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30話

30話



 結局、その日は一日中能力の実験をし続けた。その中で分かったことが、幾つかある。


 まず、ルナに擬態の能力が加わっても、俺がやったようにクリスタルスライムなどに擬態することは出来ない。


 恐らくは、ルナが触れた事が無いからだろう。同様に、俺が過去に殺した勇者達にも擬態する事は出来なかった。


 ルナが擬態に成功したのは、俺の姿になる時のみ。きっと、擬態を手に入れた今この時より後に触れたものにしか効果が無いということだろう。魔力を得る前に触れたものには、意味がないと言う事だ。


 まあ、仕方ないといえば仕方ない。これに関しては、これからなれるものを増やしていけばいい。


 次に、擬態によって相手の能力を使うためには、あくまでその箇所に相手の姿を擬態させておく必要があるということだ。


 つまり、俺がルナの付与を右手で触れたものに使おうと思った場合、その間は、右手を擬態でルナのものにして、付与を終わらせてから右手のみを元に戻すという工程が必要になるのだ。こればかりは、慣れるしか無い。


 そして最後の一つ。これは、一番大きな弱点となりうる情報だ。


 それは、俺達が50メートル以上離れてしまうと、ルナが俺の擬態を使えなくなってしまうことだ。恐らくこれは、付与の有効範囲の問題だろう。擬態の母体である俺は気にする必要はないが、ルナは別だ。


 まあ、戦闘の途中でそんなに離れる事はないと思うので気にすることでもないかもしれないが、一応頭に入れておくべきだろう。


 この1日で分かったのは、そんなところだ。完璧に熟知したとは言えないし、まだ未開拓の部分はあるかもしれないが、ひとまずは十分な知識量だろう。


 一旦実験を中断し、時計を見る。時刻は、午後の五時を少し過ぎていた。朝食を食べ終えてからずっと続けていたため、もう十時間以上はやっていた事になる。


 ぐぅぅぅ〜


 横で、ルナの腹が大きく鳴った。昼飯も食べずにずっと続けていたから、腹が減っているのだろう。


「っっ!」


 思わず、激しく赤面するルナ。恥ずかしそうに腹を押さえ、必死に音を聞こえないようにしようとしているその姿に、俺は少し笑ってしまった。


「腹、減ったのか?」


「もう、笑わないでくださいよぅ……」


 まあ、そりゃ普通はそうなって当然だよな。流石に没頭しすぎたか。


「よし。帰るか」


「……はい」


 さっさと用意をし、家に向かい歩き始めた。途中でもルナは何回か腹を鳴らしていたが、二回目からは気付かないフリをした。


 そして家に着いた途端、ルナはすぐにエプロンを付けてキッチンへと走って行った。


「ほんと、腹減ってたんだな」


 だが俺も、言われてみれば微かに腹が減っている。


 ルナの作る飯が美味いからだろうか。これまでは丸一日何も食べないなんてこともあったというのに、今ではルナと食事をすることを楽しんでいる自分がいる。


(まあ、気長に待たせてもらうとするかな)



 大急ぎで飯の支度をするルナの後ろ姿を眺めながら、俺は束の間の幸せを噛み締めたのだった。

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