20話
20話
無駄に長かった闘技会も、いよいよ大詰め。
参加者は残り八人まで削られ、これから準々決勝が始まろうとしていた。
抽選の結果、俺はルカと戦うことに。いずれは当たるだろうと思っていたから別に構わないが、やはり他の奴に比べると些か面倒な相手になるだろう。
(さて、一戦目はツバキか……)
俺は二戦目で、観客席より更に近い選手の待機場所から試合を眺められる。ルカと当たったことはあまり良いとは思えないが、これに関しては好都合だ。
ツバキと剣を交えるのは、数少ない女性参加者にしてここまで生き残ってきた実力者、シズク。
ツバキにもルカにも力が及ぶとは言い難いが、よく鍛錬された「型」のような剣筋には、中々に可能性を感じる。
『では準々決勝第一戦目、開始ですっ!!』
戦いの火蓋が切って落とされた瞬間、先に動いたのはツバキ。神速の如き突きが、シズクを襲う。
だが────
『流水、円斬ッッ!!』
その突きを木刀の剣先で受け流したシズクは、すかさずその勢いを利用して反転からの反撃。避けられはしたものの、ツバキが少し距離を取ったことにより瞬殺が免れた。
これまで全ての試合を一瞬で終わらせてきたツバキが初めてそのような行動をしたことで、会場は動揺と、そして歓喜に包まれた。
中にはシズクを応援し、本当に勝つのではと騒ぎ出す者もいる始末。
(コイツら、馬鹿なのか……?)
今のわずかな反撃だけでは、俺から見れば逆転の目があるとはとても思えない。
ツバキはこれまでの試合を″全く同じ動き″で終わらせ、一撃で沈めていた。
つまり、当然今回も同じようなことをすると安易に想像できるわけだ。そんな分かりきっている攻撃を受け流すのはそれまで難しくはない。
むしろ一挙手一投足同じ動きだけをしてナメた試合展開をしていたツバキに対しての完璧に不意をついたあの反撃。あれが当てられなかった時点でもう、アイツに勝ち目は……
『ッ、ァ────』
と、その瞬間。二人の距離はゼロまで縮まり、そしてシズクの身体はあっという間に場外へと吹き飛んでいた。
俺もギリギリ目で終えるか終えないかのその太刀筋は、木刀全体でシズクの腹を抉り、受け身を取る間も無くその攻撃を喰らった本人は一瞬で失神。おそらく、何も見えることなくその意識は奪われたことだろう。
(やはり、次元が違うか……)
結局この試合でも、ツバキの手の内はほとんど知ることができなかった。
が、勝利のためのプロセスは確かに、俺の中に確立されつつあったのもまた事実。まあいずれにせよ今は、ルカとの戦いに集中するとしよう。




