12話
12話
時は数時間経過し、再び同じ地下室。俺はその中で牢にぶち込んだ者たちが目覚めるのを、待ち続けていた。
「そろそろ、か……」
夜明けが近づき、おそらく使用人ならばそろそろ活動を始める時間。
と、そんなことを考えていると本当にニ、三人の″鎖に繋がれた使用人たち″は目を覚ました。
「なに、これっ!?」
ガチャガチャと手足に繋がれた枷が金属音を鳴らし、やがて地下中に反響したその音で全員が目を覚ましていく。
そしてあっという間に全員が騒ぎ始め、少し落ち着き始めるとその視線は全て牢の外にいる俺へと向かう。
「やっと静かになったな。うるさすぎてもう帰ろうかと思ったぞ」
俺がそう告げると、再び次は一箇所から、暴れる音が響いた。
醜く膨張した腹に、よく肉と脂の乗った顔。曰く、ソイツはここの城主だ。
「ふざ、けるなよォ!? さっさとここから出さんか!! 魔族の分際でワシに逆らったらどうなるか……ッッ!!」
「どうなるんだ? 教えてくれよ。その状態で俺をどうにかできるとでも?」
「ッッ……!」
怒りをあらわにしながらも、現状に抗うことのできない肉塊はそのまま口をつぐんだ。全く、本当に手間を掛けさせてくれる。
「まあ分かるぞ。こんな薄汚い牢屋の中で拘束されるなんて嫌だよな。……まあ、これはお前らがオーガにし続けてきたことだけどな」
既にオーガたちは逃した。今コイツらを拘束している鎖は、紛れもなくオーガに使われていたものだ。
暗く自由もない劣悪な環境を今、コイツらには追体験してもらっている。
「このままお前たちをここに放っておけば、やがて飢えて苦しみながら全員死ぬことになるだろう。でも、俺はそんなことは────」
「ふざ、けんなッッ!!」
俺の言葉を遮るように、一人の女がそう叫んだ。やれやれと頭を掻きながらその方向を向くと、そこには我の強そうな年長の女がいた。
「何か文句でも?」
「ええ、文句大ありよ!! 私はオーガに何もしていない!! 確かに城主様に逆らえなくて見て見ぬ振りをしていたのは事実だわ!! でも、だからってこんなことまでしなくてもいいじゃない!!!」
必死に怒鳴りつけるように叫びながら、女は主張を繰り返す。まあ後に説明するつもりだったのだが、この際だ。ハッキリと伝えておこう。
「そうだな。お前が本当に何もしていないなら、ここから出してやっても良かったかもな」
「なら────!」
「おい、メイド長様。そこからここに繋がれてる人間を全員見てみろ。一人だけ、抜け落ちてないか?」
「えっ……」
キョロキョロと周りの人間一人一人と目を合わせていく女はやがて顔を真っ青にし、呟くように言った。
「アリス……あのクソガキ、まさか……ッ!」
「ああ。ソイツが俺にオーガの救出を手引きし、そして同時にお前らを裏切った張本人だ。だけどな、今はそんなことはどうでもいいんだよ」
コイツらはまだ、何故アリスだけが助かったかをちゃんと理解できていない。決して俺に協力をしたからなんて理由で、アイツを助けたわけではないのだ。
「俺は一度、オーガたちにお前らの″選別″をさせたんだよ。誰を生かして誰を殺すか、ってな。その結果生かす側に選んでもらえたのはアリス一人だった。お前らは全員、即決でこっち側に選ばれてたよ」
そう告げると、もう一度全員が騒ぎ始めた。最後の足掻きなのだろうが、まだそれを使うには早い。ここからは、俺の時間だ。
「だが、そうだな。この結果に納得のいかない奴は多いだろう。だから、俺から特別にチャンスをやる」
ここからが、本当の処刑だ。何もせずそのまま飢え死にさせるだけではつまらない。あと、もう一捻り。
「ゲームをしようか。お前らの、生き残りをかけて」