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3.その本気をもっと前に見せてほしかったよ

 ダンジョンにおける脅威は大きく分けて三つ。

 一つ、複雑な構造によって迷うこと。


「クロ! シロ! ちゃんと臭いは覚えた?」


 天才テイマーのエリーは、ブラックウルフとホワイトウルフに臭いを覚えさせていた。

 これで帰り道がわからなくなることはない。

 行ったことのある道がわかるので、何度も同じ場所を探索する心配もない。


 二つ、トラップが設置されていること。


「このルートは安全だよ」


 天才魔導士のリルタは、手持ちの黒い棒を地面にかざしている。

 あれは彼女が開発したトラップ感知器らしい。

 一度に一階層すべてのトラップを感知出来て、その情報は彼女のかけているメガネに送られる。

 彼女の指示通りに進めば、まずトラップにかかる心配はないだろう。


 三つ、強力なモンスターとの接敵。


「ほいっ、これで終わり」

「上手に焼けた」

「いや……食べれないからな」


 天才鍛冶師アリアは、自作の魔剣でモンスターをぶった切る。

 彼女自身の腕前は、騎士団にも入団できるほど。

 天才魔術師ナナリは言わずもがな。

 あらゆる魔術を使いこなす彼女にとって、モンスターはただの的でしかない。

 ダンジョン内には地上より多く、より強いモンスターが生息しているのだが、この二人がいれば戦いで後れを取ることはなさそうだ。


 ダンジョンにおける三つの脅威。

 その全てを、彼女たち四人でカバーできている。


 おや?

 まるで有能な仲間たちのようじゃないか。

 俺は夢でも見てるのかもしれない。

 一度目を瞑って、閉じたら布団の中という可能性も――


「こんな所で寝ちゃだめだよ!」

「うおっ!」


 目を瞑った途端に押し倒された。

 二匹のウルフに圧し掛かれ、ベロベロ顔を舐められている。


「ったく、何ぼーっとしてんだよ」

「やれやれ、真面目な助手君らしくないね」

「仕事中だから、寝るのは後」


 どの口に言っていると、ナナリには言ってやりたい。

 俺はウルフたちを押し避け、ゆっくり立ち上がって言う。


「お前らこそどうしたんだ? いつになくやる気じゃないから」

「別にいつも通りだろ」

「いや、全然違うよ」


 アリアの普段通りは、探索五分後に早く帰ろうぜと言っているはずだ。

 他の三人もおかしい。

 エリーはいつも、呼び出したモンスターを連れて勝手に奥へ行ってしまう。

 リルタなんて探索そっちのけで魔道具の実験をするし、ナナリもいつの間にか寝ているから、大抵は俺が負ぶって行動する。

 それがどうだ?

 今日の彼女たちは一味も二味も違う。

 各々の長所を活かし、まっとうにダンジョン探査をしているじゃないか。


「最後の探査で、今までを帳消しにするくらいの成果を見せれば、助手君のクビも考え直してくれるかもしれない」

「リルタ?」

「と、最初に提案したのはアリアなんだけどね」

「ちょっ、何ばらしてんだよリルタ!」

「いいじゃないか。ボクたちも同意したことだしね」


 照れるアリアをからかうリルタ。

 そんな風に考えてくれていたことに驚きながら、俺はアリアに視線を向ける。


「か、勘違いするなよな!」

「アリアちゃんもユリウス君のことが心配だったんだよ」

「だから違うって!」

「素直じゃない」

「ナナリまで……あーもう! あたらしらの所為でユリウスだけクビにされるのが気に入らなかっただけだ! というかお前らのほうが心配してただろ! あたしだけみたいに言うなよな」


 アリアが吹っ切れたようにそう言うと、他の三人とも照れて頬を赤らめる。


「頑張ろうよユリウス君!」

「最後の逆転劇を見せつけようじゃないか」

「今日一日で最深部までぶっちぎるぞ」

「大丈夫。ナナリたちがついてる」

「お前ら……」


 感動的な言葉を貰って、心がジーンと熱くなる。

 ただ、正直に言うと……


 最初からそれくらいやる気を出してくれていれば、こうなることもなかったのに……


 と思ったけど、空気を読んで飲み込んだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 現在まで到達していた三十五階層を超えてから一時間。

 俺たち探査団は第五十階層にたどり着いていた。

 

「ここまで潜って何もないとは……」

「部屋も空っぽだったね~」

「ホントにここダンジョンか? 地下に作った家とかじゃないのかよ」

「錆びてたけど、ベッドもあったね」


 世界で確認されているダンジョンの中で、もっとも深いとされるダンジョンが四十五階層まで。

 それを超えているのに、未だ何も見つかっていない。

 アリアの言ったように、かつて誰かが生活していたような部屋が並んでいるだけだ。

 次へ続く階段も見当たらない。


「いいや、まだ下はあるみたいだよ」


 リルタが黒い手袋をはめて地面に触れている。

 どうやら階層の深さを調べているようだ。


「計測結果は?」

「今出るから少し待って……驚いたな、まだ半分みたいだよ」

「「「「え?」」」」


 四人の声がシンクロした。

 半分ということは、つまり残り五十階層。

 全百階層もあるってことか?

 さすがに深すぎて、リアクションに困るよ。

 

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