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9.新天地を探して

「これでよし。もうボクの研究が悪用される心配はないね。助手君もそろそろダンジョンを回収しておいた方がいいのではないかな?」

「ん? ああ、そうだな」


 リルタに言われて、俺は腕輪を装備した右手を、手のひらが上に向くよう前に出す。


「戻れ、ノアの迷宮(ノアズダンジョン)


 俺が命令すると、手のひらに白い正立方体のキューブが出現する。

 これがダンジョンの核であり、小さく収納した形態だ。

 第百階層まであった巨大なダンジョンが、手のひらに収まるほど小さくなるなんて、未だに信じられない。

 キューブをを見つめていると、同じようにじーっとキューブを見ていたリルタが言う。

 

「このダンジョンの製作者はおそらく、当時から相当な技術力を持っていたのだろうね。実に興味深いよ」

「ああ、凄いよな」


 ダンジョン製作者の名前は『ノア』。

 彼なのか、彼女のなのかわからないけど、一先ず彼と呼ぶことにしよう。

 今から五千年前に生きた人類。

 最深部である第百階層にあった屋敷は、彼が余生を過ごした屋敷だった。

 書斎にあった本の一部を解読することで、彼の名前とダンジョンの性質や構造はわかった。

 ただ、彼自身のことはほとんど記されていなかった。

 なぜダンジョンを作ったのか。

 その理由もわからない。

 これだけ大きな物を現代まで残した人だ。

 きっと偉大で、崇高な目的があったのだろうとは思う。


「いつか知りたいな。ノアって人が、何のためにダンジョンを作ったのか」

「そうだね。ボクも興味があるから、ゆっくり調べたいな」

「ゆっくりか。そうなると、どこか落ち着ける拠点が欲しいな」


 空の旅を続けるというのも面白そうだけど、ずっと彷徨っているわけにもいかない。

 目的もなくフラフラ旅をするより、どこか目指す場所を決めたいところだ。

 ということで、俺は四人と今後について話すことにした。


「ここで話すのかよ。結構寒いぞ」

「空だからね」

「じゃあ中にしよう。百階層の屋敷に繋げるから少し待って」


 右手を前にかざし、ゲートを開く。

 白いダンジョンの壁を一枚生成し、そこに扉が埋め込まれる。


「どうぞ」

「すっごいねユリウス君! これで屋敷に行けちゃうんだ」

「ありがとう、エリー。でも俺が凄いんじゃなくて、この腕輪が凄いだけだ」

「別にどっちでも良いじゃん。さっさと入ろうぜ~」


 アリアは寒いのが苦手だったな。

 そそくさと扉を開け、中へ入っていく。

 続けて俺たちも扉を潜り、繋がった先の部屋にはテーブルと椅子がある。

 長いテーブルを一つ挟み、二対三で向かい合うように座った。


「で、今後のことなんだけど、具体的にどうしたいか。みんなの意見を聞かせてくれないか?」


 まずはエリーから、俺が視線を向ける。


「私から? う~ん、急に言われてもわかんないや。私はお友達と楽しく遊べる場所があればどこだって良いよ!」


 エリーは元気よく答えた。

 ここで言うお友達というのは人間のことではなく、彼女が所有しているモンスターを指している。

 よく城内で遊ばせて出禁をくらっていた彼女らしい。


「アリアは?」

「あたし? あたしは剣さえ作れる環境があればどこでもいいぜ? 最強の魔剣を作ること! それがあたしの目標だからな」


 目指すは究極の一振り。

 過去にも未来にも並ぶ物はない名剣を、彼女は作ろうとしていた。

 剣を作ることが生きがいの彼女らしい。


「ナナリはどう?」

「うーん……良いお布団がある場所?」

「なるほど」


 のんびり屋で寝るのが大好きな彼女らしい。

 彼女の才能なら、その気になれば何だって出来るのに。

 

 さて、今のところの意見をまとめると……

 

 割とみんなどこでも良いみたいだな。

 やりたいことがあって、生きるスタンスは決まっている。

 だから、それが出来る環境さえあれば何でも良い。

 そういう点では、俺が一番ハッキリしていない。

 

「助手君は? どこか行きたい所とか、やりたいことはないのかい?」

「俺は……正直わからないな。元々、これと言ってやりたいことがあったわけじゃない。騎士団に入ったのも、出世して頼られるのが嬉しかったからだし」


 自分のやりたいことは何なのか。

 今になって考えることになろうとは……人生はわからないな。

 って、まだ俺は二十四の若造だけどさ。


「だからまぁ、一先ずはやりたいことを探すっていうのが俺の目標かな?」

「なるほど、助手君らしい意見だね」

「そう?」


 俺らしいか。

 らしさって何だろうな。


「そういうことなら、みんなボクの我儘に付き合ってくれないかい?」

「ん?」

「何だよリルタ」

「えーっと、確かこの辺に~」


 みんながリルタに注目する中、当の本人は本棚を漁り始めた。

 キョトンとした表情が被る四人。


「あった。これを見てほしい」


 彼女は一冊の本を広げて、テーブルの上に置いた。

 そこに書かれていたのは、見開き一ページに世界地図だった。

 今とは若干大陸の形が違うけど、これで世界地図だということはわかるレベルだ。

 二か所に大きくバツ印が書かれている。


「このバツ何だ?」

「わかった! きっとお宝が眠ってるんだよ!」


 というエリー。

 リルタは笑いながら答える。


「はっはは~ 惜しいな~ お宝と言えばそうだね。確かにお宝は眠っているかもしれない場所だ」

「意味深な言い方だな?」

「そうかい? バツ印の場所を見れば、大体察しはつくと思うけど?」


 バツ印の場所?

 俺はもう一度地図へ視線を向ける。

 一つは大陸の東の果て。

 もう一つの場所は……


「ん? ここってもしかして……」

「気づいたようだね? そう、ノアのダンジョンがあった場所さ」

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