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14.逆転劇を始めよう

「さて、レティシア姫。そろそろ気持ちは決まったかな?」

「……申し訳ありません。今しばらく待っていただけないでしょうか?」

「うむ、待ったところで意味はないと思うが?」

「実は先ほど……」


 と、レティシア姫は襲撃を受けたことをルグド王子に語った。


「負傷した者も多くいます。混乱が治まるまでは、どうか……」

「なるほど、そう言う理由は仕方ないな。だが私も暇ではないのでね。期限を設けよう」

「期限……ですか?」

「ああ、期限だ。今から一週間以内に返事をくれたまえ。一秒たりとも遅れることは許さない」

「……わかりました」


 レティシア姫は苦い表情で頭を下げる。

 ルグド王子はニヤリと笑い、ボロボロの城を見て言う。


「それにして随分汚くなったね、この城は」


 レティシア姫はピクリと反応する。

 誰のせいだと言いたいはずだ。

 それを飲み込んで、穏やかな表情を崩さない。


「君のような美しい女性には、こんなみすぼらしい城もどきは似合わないよ」

「……いえ、私はこの国の王女ですので」

「それも後数日のことだ。では良い返事を期待しているよ」


 そう言い残し、ルグド王子は去っていった。

 彼を見送ってから、俺たちと一緒に国王の寝室へ戻り、会話の内容を伝える。


「一週間……か。ついに期限を設けてきたな。いずれこうなるとは思っていたが、こうも間が悪いとは……」

「はい……」

「レティシア」

「わかっています。私はソムエールの王女です。国を守るためなら、この身を捧げる覚悟はあります」


 レティシア姫は覚悟を胸に、ルグド王子の誘いを受けるつもりでいた。

 経緯は別として、それしか国を守る道はない。

 もし断れば、今度こそ問答無用で滅ぼしに来るかもしれない。

 そうなればどちらにせよ、彼女はルグド王子の良いようにされる。

 申し出を受けることこそ最良の自衛でだった。

 

「……」


 そう、理解していても、割り切れるものではない。

 好きでもない男に言い寄られ、断れない状況に追い込まれている。

 国のため、父のためと自分に言い聞かせ、これが正しいのだと思い込む。

 そんなことが出来る彼女を、俺は素直に凄いと思った。

 だけど……


「本当は嫌なんだろうな……」


 手が震えている。

 言葉には出来なくとも、身体は正直に動く。

 彼女のは王女である前に、一人の女性なんだ。


 助けてあげたい。

 そんなことを思って、口に出して良いのかと考える。

 よその国の事情に、部外者が軽々に口をはさむべきではない。

 

「柄にもなく考えているね。いや、考えすぎているというべきか」

「リルタ?」

「好きにすりゃーいいじゃねぇか」

「アリア。でも……」

「私たちも同じ気持ちだよ!」

「エリー」

「言ってあげて」

「ナナリ」


 そうか。

 みんなも同じなんだな。

 だったら決まりだ。


「レティシア姫」

「ユリウス様?」

「嫌なら嫌と、言っても良いんですよ」

「え……」

「あんな奴の誘いなんて断ればいいんです」


 俺がそう言うと、レティシア姫は震えた手を握る。


「で、ですがそれしか方法がありません。ダンジョンもない。技術力も、武力もないままでは……」

「何を言っているんですか?」


 こんなことを言える日が来るなんて。

 そう思いながら、俺は自分の胸に手を当てる。


「全部ここにあるじゃないですか」


 四人の天才と、ダンジョンの全て。

 俺たちは持っている。

 今、ここに揃っている。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ルグド王子、ソムエール王国から手紙届いております」

「手紙? なるほどレティシア姫か」


 王女の一室でニヤリと笑うルグド王子。

 家臣から手紙を受け取り、中身を取り出す。


「手紙とは恥ずかしがり屋め。ん? な、何だこれは……どういうつもりだ!」


 バンと机をたたく。

 手紙は簡潔に、こう書かれていた。


 ルグド王子。

 あなたのようにいやらしい目つきで人を見る人は生理的に無理です。

 一緒の空間にいることさえ気持ち悪い。

 二度とソムエールには来ないでください。


「ふ、ふふ、ふははははははははははははっ! そうかそうか! そういうつもりなら良いだろう! 戦争だ。攻め滅ぼしてやる。奴隷になりたいのなら望み通り叶えてやろう」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「今頃、ボクが書いた渾身の手紙を読んでいる頃だろうね」

「あのさ? 結局なんて書いたんだ?」

「それは秘密だよ。でも確実に戦争を仕掛けてくるよ」


 本当に何を書いたんだ?

 リルタのことだから、中々エグイところを突いたに違いない。


「これで後戻りはできなくなったな」

「今さらだろ」

「そうだよ! 私たちでこの国を守ろう!」

「うん」


 やる気は十分。

 最後に挑戦したダンジョンを思い出す。

 あの時も、彼女たちはやる気で満ちていたな。

 だったら今回も大丈夫だ。


「そうだな。俺たちは第七ダンジョン探査団、どん底からの逆転劇は十八番だ」


 さぁ、逆転を始めよう。

 

本作はこれにて完結とします。

元々ここで区切りになるよう書いていましたので、予定通りと言えば予定通りです。

もう少し書きたい気持ちもあったのですが、体調不調も重なりモチベが続きませんでした。


同時刻に新作投稿しました!

タイトルは――


『パーティーを追放された付与術師、宮廷に雇われる ~お前の付与なんて必要ない? 言った傍から苦戦しているようですが、今さら戻るつもりはありません。付与してほしいなら国へ正式に手続きをしてくださいね?~』


ページ下部にリンク(12/8正午以降)がありますので、ぜひぜひ読んでみてください!

ぜひぜひブクマ、評価を頂けるとモチベーション維持に繋がります。

都合上、執筆に集中できるのが今月までになりそうなので、書けるだけ新作を投稿します。


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