15話
15話
準備を整え、今日も森へ向かおうと宿を出る。
すると村中を、何人かの人間が何やら紙を撒きながら練り歩いていた。
「今日は第二回闘技会の日ですっ!! 参加者の人たちは闘技場まで!!」
闘技会? 聞いたことのない大会だが、名前から察するに腕試し大会か何かだろうか。まあどうせ出ないのだから俺には関係ない。さっさと森に……
「今回の優勝者には、第一回の優勝商品に加えて主催者のレオパルド様より獣人族の女奴隷が贈られます!!」
「なっ……!?」
獣人族の奴隷……だと?
獣人族というのは、主に獣の身体的特徴をその身体に宿して生まれた魔族のことだ。
遺伝などにもよってその形は様々だが、そのほとんどは耳や尻尾が少し違うだけの者たち。それ以外の体の部位は、姿だけで言えばほとんど人間に近い。
だが、魔族は魔族。当然勇者たちからの抹殺対象でもあるし、何より姿が人間に近いことから生捕にされて奴隷になるケースが多い。
それに加えて、女となれば……
「これは、放ってはおけないな」
近くにある窓から、外を眺める。すると、何十人もの勇者達が談笑しながら、同じ方向を向いて歩いて行くのが見えた。どうもあの様子だと、ほぼ全ての勇者が参加しに行っているように見える。勇者がいないなら、森に出る必要もない。
俺もその闘技会とやらに参加して、その女を救わなければ。
決意が固まると動き出しは早いもので、気づけば俺は人間の姿に擬態して、勇者たちの後を追っていた。
◇◆◇◆
既に闘技場の周りでは人溜りが出来ており、そのほとんどが勇者達の姿だった。きっとその中から一番強い者を決めるとか、そういった類の大会なのだろう。
やはり人が多く、勇者達だけではなく力に自信のある一般人も参加している感じだったため、受付だけでもそれなりに時間を有した。体感で10分ほどは経過していた気がする。
(コイツらの中に紛れ込むなんて、最悪の気分だ……)
俺はかなり最後の方で、七十二番目の受付。この感じだと、恐らく参加人数は百人程だろう。この中の八割以上は勇者だった為、この先少なくともこのくらいの人数を殺して回らなければならないと思うと、少々気が重くなる。だがまあ、とりあえずは目の前の目標に集中だ。
参加希望者全員の受付が終わり、役所の近くの建物の中で始まった開会式は、主催者の挨拶から始まった。俺たちの前に出てきたそいつは、いかにも金持ち、といった感じの見た目。指輪やネックレスなどがじゃらじゃらしていて、この前の貴族を思い出して不快になった。正直奴隷を持っている人間な時点でそんな気はしていたが。
「皆のもの、今日は集まってくれてありがとう。私はこの大会の主催者である、レオパルドだ。今日は皆の熱い試合が見られる事を期待している。ぜひ優勝を目指して頑張ってくれ」
周りの者達が歓声で熱狂する中、主催者の付き人のようなもの達が、優勝商品をステージの上に並べていった。テーブルの上には金が入っていそうなでかい袋、そしてその横には真っ黒な布を被せられた檻のような形をした物が並べられる。
「優勝したものには前回同様金貨3000枚、そして今回の目玉であるこの亜人奴隷を贈呈する!」
そう言ってレオパルドは、商品に被せられていた布を一気に引っ張った。
「っっ……!!」
中には想像通り檻があり、その中には手錠と首輪をされた女の獣人が一人、入れられていた。
歳は俺と変わらないくらいか。白く長い髪をしていてとても整った容姿をしていたが、左腕に少し傷がある。着ている服は局部を隠せるか隠せないかギリギリのぼろ臭い物で、その細身な身体は、怯えた様子で震えていた。
裸同然のその姿に、会場は一気に湧き上がった。
(くそ……)
すぐに助け出したかったが、これだけの実力者が集まっている中であいつを連れながら逃げ切るのは不可能だろう。大人しく、この大会で優勝するしかない。
(すまない……もう少しだけ、耐えてくれ……)
周りが歓喜し沸き立っている中でただ一人、俺だけが静かに、怒りでその拳を強く握っていた。