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5.いらない物はポイ捨て

 いつの間にか俺の右腕に腕輪がついている。

 慌てて外そうとしたけど……


「と、とれない」

「ちょっと見せて」

 

 リルタが俺の手をとり、その場で調査してくれた。

 十分ほど時間をかけ、彼女は考えをまとめる。

 ブツブツ考えているときに漏れていた言葉は、難しい専門用語ばかりだった。

 簡単に説明してほしいと予めお願いして、全員が彼女に注目する。


「なら結論を一言にまとめようか? 助手君」

「はい?」


 リルタは改まって俺を見つめる。


「おほんっ! どうやら君は、このダンジョンの管理者に選ばれたようだね」

「……え?」


 ダンジョンの……管理者?

 簡潔にまとめすぎてよくわからなかった。


「つまりどういうことなんだよ」


 アリアが尋ねると、リルタはうーんと言いながら考えだす。

 どう説明すれば伝わるのか、考えているようだ。


「このダンジョンが相当古いことはわかるよね?」

「まぁな。深いほど古いんだろ?」

「その通り。じゃあ何年くらい前のものか? さっきの書斎にあった本、軽く目を通したら大体わかった。どうやらこのダンジョンは、五千年以上前に建造された物のようだね」

「ごっ……五千年!?」


 驚きすぎて盛大に声をあげるアリア。

 俺も声に出なかっただけで、ポカーンと開いた口がふさがらない。

 五千年前のダンジョン。

 軽く千年は超えてそうだな、と予想はしていたが、さらに上の上だった。


「そう、五千年前。神すら地上を歩いていたとされる遥か昔……未だ解明されていない謎多き時代。ボクたちが想像するしかできないような時代に、このダンジョンは作られた。言ってしまえば古代文明の遺産とでも言うべきかな?」


 だとしたら……世紀の大発見だぞ。

 世界中探しても、これほど古い文明の遺産を発見した探査団なんていないだろう。

 確実に国が認める成果……いや、それどころか世界が注目する発見だ。

 俺は興奮して、心臓がバクバク動く。

 今まで死んでいたのかと思えるくらい、激しく鼓動をうつ。

 

 リルタが説明を続ける。


「そして驚くべきことに、このダンジョンは一つの魔道具なんだよ」

「魔道具?」

「そう。あー、でも魔装具と呼ぶべきなのかな? 一応魔力で動いているみたいだけど、構造は今と全然違うし~ 他の名前も思いつかないから、便宜上『古代兵器(仮)』と呼ぼう」


 古代兵器。

 兵器って、また物騒な名前が出たな。


「つまり俺は、このダンジョンというか魔道具の所有者に選ばれたってことなのか?」

「うん。そうなるね、たぶんだけど」

「たぶんなのか……」

「仕方ないよ。調べるには時間も資料も足りない。せめて二日もあれば、その腕輪で何が出来るのかくらいは調べられると思うけどね」

「二日……」


 俺はエリーたちに視線を向ける。

 四人とも一目でわかるくらい疲労が表れている。

 ナナリに至っては半分寝ているし。

 探査期限は特に設けられていない。

 なら、ちょうどいいかもしれないな。


「三日間くらい、ここでのんびりしていこうか」

「いいのかい?」

「期限はないし、食料も三日分くらいなら持ってきてあるから。疲労困憊で戻つ途中、またモンスターに襲われたら困るだろ?」

「確かにそうだね。でもボクは二日で十分だよ?」

「それじゃリルタが休息をとれないだろ?」

「なるほど、ボクのためか」


 リルタが嬉しそうにほほ笑む。

 それから三日間、俺たちは第百階層で生活した。

 必要な物は全て揃っていたし、地上と変わらないくらい快適な生活が送れたよ。

 ダンジョン管理者の権限についても、リルタのお陰で色々わかった。

 知れば知るほど、自分が手にした力の大きさを思い知り、謎の罪悪感に苛まれる。

 

 そうして三日間はあっという間に過ぎ――


「出れたぁ! ユリウス君見て! 久しぶりの太陽さんだよ!」

「ああ」


 俺たちダンジョンから無事生還した。

 いや、より正確に言うなら……ダンジョンごと持ち帰った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 王城に帰還した俺は、すぐに成果を報告した。

 すると、案の定陛下は驚き、しばらく待つようにと指示を受けた。

 本当なら早急に荷物をもって城を出ることになっていたのだが、これは本当にひょっとするかもしれない。

 

 第七ダンジョン探査団が成果をあげた。

 その噂は一日で城内に広がり、俺たちに向けられる視線が憐みから驚愕に変わる。


「あのロクデナシの集まりが?」

「何でも古代文明の遺産を発見したって話だぞ」

「ありえない……何かの間違いじゃないか?」

「どうやら本当らしい」


 聞こえてくる声の一部を耳にした。

 もっと褒めたり認めてほしいものだが、これまでのイメージ的に仕方がないだろう。

 ただ、ここまで噂として広まったんだ。

 これで陛下も、俺を簡単にクビにはしないはず。

 どころか昇進だってあり得るのでは?


 一人で浮かれていた。

 いや、彼女たちも喜んでいたし、期待はあった。

 だから予想できなかった。

 

 まさか――


「全員をこの場で拘束しろ」


 こんなことになるなんて。


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