26話
26話
「おはようございます!!」
朝目覚め、自分の部屋を出るとルナが朝食を作っていた。昨日彼女の前で恥ずかしくも大泣きしてしまった手前、少し気恥ずかしい。
「もう少し待って下さいね。すぐ出来ますから!」
エプロンをつけて笑顔で朝食を作る彼女を、不覚にも可愛いと思ってしまった。昨日の件もあってか、余計に意識してしまう。
椅子に座りそんな事を考えていると、すぐに朝食が机に並べられた。
「頂きます!」
「い、頂きます」
美味しい。店で売っている料理とはまた違う、まるで実家で母から出された物のような、そんな味。そういえばあの後から、ちゃんと味を意識して飯を食べる機会はなかったな。
「どうですか?ロイ様」
「ああ。凄く美味い」
ルナの顔が、ぱあっ、と明るくなった。本当に表情豊かな奴だなと、少し感心してしまう。俺には、簡単には出来ないことだ。
「ロイ様。そういえば、今日は何かご予定はありますか?」
朝食を食べながら、ルナがそう聞いてきた。俺は決めていた予定を、そのまま伝える。
「今日は、レオパルドを……殺しに行く」
そう言うと、ルナはまた表情を変えた。今度は、暗い。
「お一人で、ですか?」
きっと、そう聞いてきたということは、着いてくるつもりなのだろう。その気持ち自体はとても嬉しい。でも、彼女を危険な事に巻き込みたくない。今まで奴隷として使役され続け、体も弱って細々としている彼女を連れ行くのは、あまりにリスクが高過ぎる。
「ああ」
その返事を聞いてルナが喜ばないことを分かっていながらも、そう答えた。だが、彼女の表情は何故か、暗くはない。いや、笑顔ではないのだが、なんというか、「決意」をしたかのような、そんな顔。
「ロイ様? 私は、あなたが思っているほど弱くはありませんよ?」
そう言って、彼女は提案する。
「ロイ様。1日だけ、いいえ。数時間だけ待って下さいませんか? 今が五時ですから、そうですね。一時間後の六時に私とお手合わせ下さい。そこで必ず、力になれると証明して見せます」
すごい自信だな。もしかしたら、彼女は相当な実力の持ち主なのか? あの細い体に加えて奴隷として捕らえられていた長い時間がある彼女に、本当にそんな実力があるとはとても思えないが……。
だが、もしルナと隣で肩を並べて戦えたら。そんなふうに思っている自分がいるのも事実だ。
「……分かった。場所は森の中で。勝負の内容は、そうだな。武器は木刀で、先にそれを相手の体に当てた方の勝ちでどうだ?」
ルナは、満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!!」
そしてその後あっという間に一時間という短い時は過ぎ、俺達は二人で、近隣の森の中へと移動した。