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17話

17話



「続いて、五十戦目です!対戦するのは前回大会八位を収めているモーガン選手と、今回初参加、実力未知数のクレア選手です!では、両者構えてください!」


 実況者の掛け声と共に、俺はモーガンと名乗るコワモテの男を前に木刀を構えた。ちなみにクレアというのは、どうしても名前登録が必要との事だったので適当につけた名前だ。特に意味はない。


「おいおい、初戦からこんなヒョロガキが相手かよ。まあ手加減はしねえからせいぜい死なねえように頑張るんだな」


 そう言い放ち、モーガンはブンブンと鈍い空を切る音を木刀で鳴らしながら、下品な高笑いを上げた。


 確かに、この姿の俺はただの人間だ。魔力など使えば魔族だと一発でバレるこら使うことは出来ないし、元の身体より筋肉量が落ちているため運動能力も低下している。


 だが────


「それでは第五十戦目、開始です!!」


 実況者の合図と共に、モーガンはその手に握られた木刀を俺の頭部へと向け、全力で振り抜いた。


「死ねェェェッッ!!!」


 とても普通の人間相手に向けるような攻撃ではない全力の太刀筋に思わずため息を吐きそうになりながら、俺は難なくそれを寸前の所で躱す。


「おい、どうした? ヒョロガキ相手に随分と本気じゃないか」


「テ、メェッッ!!」


 ブンブンとまるで馬鹿の一つ覚えのような単純すぎるパワー任せの攻撃を繰り返すモーガン。


 勿論、それらが俺に当たることは万に一つも無い。


 確かに自分より体格の大きい魔族なんかが相手ならばこれでも良いのかもしれないが、一対一の剣の果たし合いで行う攻撃手段として正解であるとはとても思えない。


 やはり、こういう″低脳の脳筋″が一番得意だ。


「なん、でだッ!! 当たらねぇ!!!」


「当てようという気概が感じられないけどな。お前如きが八位とか、何かの間違いじゃないのか?」


「ッッッ!!!」


 俺の挑発に釣られて、モーガンは踏み込む足をどんどん前へと推し進めていく。


 そして俺たちの間合いは縮まっていき、やがて俺は攻撃を避け続ける中で、モーガンの眼前へと身体を寄せた。


「もういいよお前。そろそろ疲れたろ」


「ッ……アァァッッ!!!」


 急な俺の接近に身体をのけ反らせながらも渾身の一撃とばかりに放たれた一撃は、無慈悲にも空を切る。

 

 そして伸ばし切った右腕を掴まれ重心を完全に崩されると、そのままモーガンは背中から床に倒れ伏した。


「降参しろ。お前じゃ俺には勝てない」


 利き腕を抑えられ、俺に馬乗りにされる形で屈辱的な心情に顔を歪めるモーガン。


 やがて諦めるかのように、その右腕からは木刀が手放され力が抜けた。


「降さ……なんてナァ!! これで、終わ────」


「りだな。確かに」


 モーガンが降参のフリをしながらも汚らしく左腕で足掻こうとしたその瞬間、俺はその鼻っ柱を拳で打ち、意識を奪った。


「そんな猿芝居で騙せると、本気で思ってたのか?」


 既に意識の無いモーガンに呟くようにそう語りかけるが、当然返事は返ってはこない。


 これまで何度も″本気で諦めた奴の眼″を見てきたのだ。今更こんなイキイキとした眼で降参などと言われても、信じる訳がない。


「しょ、勝者は……クレア選手ッッ!! これはとんでもないダークホースが現れたァァ!!!!」



 勝利を告げる歓声と熱気に包まれながら、こうして俺の一回戦は終了したのだった。

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