表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/52

2話

2話



 早朝目覚めた俺はすぐに村を出て、勇者たちが魔族を狩りに行っているであろう森の中へと向かうことにした。


「でやぁぁぁぁ!!」


 人間の叫び声が聞こえる。恐らく、魔族を襲っているのだろう。急いで助けに向かわねば。きっと人間の姿をした今の俺なら、不意をついてすぐに無力化できるはずだ。


 森の中を全力疾走し、声のしたほうへと急ぐ。だが、俺が着いた時には既に手遅れだった。


「っ……!」


 そこでは既にゴブリンの群れが皆殺しにされ、あたり一面に血に塗れた死体がいくつも転がっていた。


 無残に斬殺された死体たちには、首や腕が欠損しているものもいくつも見れらた。


 もう少し、あとほんのちょっとでも俺が早く駆けつけていれば。まさか、まだ薄暗いこんな時間に勇者が活動を始めるなんて、思いもしなかった。


「すまない、本当に……」


 痛めつけられる胸を押さえ、ゴブリン達を救えなかった自分を恥じながら、俺はせめてもの贖罪にとこいつらの仇を探すことにした。声を聞いてからそう時間は経っていないから、まだすぐ近くにいるはずだ。


 と、辺りを探すこと数分。俺は、ゴブリン達の返り血で真っ赤な鎧に身を包んだ3人組を発見した。


 ほぼ間違いなく、あいつらがゴブリン達の仇だろう。あんなに残虐な殺し方をしたのだ。ゴブリン達はきっと痛かったろう。辛かったろう。殺すだけでは生温い。四肢を切り取った後、木へ貼りつけ痛めつけてから殺してやる。


(仇は、とるからな……)


 俺は一旦身を潜め、勇者たちが隙を見せるのを待ちながらしばらく後をつけた。すると、三人のうちの一人の女が水浴びをしたいと言い出した。当然だろう。全身が真っ赤になるような返り血を浴びているのだから、女がそれに耐えられるはずがない。


 これは絶好のチャンスだ。残りの男二人を警戒する必要もなく、装備を外した無防備なヤツを殺ることができる。


 当然、この処刑に男か女かなどは関係ない。容赦なく殺させてもらう。


 そのまま近くの湖にたどり着き、男二人を別の場所へ退けた女勇者は、鎧を脱ぎ裸で水浴びを始めた。


 近くの茂みで身を隠し、確実に殺れる隙を狙う。声を出されて残りの男を呼ばれては面倒だから、一度眠らせて場所を移動してからじっくりと殺ろう。


 そして女が顔を洗うために水面に顔をつけた瞬間、俺は背後から飛びかかった。


 ハンカチに睡眠薬を入れ、それを女の口に当てて飲ませる。即効性のあるもののため、女はすぐに眠りへと落ちていった。まだ残りの男勇者は気付いていなかったため、俺はそのままその女を抱えて近くの洞窟へと移動する。


「ふぅ、うまくいったな」


 さて、この女どうやって殺してくれよう。俺の同胞達をあれだけの数殺したのだ。かなりキツい殺し方をしなければ、殺されたゴブリンたちが浮かばれない。そして何より、俺の気が済まない。


 そうやってぐっすりと眠っている女を縄で縛りながら処刑方法考えていると、洞窟の奥から物音がした。


(誰かいるのか……)


 一般人がこんなところにいるはずがない。いるなら、ここに魔族を狩りにきた魔族、もしくはここに住んでいる魔族かのどちらかだ。


 もし、出てきたのが勇者ならば……この女と一緒に、地獄の底に叩き落としてやる。


 そう企みながらダガーを構えると、奥から出てきたのはゴブリン達の王である「ゴブリンチャンピオン」だった。


 初めてみるチャンピオンの図体のデカさに一瞬驚きはしたが、これが同じ種族であり仲間だというのだから、むしろ心強い。同じ魔族だと気付いてもらうため、俺は急いで擬態を解いて話しかけた。


「紛らわしくてすまない。俺は魔族だ」


 骨格は少し細身だった白身のただの人間姿から、魔人族特有の赤眼へ。細かった四肢は少し膨張し、元の筋肉を取り戻していく。少しすると、ゴブリンチャンピオンは意外にも俺のことをすぐに受け入れた。


 何故この女を連れているのかなどを話していると、殺されたのがこいつの部下のゴブリン達であることが分かった。どうやらこいつは、いつまでも帰ってこない部下を心配して探しに行こうとしていたところだったらしい。


 チャンピオンは酷く怒り、涙を流していた。当然だ。この女と残りの二人の勇者に、自分の部下をおよそ半分も殺されてしまったのだから。


 その姿を見て、俺の考えはすぐに決まった。この女の処刑はこいつらに任せよう。きっと、俺が殺るよりもその方がいいはずだ。


 そう思い、俺は女をチャンピオンに差し出した。


 するとその瞬間、女が目を覚ます。一瞬周りを見渡して自分の置かれている状況をすぐに理解した女は、全力で叫び始めた。


「いやぁぁぁぁぁ!! 助けて!! お願い!! 命だけはっ!! 命だけは助けて!! なんでもするから!!!」


 チャンピオンに向かって、女はそう命乞いを繰り返した。だが、繰り返すたびにチャンピオンの顔色は怒りに染まっていく。どうやら、女をどうするかは決めたらしい。


「ツレテ、イケ」


 そうチャンピオンが言うと、後ろで控えていたゴブリン達が女を洞窟の奥へと連れて行った。


 女は連れて行かれる間もずっと命乞いを止めなかったが、うるさい声に耐えかねたゴブリンが頭を石で殴り付けてからは言葉を発しなくなった。その頭からは血が流れて女は意識を失ったようだが、恐らく殺してはいないだろう。


 だが、これであの女の「命だけは助けて欲しい」という願いは叶ったわけだ。きっと文句は言うまい。



……たとえこの後、命以外の全てが奪われたとしても。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いい感じにグロくて最高! もっとエグい処刑方法が書かれそうで期待してる [気になる点] もしこうだと決めているなら無視していいけど……「俺」の姿とかの描写がちょっと欲しいかも。 [一言] …
2021/04/17 08:31 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ