で宙吊りにされているとやがて頭には血液が集中し始め、最終的には血管の破裂や脳出血を生む。


 それだけではなく、逆さになった状態では臓器が肺に圧力をかけることによって息をするのが困難になることでの窒息も発生させることができるらしい。


 ジワジワと長い時間をかけて身体が異常を起こしていくのを感じながら死ぬというのは、これまた相当なものだろう。


「これから生き絶えるまでの時間、お前らは懺悔を繰り返せ! 自分たちが命を奪ってきた者たち、全員にだ!!」


 声を荒げてはるか下の二人にそう叫ぶが、どうせそんなことはしないだろう。


 ならばせめて、このゴミどもがイカれながら醜く。ゆっくりと死んでいくのをここから見学していくとしようじゃないか。



 コイツらが、無残な姿で殺した奴らを笑いながら見下していた、″あの時″のように。

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